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第8話 最強の悪役令嬢



(この子を連れたまま走るわけにもいかないな)


革命軍の男が攻撃したところを見るに完全に無関係だと証明されている。


今この子を連れ回したまま敵を倒すことは不可能ではないが、少なくとも幼い女の子にトラウマになってしまうかもしれない衝撃的な人の死を見せつけることになるだろうし、何より先の爆発で何人も死んでいるためこの女の子に死体を跨がせるわけにもいかない。


王子なら適当に放り捨てるところだが、この子にはなんの罪もない。


ひとまず安全な場所に連れて行って、それから人に託して去ればいい。


この避暑地は2度と使われないだろうが、その時はまた別の手段を講じればいいだけの話だ。


そうして剣を納刀すると少女を抱えて燃え盛る屋敷から脱出した。



今この現場では護衛の騎士と革命軍が戦っており、メイドや使用人の内で生き残っているものは遠く離れた場所へと避難している。


そこの少女を置いてから自身は退散すればいい。


高速で彼らの避難場所へと到達したラクシアはゆっくりと少女を降ろして誰かの目に触れる前に消えようとするが、


「王子はいるか!」


煤だらけの鎧を着た騎士の一人が引き攣った形相でそう怒鳴り上げると、メイドや使用人のたちが周りを見渡すようにしてから首を振った。


それに伝えにきた騎士は膝から崩れ落ち、それを見て何かを察したメイドたちが口元を押さえて泣き始めていた。


そしてその光景を後にこの場から去ろうとしたラクシアの袖を、小さな少女が握っていた。


「………………お兄ちゃんを助けて」


消え入りそうな声で、誰よりも苦しいはずの少女は必死に何かを訴えように力強く握って、ラクシアへと見上げ、


「お兄ちゃんを助けて! お姉さんの強さなら、助けられるんでしょ!」


大きな声を上げた彼女に気づいて場にいる人間から視線を集める。


「……なんでもするから………………私を助けてくれたみたいに……悪い奴らから…………助けて」


それ言って膝をついた少女にこの場で絶対に目立ってはいけない。


人目についたら終わりだと何度も言い聞かせてきたはずのラクシアは、


いつのまにか、彼女と同じ視線になるように屈んでいた。


「もし、お前がなんでもしてくれるって言うなら、俺を信じろ」


泣いて震えて冷たい少女を抱きしめて、彼女は、


「お前が俺を信じるなら、お兄ちゃんは必ず助ける。これは約束だ」


小指を差し出したラクシアに少女は小さな指を絡めた。


「…………お願い」


その瞬間、誰も効いたことのない轟音が森の中に響き渡った。


だがその中で少女だけは確かに耳にしてきた、


『任せろ』と、



火が回ってから時間が経ってしまい、もはや2回はやけ崩れて燃えカスを落とすだけとなった今。

逃げ回る力も気力も失ったアルタイル王子は壁にもたれかかって死を覚悟していた。


「あーあ護衛がいなきゃこんなんだろ、なんでそんなんカスの分際で権力振りかざすかなぁ」


革命軍の青年は既に抵抗する力すらもない王子に剣を向け、じわじわとなぶり殺してやる方法を考えていたが、


「なんで僕を狙う? お前らの目的はなんだ」


「はぁ、そんなん決まってんだろ。貴族が憎い、貴族が許せないって奴らが殺せって言うから」


「革命軍の差金……いや、この場所を知っている内部の人間の差金か」


わざわざこんな手間をかけて、手練れを金で雇うとは随分と計画を立てたものだと呆れ半分賞賛を送ろうと皮肉を込めた拍手をするアルタイル。


「まぁいいや。そろそろ死んでくれっ……………………」


青年がアルタイルへと剣を向けた瞬間、屋敷天井が崩れる音がしたと思えば、


「お前……妹に感謝しろよ。あの子が頼まなかったら絶対にお前なんかを助けたりはしない」


青年の背後から知らない少女の声が聞こえ、振り返りざまに剣を振るう相手の手を切り落とした。




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