第5話 追放された元男爵令嬢が国のトップになる
「猊下、お連れいたしました」
「あなたがローザさんかな」
白い法服に身を包んだ老人が私を見て言った。
「はい」
「私は、この教会の枢機卿じゃよ」
「枢機卿?」
「我が国の教会のトップです」
横にいた女官が慌てた様子で説明した。
「初めまして」
「話の概略は聞いておる。精霊神の力を使えるというのは本当なのか」
「はい」
「では、試しにこの杯に水を注いでみなさい」
私は手の先から水を出した。
「おおお。本当じゃったのだな」
枢機卿は驚いたように言った。
「よかろう。ではこちらに来なさい」
私は祭壇の前に連れて行かれた。
「お前の資質をこれでみる」
石版のようなものに手を置くように言われた。
私は、手を置いた。
その石版が青白く輝いた。
やがて、聖堂全体が光につつまれた。
「こ、これは、おおおおおおおおおおおおおおおお」
枢機卿は膝をついた。
「どうしたのです」
「ああ、神様」
枢機卿が祈るような声を上げた。
「間違いない。あなた様は精霊神の子です」
「精霊神の子?」
「はい。大地、風、水、火を司る精霊神が人間の肉体になって生まれてきたものです。今より、ローザ様は、大聖女として聖なる信仰の対象です」
信仰の対象と言われて私は戸惑った。
だって私は王子様のお嫁さんになる身なのだから。
その後、私は王宮に連れてゆかれ、身を清めると、白い新しいドレスを着せられた。
「ローザ様、こちらへ」
女官は私を謁見の間に導いた。
「ローザ!」
エドワード王子が飛んできた。
「そのドレス、とても似合うよ」
私は恥ずかしくてうつむいた。
「陛下、彼女がローザです」
「そなたがそうか」
私は頭を下げた。
「陛下、いや、父上、僕はローザと結婚します!」
あまりに速い展開に私は、どうしたらいいのか分からないでいた。
王は考え込む様子をした。
そして顔を上げた。
「ならぬ」
「どうしてですか? ローザが私の命を狙ったソンベルト男爵家の娘だったからですか? でもそれはさっき説明した通り、ローザはもうソンベルト家の人間ではありませんし、そもそも血族でもありません。それにローザこそが、ソンベルトの襲撃から私を救ってくれた命の恩人です。ローザがいなければ、今ここに私は立っていないでしょう」
「ソンベルトの問題ではない」
「では何故、結婚に反対するのですか」
「ローザ殿は大聖女であられるからだ」
「あの、今、何と言われましたか?」
「大聖女だ」
「そ、そんな馬鹿な……」
「ねぇ、どうしたの」
私は青くなっているエドワード王子に小声で訊いた。
だが、彼は言葉を発することができないくらい動揺していた。
すると謁見の間の扉が開いた。
さっきの枢機卿が入ってきた。
「これは猊下」
国王が礼をした。
「もう、私のことはもう猊下と呼ばないで欲しい」
「どういうことでしょう?」
「猊下はあちらにおられる方だ」
その視線は私の方を向いていた。
「あ、あのう……?」
「大聖女様が教皇様になられる」
「はぁ?」
「大聖女様はまさに神様の使いそのものじゃ。ただいまから、教会のトップは、大聖女様だ」
突然、王と王女は玉座から立ち上がると、私の前にひざまずいた。
「えええええええええ」
「知っての通り、祭祀の長と内政の長とが国を治める。内政の長は国王だが、祭祀の長は教皇である。そして我が国では祭祀の長の方が、内政の長より格が上である」
枢機卿が説明をしてくれた。
(えええ、ということは、私ってば、国王より格上ってこと?)
謁見の間にいた大臣、家臣、すべての者が私に平伏した。
(ちょ、ちょっと待って、私はエドワード王子のお嫁さんになりたいだけなの。いきなり国のトップって何よ)
私は途方に暮れる思いだった。
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