表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1



一陣の風が吹いた




時刻は夜



地球の日本で言うならば

良い子はもう寝る時間と言われ睡眠を促される時間である。


だがしかし


先程、風が吹いたそこには

一人の少女が立っていた



幼女が立っていた


年の頃は4歳から5歳辺りだろうか、1mをほんの少し越した位の身長の幼女であった。


少女の髪の毛は風に攫われていた。


その髪は白髪、銀髪....いや白金髪と呼ぶのが相応しい輝きがあった。


夜の帳が落ちているにも関わらず、月と星の光のみですら美しく輝く髪の毛。


その髪と同じ色彩のまつ毛に縁取られた瞳は感情や光の加減で色を変える不思議な虹彩でありながらも文明が未発達のこの地で何モノにも忌避される事は無かった。


それは幼女の身分やその美しさなどの表面的なモノ故にかもしれないが彼女の周りを魅了する性格も少なからず影響しているだろう。


そんな、この世界でも珍しい容姿の幼女の視線は湖に向けられていた。


正確には湖の中の城。


夜の闇に溶け込む、月夜の光...否昼間の太陽の光さえ反射しないであろう漆黒の城。



人間の目では目視が難しいであろう鏡面反射の城。


その城をジッと見つめる幼女に声が掛かる。


声を掛けたのはつい数秒前に瞬間移動で幼女の数メートル後ろに現れた男。


「...姫様、そろそろですぞ」


幼女を姫様と呼んだ少し嗄れた声の主を振り返った幼女 否...姫様は


「ほんとう?!」

感情によって変色する瞳を興奮と期待を混ぜた桃金色に変え、瞳をキラキラと輝かせ花が綻ぶような笑顔をその顏に浮かべた


その姫様の笑顔につられて同じように笑顔を浮かべた男。


老爺と言われるであろう容貌をしている男、その名はエドガー。


彼が仕える王の命によりその容貌を変えているが彼の種族は不死族であり、彼はその有り余る力から不老であった。

その彼がわざわざ身体能力が鈍る年代になったのは彼の仕える王に、王の娘...姫様に仕える時に出された条件であった為だ。


この国では、彼は公爵と呼ばれ、恐れられている。

そんな彼が好々爺然としてまるで執事の様相をしてるのはこの国では力が全てであり王がルールであるが故にだろう。


そんな2人の背後にフッと人影が表れた。


その、僅か一瞬の間にエドガーは地に膝を着き顔を下げる、

幼女は後ろを振り向き飛び付いた。


「パパ!」


その幼女の声に思わずといったふうに眦を下げる男。

年の頃は20代後半から30代前半辺りに見える容貌であった。

銀髪に深い蒼色の瞳のどこか冷たい印象を与える男は飛び付いた娘を見るとハッとさせられるほどの美貌を残念なくらいにだらしなくさせ壊れ物でも扱う様にそっと抱き抱えた。


「準備が整った。待たせたなミリアーナ」


そう言うと娘の頭をポンポンと撫でる。

彼こそがこの国の王であり、人々を恐怖に陥れる魔王その者であった。


そんな魔王の住まう、漆黒の居城。

おどろおどろしい雰囲気を持ちながらもスッキリとした印象のある城がつい先日ミリアーナの鶴の一声で生まれ変わろうとしていた。



ドンっと大きな砲台から玉が放たれた音が聞こえたと思うと

夜空に火の花を咲かせる。


パッと花が咲いた瞬間に合わせて


城が漆黒から純白へと色を変えた。


恐怖の象徴でもある魔王城、人々から畏怖されているのは魔王の居城であるというものが理由の多くを占めるだろうがその色味をみて不安を抱くものは少なくなかったはず。


だが、あろう事か魔王の娘の一声、

「おしろはしろいほうがきれい!それでね、やねはパパのめとおなじいろがいい」との言葉を受けた、ミリアーナを溺愛してやまない魔王によって

見るものを魅了するほど美しい純白の壁を持つ城になってしまった。

黒1色だった城は壁の白と屋根の深い蒼、魔王の瞳を思わせる蒼色のコントラストが美しい城へと姿を変えた。


そんな城のバックで咲く、花火をみてミリアーナは呟く


「...綺麗」


その言葉に魔王とエドガーは満足気に頷いた。


だがしかし、ここに地球に住まうネズミがシンボルのテーマパークに行ったことのある者がもしこの場に居たらこう思っただろう。

...シンデ○ラ城かなと。




閑話休題



魔王の国の説明をしよう。

まず、魔族とは...

この世界では魔王の配下、とどのつまり魔王に従事する者、魔王の治める地に住まうモノの総称である。

その為、様々な種族が、生物が、住まうがその者共は全て魔王様の配下。そこには種族間の見目の違いが原因で争いなどは起こらない。否、起こらせない。


みんな違ってみんないい


...という主義でもなく、

ただの実力至上主義、強いものこそ偉く、強いものこそ正しい。

そんな魔王の国の唯一絶対は魔王様。


魔王様には56人のお子がいる。


だが、魔王の後継者、つまり次期魔王は1人のみ。


魔王になるためにはただただ強いだけでは成りえない。


なる為には資格が必要である。


頭の良さ?

魔力の多さ?

身体能力?


どれもあればある程良いが、魔王の資格ではない。


魔王とは生まれ持っている定めであり、生まれた瞬間から魔王である、それは時期魔王であろうとも変わらない。

魔王の資格とは痣...。いや紋様とでも呼ぶべき物が右手に現れる。

魔王になるものには必然的に絶対的な能力が備わる。

故に、紋様の無いものにどれ程の才能があろうとも魔王になる事は叶わない。


そんな魔王の資格を持つものは魔王の血族とは限らない。


だがしかし、今代の魔王のお子には魔王の資格を持つ者が生まれた。

その者が、生まれた時、その絶大な魔力と魔王の生まれた時に起こる現象故にヒト族の国々では激震が走った。時期魔王が生まれただけでこの世界の幾人もの魔力を感知できる魔術師が失神し、失禁した。


56人にいる魔王の子供の末の娘。



その名はミリアーナ。



ミリアーナこそ、魔王にふさわしい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ