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第二段階

「──ミナチの実?」


 黒髪黒目が首を傾げた。

 俺達は頷く。


「ミナチの実の採取のクエストを受けてこの村に来たのか。しかし……ミナチの実か。ふむ……俺はミナチの実のありかを知っている」

「それは本当?」


 ドナさんが声を小さくした黒髪黒目に合わせて声を小さくした。


「本当だ。『グラブト・ヘマルベル』と言う名前の魔力の枯れた遺跡が知覚に有る。そこに毎年ミナチの実がたくさん成るんだ。これは初めて見つけたときに急いで撮った記念写真」


 黒髪黒目はおそらくタイマー機能で撮ったであろう壁にビッシリと生え並ぶ虹色の果実とのツーショット写真を見せてきた。


「毎年……幻の実ってほど仰々しい物ではなさそうだな」

「なにを言うかシャムくん。ミナチの実は普通ならば1000年にひとつの実なんだよ。まさしく幻の実さ。君は本当にアホアホウンチくんだな」

「黙れクソアホバカマヌケウンチ学者」

「…………それで、その様子だと何か事情がありそうだな。教えてくれないか黒髪さん」

「わかるか。じつは、4年ほど前から実が成らなくなっている。今年はようやくひとつ成ったところで、おそらくだが土壌が死にかけている」

「ミナチの実は元々『成れば奇跡』という様な物だからね……『偶然』が何かの拍子にぶれてしまったんだろう」


 ナタリーが茶を啜りながら言う。


「それじゃああまり採取するわけにも行かないわけだ」

「じゃあ報酬は諦めようか」

「近くに薬草でも生えてればそれを持って帰って『薬草採取のクエスト』の報酬を受けとることも可能だね」

「薬草の群生地帯なら俺が知っている。連れていこう」

「それは非常に助かる」


 ということで、俺達は村の商店でカゴを買い、黒髪黒目の案内で薬草の群生地帯まで足を運び、日が暮れるまで採取をした。


 その日は黒髪黒目の家に泊まることになった。


 早朝、目を覚ますと黒髪黒目は鍛練に励んでいる様だった。

 腕立て伏せや腹筋背筋など。


 それを窓から眺めていると、黒髪黒目は木を殴った。「ありゃ痛いぞ!」と思っていると、心配ご無用というように拳には傷ひとつついていなかった。


 むしろ、木がやばかった。


 木は折れ、拳が掠めたであろうところからは煙が出ていた。


「凄いな!」

「作成師。起きていたか」

「ああ。見ていたよ、さっきのどうやったんだ?」


 パンチの真似をしながら駆け寄ってみる。


「これは俺が身につけた8年分の努力の結晶だ」

「努力……するとライクではないのか」

「ああ。俺は8歳から10歳まで事故の影響で植物状態でな。その影響か魂がうまく接続されなくてライクが発現しなかった。それでは悔しいだろう? だから鍛えた。誰よりも強くなれる様にリハビリを熟し、毎日大木を殴り、毎日大木を蹴り、腕立て伏せを2分の内に8万5000回出来るようになり、腹筋背筋もそれに等しいレベルまで出来るようになった。その結果──」


 黒髪黒目が拳を振るうと、「スパァン」という音がした。

 今は空気を殴ったのだという。


「しかし世の中は俺のように甘くはなかった。なかなか認めてもらえず故郷のテリグラという街を追い出された俺はあのジジイに拾われた」


 脳無しとか言われてたけど。


「あのジジイはいい奴だから、嫌いにならないでやってくれ」

「うん!」


 とても好きなタイプの人間だった! 


 それから全員起きるとナタリーが「ミナチの実の写真だけでも撮りたい」とごねるので、そのグラブト・ヘマルベルという枯れ遺跡に向かった。


 グラブト・ヘマルベルに到着すると遺跡入口前のぬかるみに足跡が有るのを発見した黒髪黒目が駆け出した。


 俺達も後に続く。黒髪黒目の脚はとてつもなく速く、俺達は結局ドナさんの〈精霊王〉で呼び出したオレイアス達に背負ってもらい追いかけた。オレイアスは「あと非能力者脚はやすぎ!」と嘆いていた。


 遺跡の再奥に到着すると、黒髪黒目の声が聴こえてきた。


「ジジイ!」


 食堂の店主が怪しげな男たちに捕われ、剣先を突きつけている。


「お! テメェらこのクソ野郎につられてこの村に来たタールミナトの冒険者か!」


 怪しげな男の一人が俺達に剣先を向ける。


「最低なクソ野郎だぜェ~こいつはよォ! こいつがなにをしたか教えてやろうか! テメェを信用しているガキを尾行してミナチの実の存在を知ると、真っ先に情報をギルドに流したのさ! 『この村にはミナチの実が成るんだぞ!』という宣伝をして、観光客を呼び込んでテメェの利益にしようとしたのかな?」

「ウ、ウウ……」

「この通り、テメェを尊敬するガキの前で、テメェは恥をかいちまう。おい、クソ野郎。ここでウンコしな。ズボンは下ろすなよ」

「ひ、なんで……」

「面白いからだよ。ウンコしろ」

「嫌だ」

「やれ! 殺すぞ! 此処にいる全員をな! 殺したら! テメェの前でそこの黒髪黒目のガキ犯してやる! 嫌ならウンコしな!」

「う、ううう!」


 嫌な音が広がり、悪臭が立ち込める。


 ばきり、と音がふたつ鳴った。ひとつは俺で、もうひとつは黒髪黒目。青筋が浮かんで、耳と鼻から血が石造りの地面にぽたりと足れている。


「情けないな、クソ漏らし!」

「おい」


 黒髪黒目が口を開く。ナタリーが〈障壁〉を作ろうと掌を黒髪黒目に掲げ、ナンちゃんはオレイアスの腕を引いて離れていく。


「やめろ」


 その瞬間、心臓が止まったような気配があった。次に、呼吸の度に頭の中で卵の殻が割れるような音が響く。現実の音が遠退いて行き、怪しげな男が剣を食堂の店主に突き立てる──その時。


 口が勝手に開いた。


「〈クラフト〉──再構築──〈クラフト〉第二段階」


 刃が店主の胸に触れ、進む。


「──〝モード2〟」


 パキン!という音と赤い光と共に刃は折れて、宙を舞い、ナタリーの〈障壁〉を纏った黒髪黒目の拳が男の顔面に入り男は地面にぶつかると、跳ねて空高く待った。


「な、なんだァっ!?」

「この領域を再構築した。いまは〈クラフト〉じゃない。どうやら覚醒したんでな。名付けるなら〈アドベンチャーモード〉……楽しい冒険(アドベンチャー)に胸糞悪い殺戮はいらない。『対象外の破壊は禁止』……それが『ルール』だ。俺の領域内では俺の『ルール』に従えよ」


 ハジキを構えながら、黒髪黒目の隣に立つ。


「突っ立ってんなよ」


 黒髪黒目が言う。


「的に見えるぞ」

キャラクター紹介002

ドナータ・デストリンク

戦闘力:800

ライク:精霊王

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