表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結!】貧乏令嬢、第一王子の騎士になる  作者: 日之影ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/39

その刃は誰が為に⑤

【作者からのお願い】


誤字報告を頂けるのは非常にありがたいです!

ただ、一部使い方が間違っている方や、誤字報告でコメントを入れる方がいます。

あくまで誤字等を削除、修正するのが目的の機能です。

間違った使い方はおやめください。


 私は夢を見ている。

 薄れゆく意識の中で……。


「いいぞ、ミスティア! どんどん強くなっているな」

「お父様に追いつきたいんだ!」

「ははっ、お父さんも負けていられないな」


 懐かしい夢だ。

 大好きなお父様に、私は剣を教わった。


「お父様! どうすればお父様みたいに強い剣士になれますか?」

「理由を持つことだよ」

「そう。お父さんは騎士なんだ。ただの剣士じゃない。お父さんの剣はね? 守る者のために振るう。相手を傷つけたり、勝つための戦うじゃない。騎士として守る者に尽くす……それが、お父さんの誇りだ」

「よくわからない」

「はははっ、いずれわかるさ。ミスティアも、騎士を目指すなら」


 優しく頭を撫でてくれた。

 お父様……お父様は偉大な騎士だった。

 私はお父様のようになりたくて、同じ道を歩んだ。

 そうだ。

 私が学んだ剣は、何のためにあるのか。

 今、思い出した。


  ◇◇◇


「てめぇらは王を殺せ。俺がこの天才様をぶっ殺すからよぉ」

「……」

(この人数差、さすがに父上を守りながらは不利だ。ミスティアは無事なのか?)

「グダグダ考えてんじゃねーよ。オレだけを見てろ」

「ちっ……!」


 私は、誰だ?

 何のために剣を振るう?

 何のために、ここにいる?


「はははっ」

「なんだ?」

「お前こそ、見る相手を間違えているぞ?」

「何を――!」


 彼は振り返る。

 そこに立っていた私を見て、笑みを浮かべた。


「立ちやがったか! 女ぁ!」

「私は騎士だ! ここにいるのは、殿下の騎士として!」


 だから負けられない。

 殿下を、ここにいる人たちを守るために、私は剣を磨いてきた!

 怒りに任せて振るう剣に、本物の力は宿らない。


「リミットブレイク!」


 今こそ原点を見据えろ!

 私の役目は、この男を倒すことだ!

 復讐のためじゃなく、殿下に選ばれた騎士として!


「雰囲気が変わったな! 何かしたか!」

「あなたを倒します! 騎士として、全霊をもって!」

「いいぜ! 第二ラウンドと行こうやぁ!」


 切っ先がぶつかる。

 鍔迫り合い。

 膂力では劣っていたが、リミットブレイクを発動したことで、力が拮抗する。


「重くなりやがったな! 魔力の流れが異常だ! それはあの男は見せなかったぜ?」

「私の全力ですから!」

「そうかよ! 楽しませてみろ!」

「楽しませる気はありません!」


 異常だ。

 限界突破した私の動きに、素の身体能力で拮抗している。

 これが獣人の膂力。

 どこが劣等種族だ。

 人間よりもはるかに優れている。

 人は認めたくないのだろう。

 彼らが優れていることを……目を背けているだけだ。


 私は背けない。

 よく見ろ。

 理解しろ。

 自分との差を、この男の強さを。

 私の父に勝った男の、数十手先の動きを!


「下段、斬り払い」

「――!」

(こいつ……)

「そのまま左袈裟斬り」


 私が口にした動きに従うように、男は剣を振るう。

 男は口元がニヤつく。


「オレの動きを読んでやがるな!」

「見えていますよ!」


 リミットブレイク最大の利点は、脳内処理速度の加速。

 それによって相手の動きを極限まで観察し、予測することができる。

 殿下との戦いを経て、私はこの力をさらに磨いた。

 日頃からいろんな人の動きを観察し、癖を探り、魔法を使っていない間も常に考えて行動する。

 予測の精度を上げるために。

 そして、上回るために!


(次、横薙ぎから回転――を躱して懐に入る!)

「っ――!」


 十七手目。

 私は勝負に出た。

 リミットブレイクにも限界がある。

 私が本気で戦えるのは残り数秒だけだ。

 この一撃で決める!


 全魔力を集中させるんだ!


「甘ぇよ!」


 私の予測よりも一瞬早く、彼は大剣を防御に回していた。

 が、それも――


「予測通りです」

「――!」

(こいつ、剣を……)


 捨てた。

 剣で斬ると見せかけて、魔力を込めていたのは拳だ。

 両拳を、がら空きになった腹に叩きこむ。


「ごはっ!」

「まだです!」


 獣人のタフさは予測済み。

 一発じゃ足りない。

 だから連続で、反撃の隙も与えない!

 ひたすらに拳で殴る。

 打撃と同時に魔力を拡散して、衝撃を内側に響かせる。


「こ、のぉ!」

「おおおおおおおおおおおおお!」


 男は私の髪を掴む。

 かまうな。

 全力で、最後まで叩き込め!

 この一撃に、私の全てを注ぐ!


「落ちろ!」

「ぐはっ――!」


 私の拳が、男の鳩尾に直撃する。

 リミットブレイクが終了した。

 もはや立っていることすらやっとの状態だ。

 

「……いい、拳だったぜ?」

「……」


 まだ……。


「悪くねぇ……戦いだった」


 男は笑いながら、満足したように倒れ込んだ。

 カランと音を立てて大剣が転がる。

 私の剣と重なるように。


「勝った……」

「ば、馬鹿な! ルド様が負けるなんて!」

「よそ見していいのか?」

「ぐあ!」


 男が負けて動揺し、隙ができたことを殿下は見逃さない。

 一瞬にしてラプラスの構成員を凍結し、手足の自由を奪った。

 私はふらつきながら、殿下の方へ振り向く。


「……勝ちました、殿下……」

「ああ、見ていた。見事だった! ミスティア・ブレイブ!」

「……は、い……」


 限界に達した私は、そのまま意識を失う。


 お父様、私……。

 ちゃんと騎士になれましたか?

 

【作者からのお願い】

短編版から引き続き読んで頂きありがとうございます!

本日ラストでした!


ぜひともページ下部の評価欄☆☆☆☆☆から、お好きな★を頂ければ非常に励みになります!

ブックマークもお願いします。


ランキングを維持することでより多くの読者に見て頂けますので、どうかご協力お願いします!



次回エピローグです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ