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第11話 メイドのお願い


「殿下はどれがお好みかしら」


 洋服屋が王宮に出張して、私にたくさんの服をみせてくれているところだった。


 多すぎてどれにするか決めかねていた。


「あの」


 サラがおずおずと歩み出てきた。


「何かしら」


「少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」


「いいわよ」


 私はとりあえずピンクのドレスをもらうと洋服屋に言って下がらせた。


「まずは、先日のお礼と、それに殿下に進言して井戸の整備をまでしてくださり本当にありがとうございました」


 私は、その晩、殿下にピロートークでサラの実家の村が井戸を掘り当てたらしいので、日頃、サラがよく働いてくれている報償として、井戸の整備をしてほしいとお願いしておいたのだ。


「お陰様で、子供が誤って落ちないように囲いや柵を何重にも作ってもらったり、使いやすいように設備を充実させてくださり、村人も喜んでいます」


「それは良かったわ」


「実は今日は別にお願いごとがあります」


 そう言うとサラは「アンナ」と声をかけた。


 ドアが開き、メイドのアンナが入ってきた。


「恐れ多いですが、私もローザ様にお願いがございます」


 私はサラを見た。


「サラ、私のやったことは誰にも言わないでって言ったじゃない」


「申し訳ございません」


 サラが平伏した。


「でも実は、ローザ様に嫌がらせをしていたのは、私だけではないんです。だから他のメイドが勘違いをしたままローザ様に嫌がらせをしないように、少しだけ話しました」


「しょうがないわね。じゃあ、アンナも私に嫌がらせをしていたのね」


「お許し下さい。男爵令嬢だったローザ様には大変な苦痛と屈辱だったはずです。何卒お許しを――」


「男爵令嬢ねぇ……」


 私はため息をついた。


「あなたたちのしたことなんて、かわいいものよ」


 私は父である男爵に母が不倫をして生まれた子だと思われて、さまざまな虐待を受けてきたことを話した。


 ろくな食べ物を与えられなかったことなんかは一番ましな話で、例えば、新しい魔道士を雇うと、その回復魔法の力を試すために私の腹を父が刺し、腸を引きずり出し、私が苦悶して息を引き取る寸前に回復魔法をかけさせて、その効きを試したことなどを話した。


 ドアの向こうからすすり泣きが聞こえた。


「入ってらっしゃい」


 メイドたちが全員、ドアの向こうで聞き耳を立てていたのだ。


「ローザ様がそんな苦労をされていたなんて……」


 メイドたちが目を赤くしながら入ってきた。


「もう済んだことよ。だからあなた達の嫌がらせとかは全然嫌じゃなかったし、別にどうも思わなかったわ」


「ウワーン」

 

 メイドたちは声をあげて泣いた。


「で、アンナ、お願いっていうのは何?」


「私の故郷の村が魔物に襲われているんです。それを助けていただけないかと」


「それも、もしかして大聖女就任祝いが中止になったことと関係するの?」


「はい。魔物討伐の陳情をしてましたが、やっと大聖女様のお祝いの特別予算でやってもらえるところだったんです」


「しょうがないわね」


 私はサラの方を向いた。


「パラソルを出してちょうだい」


「はい」


 別のメイドが窓を開けに行った。


「じゃあ、行くわよ」


 私はアンナと一緒にバルコニーから空に舞い上がった。





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