2-A セン異世界で捕まる
ああっ、間に合わなかった。
ヒーロータイムの後に投稿したかった。
大分遅れて2話目のAパートです。
今度はさすがに覚えて無いは通じなかった。旋は詰所に連行され、狭い部屋で椅子に座らされる。
「正直にいえ!何であんな事をしたんだ!」
年輩の男が部屋に入ってきて、机を挟んで旋の向かいに座った。いきなり怒鳴ってくる。
「まあ、まあ。そんなに怒鳴っちゃ、逆に怖くて何も言えませんよ」
壁際に下がっていたドイルが、年輩の男をなだめる。
これは、なんていったっけと旋は考えていた。厳しい人と、優しい人のペアで尋問して、優しい方を信頼させて答えさせる。そんなテクニックがあったはずだ。
「お前に襲われたと言ってるのが、二人もいるんだ!」年輩の男がさらに叫ぶ。
たぶん、武術行使できなかった二人だろう。他はまだ動けないはずだ。
まあ、こいつらもバカじゃないだろうし、あの場にいた人に聞けば状況はわかるじゃん。猫かぶりモードでいきたいけど壁際のこいつが邪魔くさいな。
そんな事を考えながら、旋は壁際のドイルをジーっと見た。
「まあ、まあ。あの二人もなんか芝居がかってましたし。落ち着いて話を聞きましょう」
旋に見られたドイルが、年輩の男に言ってくれる。
「相手は女の子なんだし、ヤマーさんも、もっと押さえて」
ドイルが旋の方をちらっと見る。ウインクでもしてきそうな雰囲気だ。
お、こいつ誤解してる?猫かぶりモード行けるか?よし、いくじゃん!
「怖かっ」
「大変です!また被害者が出ました!」
ドイルとヤマーと同じ鎧の男が部屋に駆け込んできた。旋とさほど年が変わらない。少年みたいだ。
「何!またか」「三件目か」
駆け込んできた男と一緒にドイルとヤマーは行ってしまった。
「怖かったんですう。いきなり男の人が」
言おうとしていたセリフを呟いて、旋は椅子に座り直す。
カツ丼まだかな。神様の所でミカンしか食べてないんだよな。お腹すいてきたじゃんと、一人残された旋は机に突っ伏した。
「私、か弱い女の子じゃないですか。男の人に襲われて、怖くて夢中で暴れてたら、倒れてたんですぅ」
暴れては良くないか。手足を振り回してたらの方がいいかな。机にあった昭和チックなデスクライトを弄りながら、旋はセリフを考えて空腹をごまかした。
そのあと結構な時間、旋はほっておかれた。セリフを考えるのに飽きて本格的にデスクライトを調べる。コンセントもスイッチもないな?どうやったら光るんだ?
デスクライトの裏をみているとやっとドイルだけ戻ってきた。
「カツ丼!」旋は叫んだ。
「カツドン?なんですかそれ?もう行ってかまいませんよ」
ドイルが言ってきた。
「何それ。なんで」
旋は急な展開に、猫をかぶりそこねた。
「あの場にいた人に状況を確認しました。ちょっとやり過ぎですが、貴方の行為に問題はないと判断しました。特に女の子のお母さんは、貴方に感謝してましたよ」
ドイルが微笑む。
「あの白い服の五人は?」
「他の部屋で尋問中です。たぶん罰金刑になります」
罰金か、また会う可能性があるな。気をつけよう。旋が家を出たら七人の敵がとか考えているとドイルが右手を差し出してきた。
握手する。つないだ手ふって見つめあっているとドイルが言ってきた。
「あの、町に入るにあたって人物証明と入場料をお願いします」
はよ言え。コイツは。地球じゃ握手するのに何枚CDがいると思ってるじゃん。旋はドイルの手を放した。
「人物証明?入場料?」
旋が聞くとドイルが丁寧に説明してくれた。
「人物証明は文字通り貴方の人物を証明する物です。これを握ってステータスオープンって言って下さい」
ドイルが黒いオパールみたいな物が入った筒を手渡してくる。
「ステータスオープン」
セン
賞罰 なし
魔法 なし
スキル なし
称号 なし
「はい。ありがとうございます。罰なしですね。この町の入場料は銀貨一枚です」
ドイルが手を出してくる。
銀貨って言われても。旋がズボンのポケットをまさぐると右のポケットに丸い物がいくつも入っていた。
取り出してみると、黒いくすんだ銀貨と銅貨と鉄っぽいお金が何枚か出てきた。
「これでいい?」
銀貨をドイルに渡す。
「ずいぶん古い銀貨ですね?」
ドイルが不思議そうに銀貨を見る。
「そうなの?それしかなくて。ダメなの?」
旋には銀貨の新旧なんかわからない。
「いえ、これでかまいません。何か質問はありますか?」
ドイルが銀貨をしまう。
「お腹すいてるんだけど。食べ物は出ないのここ?」
旋のお腹からキューと可愛い音がする。
「ほっておいてすみません。ここでは牢に入っている者にしか食事は出ません。もし良ければ食事処にご案内しますよ?私も休憩に入りますし」
これから店を探すのも面倒くさい。店のシステムやこっちの世界の作法もわからない。
旋はドイルと食事に行くことにした。
テレビだとここでCMですね。
変身アイテムとか握手とかのあれです。