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妖怪の長  作者: 齋藤 照樹
さいたま高校女子高生霊力暴発事件
12/12

四月十三日火曜日──目撃者──

 俺が朝学校に着いたとき、見覚えのあるセダンが職員駐車場から出ていくところを見た。

 この時間に出るってことは、出張かな?

 そんなことを考えていると、後ろから声を掛けられた。

「おはよう」

「おはよう。なんか元気が無いな」

 輝希の声から覇気が感じられない……

「いや、実は昨日急ぎの仕事が入ってな。ちょっと寝不足なんだよ」

「妖怪の長が寝不足で元気が無いのかよ」

「ほっとけ」

 そんな笑い話をしながら、校舎に入っていった。


・・・・・・


 輝希が万世橋署の前に来たとき、既に中村が庁舎の前に立っていた。

「おはようございます。お待たせしてしまいましたか」

「い、いえ。警視監をお待たせしないよう、私が早めに出ていたもので」

「……では、行きましょう」

 中村の堅苦しい態度に眉を顰めそうになったが、なんとか変えずに返すことが出来た。

 二人を乗せたセダンは台東区に向かって走り出した。


 渋滞にはまり、目的地に着いたのが十時頃だった。

「ここが、通報者の家ですか?」

「警部補の言いたいことは分かりますが、ここです。彼はFXトレードで生計を立てています」

 輝希は門にあるインターホンを押した。

『はい』

「統制局の吉田です。お話を伺いにまいりました」

『……今出ます』

 輝希が振り返ると、中村が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

「あ、あの統制局って?」

「これから起こることは、他言無用です」

 中村はその目に圧倒され、何も言えなかった。


「統制局の局長様が、こんな朝早くからなんのご用事で?」

 不機嫌顔で出てきた和彦は不機嫌な顔で訊ねた。

「昨日、あなたが通報した件について」

 しかし、輝希の返答を聞いて、しまった、という顔をした。

「じゃ、じゃあ、中で」

 和彦の家に入ると、高そうな調度品がいくつか置かれていた。輝希の後に付いていた中村は、値段を考えないようにした。

「相変わらず、稼いでいるようですね」

「ちゃんと、確定申告して納めていますよ」

 二人は応接間と思われる部屋に通された。シンプルな作りながらも、決して貧相に見えないその作りは、設計者のこだわりが感じられた。

 三人がソファに腰掛けると、すぐに家政婦と思わしき女性がお茶を持ってきた。

「どうも、ありがとうございます」

 輝希が頭を下げ、中村が礼を言うと女性は一礼してから下がっていった。

「で、サトリである統制局局長が底辺のような百目鬼であるこの私に何が聞きたいと?」

 和彦はいきなり核心につく質問を投げかけた。早急と言われてもおかしくない態度だが、コレには理由がある。

 同じような能力を持つサトリと百目鬼は元々仲が悪かった。より正確に言えば、百目鬼が一方的に敵対心を持っているのである。サトリは未来のことを視ることに特化しているが、百目鬼は今を視ることに特化している。その点で、未来のことを見据えるべきと、輝希のベースにサトリが選ばれたのだが、そのことに百目鬼は快く思っていないものが多かった。

 「他の妖怪も混じっている」という理屈は、感情論の前には無意味であった。

「幾らLevel10判定を受けていても、混血です。オリジナルより劣るし、過去のことを視るのはあまり得意ではありません。ですから、こうして足を運んだわけです」

 輝希があくまで冷静に返しても、和彦の態度は変わらなかった。

「得意じゃなくても、視れるだろう? だったら、俺なんか用無しだろ」

 バチバチとした雰囲気に中村は、ついに耐えきれなくなった。

「あ、あのすいません。お話の腰を折るようで大変恐縮なんですが……

 私、万世橋署の中村と言います。昨晩のことで詳しくお伺いしたいのですが、よろしいですか?」

 中村が怖ず怖ずと自己紹介をしたが、それを聞いた和彦の態度が変わった。

「え、刑事? 統制局の人間じゃない?」

「そうですよ。彼は昨晩の殺人の担当刑事です。主に、彼が貴男に訊ねることがあると思います」

「守秘義務は?」

 和彦がチラリと輝希を見た。

「私がなんとかします」

 和彦はやれやれとした顔で、中村に向き直った。

「昨日のことですよね。昨日は仲間と呑んで、酔いを覚ますために歩いていたんですよ。で、男が起き上がったと思ったらその下に別の男がいて、よく見たら意識が無かったら通報したんですよ」

「なぜ、警察に?」

「起き上がった男が倒れている男に覆いかぶさっていたんだから、察したんですよ。襲われたんじゃないかって」

「本当は?」

 黙っていた輝希に水を差され、ブスッとした顔で口を開いた。

「直感的に死んだな、今殺されたんだなって……」

 和彦が言葉を濁すと、輝希が説明を始めた。

「ここから先は、守秘事項です。もし漏洩した場合、貴男は職を失います。

 この日本には妖怪がたくさん住んでいます。それらを管理するのが霊力管理統制局で、私はそこの局長です。昨日の自己紹介のとき、私の階級に違和感を覚えませんでしたか?」

「そ、そういえば」

「統制局は言い換えれば、妖怪警察本部となります。だから、私の階級が警視監なのです」

 輝希は唖然とする中村を尻目に、話を続けた。

「昨日、留木さんを照会した相手も統制局です。日本にいる妖怪は基本的に統制局に登録されています。監視のため、保護のため」

「それを快く思わねえ妖怪もいるがな」

「もちろん、コレが人間でしたら人権の侵害と言われるでしょう」

 和彦が輝希に噛み付いたが、輝希はそれを意に介していないようだった。

「さて、ここから先は統制局も絡んでくる話です。

 昨日亡くなった男性ですが、赤足で登録されている妖怪でした」

「は?」

「アカアシ?」

 二人はほぼ同時に反応したが、中村の疑問を輝希は黙殺した。

「貴男が通報されたとき、男性はまだ息がありました。ですが、貴男は通報時に人が死んでいる、と言ったそうですね?」

「あ、ああ……」

「ですが、男性の死亡推定時刻を照らし合わせると、貴男の通報時は息があることが分かりました。このことが何を示すか、分かりますね」

 和彦は黙秘をしようとした。しかし輝希の能力を思い出し、観念した。

「あんたの考えている通り、視えたんだよ。霊気をほとんど失って、蘇生も間に合わないだろう体が」

「犯行時の様子は見ましたか?」

「いや、俺が見たのは体だけ。誰に襲われたのか、その過程すらも視てねえぞ」

「ありがとうございました」

 そう言って輝希は立とうとしたが、隣の中村の存在に気がついた。

「警部補、私が聞きたいことは全て聞きましたし、貴男も聞きたいことは無いと思いますが、どうしますか?」

 固まっていた中村は、輝希の声で我に返った。

「いえ、大丈夫です。留木さん、ありがとうございました」

 二人は立ってドアを開けると、先程の家政婦が立っていた。

「玄関までご案内します」

「ありがとうございます、秋常さん」

 輝希はそう言って、女性の後について行った。中村は違和感を覚えたが、すぐに輝希の後を追った。


「警視監、本日はありがとうございます。おかげさまで、捜査が進みます」

「あの情報だけで、ですか?」

 万世橋に向かう車中で中村は輝希にお礼を言っていたが、輝希に睨まれてしまった。

「あの情報だけで捜査が進展するなんて、警察はどれだけ無能な捜査をしているんですか?」

 中村は輝希の声に込められた強い意志に圧倒されてしまった。そこに階級ではなく、人間としての上下が有るように、錯覚させられていた。

「信憑性もない、ただ一度聞いただけの証言など、もはや証言ではありません。裏付けも取っていないのに進展するような仕事をしてるのですか?

 それがただの社交辞令でしたら結構です。ですが、本気で言っているのであれば、警察官を辞めなさい」

 中村は輝希の言葉に硬直してしまった。

ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか?

私は休んでました。ええ、4月の頭からですが。


コミケがなくなり、ゴールデンウィークが暇になってしまって本当に悲しいです。

4月から会社勤めのハズだったんですが、今の御時世、研修すら自宅です。


この状況、非常に良くないですが「stay home」で乗り切りましょう。

早く、更新しろって? それは難しい相談です。

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