第12話
「きゃあああああ! これこれ、こーゆうのを待ってたんですよ」
半ば強制的に連れて行かれた仕立て屋の試着室。
長い金髪を黒いハンカチーフでツインテールにされたラクシアは、貴族ほどの派手さはなく、かと言って平民ほど貧相ではない絶妙なバランスで成り立っている衣服を着せられていた。
「お客様よくお似合いで……服が喜んでいるようです」
「そうですよそうですよ! よく見てください今の格好を」
大はしゃぎのアンナは車輪のついた立ち鏡を転がしてくると、先程から鏡を見よないにしていたラクシアへと、問答無用でその姿を見せつける。
白いシャツに長いロングスカート。
コルセットのような形でくびれを作るスカーフはひらりと舞う天使のよう。
もはや完全に彼女の趣味でできた服装を着せられたラクシアは、言っても無駄であると学習しているため何も言わない。
だが、
「あれ……どうしたんですか? さっきからなんか」
「いやちょっとな」
服装に関してはもはや諦めた。
何を言っても無駄だろうし、何よりこの状況を受け入れなければならないのば自身の落ち度だ。
この際どんな格好でさえも受け入れてやるつもりだったラクシアだが、
「ちょっと…………胸が苦しい……かな」
その場にいる全員に戦慄が走った。
まさか、そんなことがあるのか。
ラクシアはまだ12歳の少女だぞ。
その年代の子供が着るような服を用意出しだけあって、仕立て屋の店主は反り返って絶叫している。
それが悲鳴なのか感謝なのかはラクシアからはわからないが、天に向かってガッツポーズらしきものをしている辺り、おそらく後者だ。
「嘘ですよね…………私はそんな頃からは……それにまだ」
「じゃあもう……負けたって」
メイド達が死にかけ始めているが、ラクシアにはどうすることもできない。
服の都合上絞められた部分が彼女の持っているものよりも大きく、胸元が苦しくなっているだけ。
服を引っ張るような形でスペースを確保しようとするラクシアだが、アンナはそんな彼女の手を掴んだ。
「まさか……してないってことはないですよね?」
「いや……えその」
「その大きさで、してないなんてことは」
胸元のボタンを引きちぎって中身を露わにさせたアンナは歳の割には豊満な育ち盛りの果実を目にして、
「今すぐしましょう!」