第4話 ソンべルト男爵視点【ぷちざまあ】
「取り逃がすとはどういうことだ。その上、捕虜まで取られたというのか!」
ソンベルトは部下に怒鳴り散らした。
あと一歩のところだったのだ。
計画は完璧だった。
まずは、宿を少人数で襲った。
これは陽動だ。
脅威だけ与えてすぐに撤退した。
街の中心地の宿で異国の王子の一行が皆殺しにあったら、当然その国の責任だ。
犯罪を防げなかったというのなら無能を天下にしめすことになる。
その程度の賊やテロリストにも対抗できないという評価になり、攻めれば簡単に落とせる国という評判が立つ。
逆に防ぐことができるのに、見殺しにしたというなら、その国が暗殺したのと同然だ。
だから街中では殺さない。
この街に留まることは危険だと思わせて深夜に国境超えをさせるように仕向けたのだ。
まんまとその思惑に乗り、エドワード王子一行は深夜に魔物が出る森の脇の街道を旅して国境を越えようとした。
その国境付近で待ち伏せをして襲う。
これなら盗賊や魔物がしたことにできる。
皆殺しにすれば死人に口無しだ。
それなのに、あともう一歩というところで取り逃がした上に、襲撃した手の者たちの方が逃げて帰ったのだという。
「バカモン!!! 刺し違えてでも、殺してこいと言ったろう!」
「でも、自然相手では戦えません」
「自然だと?」
「地が揺れて割れ、竜巻が起き、さらに山火事が起きてその火が飛んできました」
「どいうことだ」
「それが分からないのです」
「それで取り逃がしたというのだな」
「はい」
「もうよい下がれ」
王子を襲った手の者が去ると、ソンベルトは腹心の部下のムギを呼んだ。
「閣下、お呼びで」
「王子を襲った手の者を全員、解雇しろ。その上で殺せ」
「よろしいのですか」
「あいつらは無能な上に、仲間が捕まり、今頃身元がバレている。奴らは男爵家から解雇されて勝手に山賊に成り下がり、それに怒ったワシが処刑したことにしろ」
「御意」
ソンベルトはムギが去るとため息をついた。
(伯爵の爵位まであとわずかのところだったのに)
ソンベルトは王から密命を受けていた。
今回国賓として来訪しているエドワード王子を帰り道で暗殺したら、二階級特進で男爵から伯爵にするという約束だった。
隣国のエレドランドはエドワード王子しか跡継ぎがいない。
ここで殺しておけば、将来的にエレドランドは弱体化してゆき、やがては攻め入り、我が国に併合されるであろう。
(絶好のチャンスだったのに、それをしくじりおって)
ソンベルトは、ふと、ローザはどうなったのかと思った。
最後に聞いた報告では、王子たちが手の者と交戦した森の方に向かっていたと聞く。
だが、その森では魔物同士の大規模な争いの形跡があり、さらに地形が変わるほどの天変地異もあったらしい。
(そんな中に、装備なしの若い女が一人入って行って生きているわけがないか)
あの娘が舞踏会で、エドワード王子に見初められて求婚された時は本当に驚いた。
これから殺す相手に嫁がせてどうする。
さらに、あの娘がエドワードの妃候補になれば、当然身元の調査が行われるだろう。
庭師との間の不倫で生まれた貴族の血が入っていない雑種だと判明すれば、即婚約破棄になり、過去に妻を寝取られた間抜け者として天下の笑いものになるところだった。
(本当はこの手でローザを殺したいくらいだが、血がつながってはいないとはいえ、家族殺しは貴族の家名に傷が付く。だから我慢したのだ)
「ああ、本当に忌々しい」
部屋には誰もいないのに、思わず言葉が出てしまう。
ソンベルトは伯爵になった時のお祝いの行事の企画書が机の上にあるのを見つけた。
それをつかむとヒステリックに破った。
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