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第9話 嫌がらせの理由




 私は運動不足にならないように王宮の中庭を散歩するのが日課になっていた。


 三食昼寝付きでゴロゴロしていては太ってしまう。


 体のラインが崩れたら大変だ。


 だから運動は欠かさない。


 いつものように軽装に着替えて玄関を出る時に上の方から声が聞こえた。


 もちろん普通の人には聞こえない距離と音量だが風の精霊が音を運んでくれた。


 つまりは、その会話は何らかの私の身に関するものだということだ。


「ねぇ、サラ、いくら何でもそれはやりすぎだよ」


 メイドの声だ。


「うるさい。あいつだけは許せない」


 すると、上から花瓶が私の頭めがけて落ちてきた。


 だが、私にあたる手前で風が花瓶を池へ吹き飛ばしてくれた。

 

 花瓶は割れること無く池に浮いていた。


 上を見た。


 誰かがベランダにいて、素早く身を隠した。





 数日後、今度はバケツの水を上からかけられた。


(おや、今までとは違うわ)


 これまでは私を困らせたり、危害を加えようとしている意図が感じられた。


 だが、今度は違う。


 ただの水だ。


 しかも、何の予定も先に無い。


 濡れても着替えればいいだけで私は困らない。


 むしろ、今までのことがまぐれや偶然ではなく、私が水や風の力を操れるのかを確かめているようだった。


(どういうつもりか知らないけど、私を試すつもりなら、やってあげるわよ)


 私は落ちてきた水を空中で止めると、次にそれを渦にして天に舞い上がらせ、さらに火を加えて蒸気にして蒸発させた。


 風、水、火の精霊の力をみせつけた。


(どう? これで満足した)


 私を凝視していた気配は消えた。





 それから一週間ほど何もなかった。


 私が鏡台の前に座り髪をとかしていると、ノックも無くドアが開いた。


 鏡ごしに相手を見た。


 このところ私にずっと嫌がらせをしているメイドのサラだった。


 手には短刀を持っていた。


「どうしたの」


 私は振り返らず声をかけた。


 黙ってサラは短刀を持ったまま近づいて来た。


(あれで私を刺すつもりなのかしら)


 私はゆっくりと体をサラの方に向けた。


 突然、サラが土下座した。


「申し訳ありませんでした」


「えっ?」


「全て私が悪いんです。ですからこれ以上、私の村の人達を苦しめないで下さい。これまでの無礼の償いとして、ここで自害します。だから許して下さい」


 そう言うと、短刀を自分の喉に突き立てようとした。


 私は風を起こして、サラの短刀を飛ばした。


「なに馬鹿なことをするのよ!」


「でも、他に責任のとり方が分からないのです。まさか、ローザ様にあんな力があったなんて知らなかったんです。そのせいで、村の皆を苦しめてしまい……」


 サラが泣き出した。


 私はサラが何を言っているのか分からなかった。


「ねぇ、サラ、何のこと」


 サラは顔を上げると本当に怯えた顔をした。


「お、お許し下さい。そうやって責めないで下さい」


 サラは青くなり震え始めた。


「ちゃんと話して。私は何も分からないのよ」


「本当ですか?」


「いいから話しなさい」


「私の故郷は辺境の貧しい村です。でも、今回の大聖女様の教皇ご就任祝として、前から中央に陳情し続けてきた井戸を掘ってもらえることになったんです。でも、大聖女様が還俗されてこともあろうに愛妾になられたことにより、井戸の話は無くなりました」


「まあ、そんなことがあったの」


「しかも、私はローザ様の世話係を命じられました。私は逆恨みして嫌がらせをしてしまいました」


「そこまでは分かるわ。でもこの前、私を試すように水をかけ、今日の自害騒ぎは何なの?」


「私がローザ様に嫌がらせをするようになってから村に雨が降らなくなったんです。そればかりか、連日、激しく太陽が照りつけて、村が干上がってしまっています」


「もしかして、私が仕返しをしたと思ったの?」


 サラはうなずいた。


「だから、私が自然を操れるか水をかけて試したの?」


「その通りです。そして、ローザ様は予想以上の力でした。本当に申し訳ありませんでした。でもこのままだと村人は全員死んでしまいます。お願いですから村人のことは許して下さい。悪いのは私です」


 サラは土下座した。

 

(どれも初めて聞く話だわ)


「要は井戸があればいいってこと?」


「は、はい」


 サラはキョトンとした顔をした。


「あなたの村はどこにあるの?」


「国境付近の辺境にあります」


「日傘を出して」


「はい?」


「強い直射日光はお肌の大敵でしょ」


「早く」


 サラは私に日傘を渡した。


「じゃあ、これからあなたの村に行くわよ」


「私の村に行くには3日はかかります」


「案内して」


 私はサラの手を握った。


 そしてベランダに向かって歩き始めた。


「ローザ様、玄関は逆方向です。そちらは窓しか……」


 私はサラの手を握ったまま、ベランダから風に乗って空に舞い上がった。


 サラが悲鳴をあげた。


 私はお肌のためにパラソルを開いた。


 愛妾にとって肌の染みは大敵だ。


「あなたの村はどっち?」


 サラはパニックになりながら西を指さした。


 私はサラを連れて風に運ばれて西の辺境の村に向かった。




読んでくださりありがとうございます!

読者の皆様に、大切なお願いがあります。


もしすこしでも、

「面白そう!」

「続きがきになる!」

「期待できそう!」


そう思っていただけましたら、


ブクマと★星を入れていただけますと嬉しいです!


★ひとつでも、★★★★★いつつでも、


思った評価で結構です!


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踊りあがって喜びます! なにとぞ、よろしくお願いいたします。


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