第三話
日が昇り、砦内の喧騒が大きくなってきたころ、
朝食を終えたのか、5,6人の魔人と思われるものたちが、
槍、剣などの武器を持ちながら
上機嫌に砦内の食堂と思われる建物から出てきた。
「今日の朝の連絡聞いたか??
なんと、次活躍したら、
強欲の魔人トト様に褒美をもらえるらしいぞ!!!」
一人の魔人が、手を広げ、
他数人の仲間の魔人たちに自慢するように言った。
「それ!俺も聞いた!!
次の戦いは絶対に活躍しないと、、!!!!!」
「褒美貰ったら何に食べよう、、じゅる、、」
数人の魔人がそれに対して、
気分が高まり、まだもらってもいない褒美のことについて、
とてもワイワイと話し始めた。
すると、一人の魔人が半分冗談で、
「おれは、褒美として、トト様戦いを挑むぞ、、!!!」
それを聞いた周りの者たちが、
「「「それは、お前殺されるぞ!!!」」」
と、少し笑って、さらに声をそろえたように言った。
言い方はきつかったが、冗談であったことも、
周りの魔人たちは分かっていたのだろう。
その後も冗談を交えながら談笑し、
今日も外敵から守るために、砦の外壁へ向かう。
前回の襲撃で無くなった仲間のことを忘れたように、
このザリルツ砦の残存戦力では、
次回の襲撃を守り切るのは到底無理なことを知らないように、
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武器を持った戦闘部隊の魔人たちは、
彼らが担当する警備・巡回をする西側の外壁に到着したが、
交代の時間までの少しの時間、暇をもてあそんでるようだった。
「それにしても、砦修繕部隊の奴らはしけた顔してたよな~」
警備開始の時間までは、まだ少しあったのか、
一人の魔人が思い出すように言った。
「それな、、あのまま食堂にいたらただでさえまずい飯が、さらにまずくなるぜ、」
砦修繕部隊の様子に一人の魔人が同調した。
食堂で出されるご飯は、味よりも、栄養・保存に関して重要視されている為、
食べるときの雰囲気も悪くされたら堪ったものではないのだろう。
「でも大変だよな、砦修繕部隊の奴も、、
感情の抜けている奴隷なんか指揮しながら一日中作業してるなんて、
俺なら気が滅入っちまうぜ、」
一人の魔人が、食堂での砦修繕部隊所属の魔人の様子を、
かわいそうと思ったのか、哀れみを含んだ言葉を発した。
しかし、そこには奴隷に対する感情は、一切入っていない。
「そーいえば、この場所って前回襲撃されて、
外壁が壊れたとこだよな?」
「そーそー、なんでも小癪な獣人たちが、
外壁の内部に侵入して内側から破壊したらしいぜ」
「へっ、小癪な獣人どもが考えそうなことだなぁ、
で、襲撃された場所はどの辺なんだ?」
「え~と、どこだっけなぁ、
あ、あそこだ!!もう直ってやがる!!」
通常、外壁の修繕は襲撃から一週間程度では終わらないのだが、
そのことを知っている者が、
とても驚いた様子だった。
また昨日の連絡では、まだ一週間はかかると聞いていたため、
昨日一日で終わらせるのは異常だ。
「朝の奴らの様子は、疲労からだったのか、
あいつら無茶しやがるな、」
と、異常な修繕部隊に対して少し怖さを持ったように言った。
ほんとに修繕されているのかと、
興味を持ったある一人がその外壁近くに歩いていくと、
何かを発見したように
「お~~~い!
奴隷達が倒れているぞ~~」
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「ていうか、、、めちゃめちゃ倒れているじゃん!!」
一人の者が、隅にやられたいくつもの膨らみを見ながら、
とても驚いたように言った。
「そーなんだよ、修繕部隊の奴もちゃんと片付けしてくれないとな~、
これじゃあ巡回の邪魔だよ、」
また、違う者が、
その一つのふくらみを、ゴミのように見て、
さらに足蹴りにしながら言った。
「おい、奴隷君、邪魔だぞ~」
蹴られた奴隷はうめいた。
「反応あるじゃねぇか、
おらっ!起きろって!!!」
周りの者も、憂さ晴らしをするようにヒートアップしていき、
どんどん幾つかのふくらみに暴行を加えていった、
「邪魔だ!」
「奴隷ごときが俺たち魔人様の進路を邪魔してるんじゃねぇ、!!」
奴隷たちへの暴行へも飽きたのか、
「そーいえば、奴隷たちってどいつも体にこの紋章付けてるよな~
なんでなのか知っているやついるか?」
「それこの前、バリカ様が話しているのを聞いちまったんだけど、
その紋章を使って奴隷どもから感情を奪っているらしいぜ」
「へぇ~、誰かの魔法なのかな?」
「ばか、トト様の魔法に決まっているだろ、
なんてったってトト様は強欲の魔人だからな、」
「なるほど、でもなんで奴隷なんかの感情を奪っているんだ?」
「そんなもん知るか、トト様には崇高なお考えがあるんだよ、」
「もしかして人間の「ちっ、こいつもう動かなくなってやがる。」」
まだ暴行をしていた者もいたのか、
10人ほどいた奴隷たちは半分程、
もう反応が無くなったことを確認した時。
「ピぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!!!!!!」
「「「「「「!!!!!!!!!!」」」」」
外敵を知らせる警戒音が、
頭上の外壁の上から聞こえた。
皆、頭をすぐさま上に向かってあげると、
何十もの影が落ちてきているのを確認した。
しかし、その影が地面につく頃には、
彼らの意識はこの世から消え去っていた。