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剣、ゆえに何を想う(仮)  作者: sora
第一章 その想いとは
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第二話

薄暗い狭い部屋の中にいくつもの膨らみがある。

部屋の小さな鉄格子付きの窓から一筋の光が差し込み、

その中でも、一際小さな影がむくりを起き上がった。


小さな影は、自分を起こした光のもとを見上げると、

鉄格子越しに空が見えた。

しかしお日様は見えず、雲が直射の光を遮っている。



「カン!カン!カン!」



突然、部屋の外から鐘の音が聞こえた。


するとその直後、

部屋の扉が「バン」と音を立てて開き、

腕が左右3本あり、肌が緑である、一人の異形の男が入ってきた。



「おい!奴隷ども!早く起きろ!!!!

働く時間だ!!!!」


その声に従って、

部屋に転がっていた、大小いくつもの影が立ち上がり、

何も言わずに部屋の外に出ていく。


その姿を見ながら一際小さな影の持ち主も、

それらの影に従って後をついていった。



----------------------------------------------------------------------------------



腕が左右3本ずつある異形の男が、

何か急ぐように、砦の中をドタドタ歩いている。


すると異形の男は何か見つけ、

急いで近寄っていき、急に頭を下げた。


「バリカ様!!おはようございやす!!!」


典型的なずんぐりむっくりの体型で、肌が緑の男が、

上官のような男に必死に頭を下げて挨拶をしている。


そのバリカという長身長でスラっとした上官は、

4つある目で、ずんぐりむっくりを見下ろして、困惑しながら口を開いた。


「おはよう、、、、、、おまえは誰だ???」


その失礼なバリカという男の態度に、ずんぐりむっくりは気にもせず


「おいらはリグといいやす!!!三か月前にこのザリルツ砦にきやした!!!

現在は奴隷どもの管理をしていやす!!」


「ほう、奴隷どもの様子はどうだ??」


バリカはリグのその態度に満足したようにして会話を続け、

リグも思い出すように答えた。


「奴隷たちも連日の労働で、消耗していやすが、

特に、体力のある獣人よりも、人間の奴隷の方が消耗が激しいでやす。」


「おまえの管理している奴隷は何の作業をしているのだ?」


「はい! 一週間前、忌々しいサキア連合の獣たちから攻撃され、

損害を受けた外壁の修繕を、迅速に進めておりやす!」


サキア連合という言葉を聞いて顔をしかめたバリカは、

少し怒気を混ぜながら、


「おい、リグといったか、

砦の補修はあとどれくらいで終わるのか?」


「はい、あと一週間ほd「は?」

いえ!本日中に終わらせやす!!!」


バリカの鋭い目線に射抜かれたリグは慌てて言葉を訂正した。


しかしリグの慌てた様子を見たバリカは少し反省したかように

「すまない、先日の襲撃で少し気が立っていた。」


「いえ!全然お気になさらないでください!」


「では今から私は会議がある、必ず今日中に修繕を終わらせるように。」


というとバリカは足早にどこかへ向かっていった。


その姿を後ろから見ながらリグは

《まずいでやす、、一週間かかる予定なのに、今日中でやすか、、、

何とかして修繕を終わらせないと、、、最悪、奴隷の一人二人使いつぶしてでも、、、、》



----------------------------------------------------------------------------------



とある部屋に数人の人影がいる。

その数人は、背の高さも見た目も様々だ。


昆虫のような見た目をしている者もいるし、

身体がうろこで覆われ、魚のような顔をしている者もいる。

ここにいるすべての者が、魔人といわれる魔物から、

長い年月をかけて知性を持つことができたものたちだ。


またその中には、トカゲ顔で4つの目があるバリカもおり、

そのバリカが会議の第一声を発した。


「諸君、いったん状況を整理しよう。

ちょうど一週間前、このザリルツ砦は、

野蛮なサキア連合国の獣たちに襲撃を受けた。」


「何とか砦陥落は阻止したものの、負傷兵も多く、

いったん現在の状況を確認したい。

諸君、各自持ち場の現在の状況について報告してくれ。」


「「「「了解しました。」」」」


魔人たちが答え、この後バリカは報告を一つ一つ聞いていった。



バリカは全ての報告を聞き、

《やはりこの砦の残存戦力では、次の襲撃に耐えれない、》

と頭を抱え、

《援軍を要請し、援軍が来るまでこの砦を持たせなければならない》

という苦しい現実を突きつけられた。

しかしバリカは表情には出さず、

会議室にいる全員に激励するように指示を出した。


「諸君、このザリルツ砦は強欲の魔人トト様直轄の砦である。

次の襲撃で活躍したものは、

トト様に褒美をもらえるように私自ら進言しよう!」


指示を出すと、会議室にいる魔人たちがざわつき始めた。


バリカはその後、場を納めて、

魔人たちに自分の持ち場に戻るように伝えた。


バリカは、会議室で一人になると、


《もう昼か、会議が意外と長引いたな、》


と思いながら、部屋のとある場所を見た。


そこには、立方体の幾何学模様を描いたものが怪しく光っていた。


《あれはいつ見ても美しいな、

トト様は古代文明の遺跡から発掘したアーティファクトと言っていたが、

それを運用できているトト様もすばらしい、、、、》


バリカはしばらくそのアーティファクトをみつめ、

気持ちを切り替えたように、会議室の端にある棚の引き出しから、

布でくるまれた丸みを帯びた別の魔道具を取り出した。


布から取り出し、魔道具を机の上に取り出すと、

そこに手をおき、


「あー、、私はザリルツ砦のバリカである。

トト様はいらっしゃるだろうか、、、」


--------------------------------------------------------------------------------


日が落ちかけている頃、

砦内の先ほど会議が行われていた部屋でバリカが一人、


「トト様、お忙しいところ申し訳ございません、

やはり現在のザリルツ砦では、サキア連合国の襲撃を、

耐えうる戦力がございません。

よろしければ救援を要請してもよろしいでしょうか?」


バリカの声掛けに対して、トト様と言われていた者が、

声だけ返した。


「おう、援軍は送る、

だが絶対にそのザリルツ砦は陥落させるなよ。」


この砦はおいて、サキア連合国との戦争において、とても重要な場所であるため、

救援を要請すれば、援軍は送られるであろうと思ってはいたが、

トト様の言葉を聞いてバリカは一安心し、


「トト様!ありがとうございます!」


バリカは箱に向かって頭を下げて言った。

そんなバリカに向かって、トトという声の主は、


「バリカ、そのザリルツ砦は魔王国の防衛の要でもある。

サキア連合国の獣なんぞに陥落されたら命はないと思え。」


「承知いたしました。

このバリカ、命を懸けてでもこの砦を死守いたします!」


バリカは背筋を伸ばし、魔道具に向かって答えた。



--------------------------------------------------------------------------------



日が落ち、辺りが真っ暗に近づき始めたころ、

サキア連合国の襲撃によってすっぽり穴をあけられた砦外壁部において、

リグと奴隷との砦修繕チームが、

砦の修繕を行っていた。


六本腕の異形であるリグは、その腕の多さを生かして、

この暗闇で唯一の明かりであるランプを持ちながら、

砦修繕を行っている奴隷たちに、鞭を絶え間なくふるっていた。


「おい!!お前ら、そんなスピードで作業してたら、

日付回っちまうぞ!!!」


奴隷たちは、もう鞭を何回もたたかれており、

服代わりに、奴隷たちが体に巻き付けている布も、

鞭によって血まみれである。


鞭でたたかれても、

奴隷たちの反応は薄い、

もう反抗する気力もないのか、

感情がもう壊れてしまったのか、

言葉も発することができず、

うわ言で、うなる事しかできていない。


リグも一日中鞭を振っており、

すべての腕の筋肉が悲鳴を上げている。

さらにこれ以上鞭を振っても生産性が高まるとも思っていない。


それでもリグは、朝会ったバリカとの約束を守るために、

さらには自分自身の不安を取り除くために、

夜通しで奴隷たちに鞭をふるった。



結局、砦の修繕作業が終わったのは、

朝日が昇る直前だった。


リグは、夜中作業している時には、

奴隷たちが疲労でバタバタ倒れていき、

間に合わないんじゃないかと思い、ひやひやしていたが、

バリカ様が起きてくる時間までに修繕を終わらせることができて、

心から安心した。


奴隷たちは、作業終了時、

動けている者は、半数にも満たなかった。


身体が小さく体力がなく、動けていない奴隷たちは、

そのまま作業場所付近に放置され、


身体が大きいく体力があり、動ける奴隷は、

起床の鐘が鳴るときまで、つかの間の睡眠をとるため、

薄暗い部屋に戻っていった。


リグもいつも通りだったら、

動けていない奴隷たちも薄暗い部屋にぶち込んでいるのだが、


極度の不安から解放されたリグは、

動けなくなり放置されている奴隷たちには、

気にもくれず、睡眠をとるために自分の部屋に戻っていった。


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