第一話 目覚め
目を開くと、そこには何も無かった。
ここはどこだろうか?
なぜ自分はここにいるのだ?
それよりも、そもそも自分とは何だ?
何もかもが全くわからない。
自分に手や足はあるらしく、感覚はあるが、なぜか動かせない。
体の全神経を集中させ、自分の体の形を探った。
一人称は、、、俺にしよう。
俺は人間のような体を持っているらしい。
自我は、こうしてしゃべっているように、ちゃんとしたものがあるようだ。
今も、直立しているような形で固まっているが、二足歩行ができそうだった。
背中には小さい羽のようなものが生えているようだから、少なくとも人間ではない。
俺が、人間みたいなのに、人間じゃないという意味不明なパラドックスに陥っていると、
「ぐぅ、、、」
お腹が申し訳なさそうに初声を上げた。
何気に初めての音だったから少しびっくりした。
でも気づいてしまったからには仕方がない。
なんとも言えない「不足感」が体を支配した。
いかんせん、体が動かないのでどうしようもないが。
食べ物を探すため、視界の許す限りを見回してみた。
が、全く光がない。
体はうごかないが五感は確かにある。
なので今度は思いっきり息を吸ってみた。
うん、何もない。
空気の存在は感じるが、におい等は全くない。
あと、食べ物が見つかったところで体が動かせないから食べることができず、ますます悲しくなるだけだろう。
俺は自分が置かれた救いようのない状況に絶望した。
◇◇◇◇◇◇◇
俺が目を覚ましてから、一時間くらいが経った。
この金縛り状態からする方法がないのか、身体中の色々なところに力を入れてみていた。
今の所動かせるのは口とか目とか顔にある機能だけ。
そうして、お腹に力を入れた時に今まで感じたことのない何かが蠢いているような感覚を得た。
なんだこれは?
少し気持ち悪いような清々しいような不思議な感覚を感じていると、不意に身体中に激痛が走った。
「ぐっ⁈」
初めて声が出た。
なんだろう、全身一気に肉離れしたみたいな、とりあえずとんでもない痛みに苦しんだ。
でも10分くらい経つとだんだん収まってきて、第六感とも言えるような感覚(?)を得た。
そこに流れる生暖かい液体のようなモノをまた弄っていると、、、
「シュフッ」
妙な虚脱感と共に何かが放出された、、、気がした。
第六感に集中すると、感じていた液体のようなモノが減っている気がする。
おそらくこれを体外に放出したのだろう。
でもどこから?
いや、ややこしいことは考えないようにしよう。
今はとにかく放出することができたということに集中する。
この液体、魔力と呼ばれるもののような気がする。
そして、この魔力を体外に放出することが出来るとして、それを全身からしたら?
なんかこの金縛り状態から脱出できそうな気がしてきた。
今度は意識的にその放出をやってみよう。
特定の場所に集中すれば良いのだろうか?
お腹に力を入れてみると、
「ぷっ」
お尻に虚脱感。
これは違う。
みんな!おらのお腹、それもへそあたりに力をっ!!!
「チュドーン!!」
なんかビームが出た。
名付けてへそビーム!
うん、素晴らしいネーミングセンスだ。
じゃあこのビームを全身で、、、、、、
(フッ)
五感が徐々に体から離れた行く感じがして、俺は意識を手放した。