ボクの鼓動が止まるとき
思春期の思い出。
些細なことが 今を決めたようだ
16歳の夏だったと思う
ボクは 先生の細い首に 思い出のオレンジのゴム縄跳びをかけた
優しく 包むように
壊すけど 壊さないように
普通の人なら 必死に抵抗してくるのだと思った
でも、やっぱり先生は先生だった
ホコリがかっている縄跳びの持ち手からどれだけ強く横に引いても
先生は目をつぶってどこか微笑んでいるような顔をしている
ぎゅっと強く抱きしめるように縄跳びを引き続けていたら
先生の頭はガクンとボクの胸元に俯くように折れた
手の力を抜いて ぶらりと身体の傍に垂らす
そして倒れかけた先生の身体を支えてそっと地面に寝かせた
全部を悟っているような先生の顔は 神様と同じだった
ゆっくり眺めようと立ちながら先生を眺めていた
でもすぐに警察とやらが来て ボクを連れていった
知らない誰かの前に立たされて 罪を犯した 認めろ 償えという
何故なのかボクには分からなかったから 真ん前にふんぞり返る正義気取りに中指を立てた
ボクは今 死刑になるらしい
でもこれでいいんだ
「愛してるよ、先生。ずっとずっと、一緒だね」
最期まで心にあるのは あの時の美しい 神様になった先生だけだった
もし妄想が叶っていたら今頃こんな感じになっていたのかな…