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第11話 先送り問題



やらかした不始末の責任は自らで果たさなければならない。


それがラクシアにとって前世からのポリシーであり、それは転生してからも変わりはない。


よって今彼女が無理やり着せられたフリルのついたワンピースであろうとも、


「くっ……………………殺せ」


王子暗殺未遂騒動でアンナ共々に心配をかけたことへの責任として、身体で払うしかなかったのだ。



ことの顛末はラクシアが王子暗殺事件に首を突っ込み、被疑者の一人として名前があがってしまったために1週間ほど軟禁を強いられたことが原因。


屋敷の人間には王子暗殺しに行きますなんで言えるはずもなく、カモフラージュとして用意しておいた親戚の貴族の社交界への参加の名目で家を立てわけだが、屋敷に届いたのは社交界の話題でもなんでもないラクシアの王子暗殺未遂の事件だった。


これには屋敷の人間、主に家主であるロビンが奔走して駆け回ったらしい。


被疑者うんぬんの話はアルタイルやフリッシュの証言や、真犯人の発覚などでただの濡れ衣だと証明されるに至ったが、屋敷の人間には多大なる迷惑をかけたことに変わりはない。


それにアンナからは帰宅と同時に抱きしめられてそのまま深夜まで抱き枕にされたほどだ。


そして今回の件に対してかなりのお咎めを受けると覚悟していたラクシアだが、肩透かしにも「無事ならそれでいい」というスタンスで受け入れてくれた家族にはなんの申し開きもない、むしろ謝りたいくらいだ。


そんな申し訳なさを隠せていなかったラクシアに漬け込んだ悪魔どもはここ最近オシャレから遠ざかってしまった彼女に擦り寄って悪夢の再来を果たさせたのだった。


「あわわっ、あわわわわわわ」


ラクシアは先程から衣服をひん剥かれては次から次へと運ばれてくるメイドたちの私服を着せられ、立ち鏡の前に連れていかれることを繰り返して、ついには痙攣し始めていた。


「これも違うあれも違う。一体何が間違って……」


深妙な顔つきで議論しているメイドたちに他所に下着姿のままソファで寝転がっているラクシアのメンタルは限界だ。


それもメイドたちが必死に背伸びして買ったけど自分には合わなかった服をここぞとばかりに着せるため、乙女たちの厳選に厳選を重ねた超濃度の乙女成分をぶつけられたに等しい所業。


いくら見た目が絶世の美少女とは言え中身は元男。


今まで魔道骸士や革命軍と渡り合ってきて一度もダメージを受けていない人間とは思えないほどの疲弊を見せたまま、無理やり押し付けられたブラジャーのホックを外そうとしてできない。


サイズが合っていないのか異様に苦しいそれを、必死に取ろうとするが取り方がわからない。


手は届くのだがどうにも外れないことに苛立ちながら引きちぎってやろうかと思ってその時、


上からフリルついた屈辱のワンピースを着せられて抱き抱えられた。


「やっぱり私たちの服じゃあラクシア様の高貴な美しさが消えてしまう!」


「待ってなにそれ」


「そう思いますよね! こんな平民の服じゃあダメだって! もっと綺麗でお淑やかなものがいいって!」


「全然、微塵も」


「行きましょう! 服を買いに!」


目を見開いて言い放つアンナに否定の言葉は届かない。


一方的に自己完結する乙女思考回路はラクシアの離脱はおろか、拒否すらも消し飛ばしてご都合主義へと到達。


今の彼女に死角はない。


逃げ出そうとするラクシアを力の限り抱きしめて身動きを起こせず、このまま街でラクシアに似合う服を探そうと思ったが、それには予算という膨大な敵が現れたのだった。


「お金は………………頑張った貯金を」


可愛いものに対してケチっていては意味はない。


推しに貢ぐ金は青天井、ここで使わずにいつ使う。


メイドと言う住み込みで家賃もかからず、食費も賄いがあるので金を使う機会がほとんどない職業なのだからそれくらいの蓄えはあるだろう。


覚悟を決めようとしたアンナだったが、


「お困りのようだね」


背後から聞こえた声に反応して振り返る。


すると無駄にイケてるポーズで扉にもたれかかるロビンの姿があった。


「そのお金、僕のマネーから出してはいかがかね?」


「当主さまぁああ!」


半狂乱になって崇め始めるメイド達と、それに笑いながら金を撒き散らす成金の姿。


こんなものが身内だとは思いたくないラクシアだが、これによって金銭面が解決してしまったことに変わりはない。


「ちょっと用事を思い出して………………」


関節を外して逃げ出そうとするラクシアだが、アンナからすり抜けた先で腕を掴まれた。


「約束……ですよね?」


断れるのかこの笑顔を、


この笑顔の裏に何があるかわからない恐怖を、


ここで断った後何が起こるかわからない恐怖に耐え切れるのか、


「…………………………うん」


今後の生活全てを天秤にかけた結果、頷かざるを得なかった。

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