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第二十五話「とある勇者一家と黒い少女」①

 リネリアは……リネリアーなんだにゃーっ!

 

 リネリアは、レディスレデュア最高の剣士と言われたラファンママの娘なのだっ!


 レディスレデュアで大体、3番目くらいに強い剣士なのだにゃっ!

 二番目はうちのママなんだけど、一番強いのは、文句無しでリネリアのパパッ! 

 

 パパ様は勇者で、優しくて、カッコよくて! 最強無敵ッ!


 もう、リネリアは大好き! 好き好きーっ! なのだーっ!

 にゃのだけど、最近は何かと言うと服を着なさいとか、足を閉じろとか割と口うるさいのだ。

 

 まぁ、シャーロットも似たようなもんだから、その辺は何だかんだ言って親子だから……って思うんだけどにゃ。

 別にリネリアはパンツとか見られても気にしないのだ。

 

 シャーロットみたいに、スカートめくられたくらいで怒ったりしないのだ。

 別に、バインバイーンなのがある訳でもないし……。

 

 リナリアは、お色気とかとは程遠いのだぁ……。

 悔しくなんてないのだ……。


 こっちの世界に来てから、もう一ヶ月近く経つのだけど、とってもたのしいのだーっ!

 毎日、ご飯やおやつもとっても美味しい!

 

 それに、学校ってとこはとっても楽しくて、お友達もいっぱい出来て、超楽しいのだっ!

 

 ママに会えないのはちょっと寂しいけど。

 シャーロットやアルマリアもいて、勇者パパもいる!

 

 祥子おねーさんは、シャーロットが言うには、向こうのママ達と同じ現地妻って奴らしいのだけど、アルマリアはさらっと全然違うって言ってるし。

 

 とにかく、この話をすると、アルマリアはとっても機嫌が悪くなる! よく解らないのだにゃ。


 でもまぁ、おおむね毎日とっても、じゅーじつしてるにゃー!

 

 今日は珍しく一人で家に帰ることになったんで、ちょっと寄り道して帰るんだにゃ。

 いつもは、シャーロットやアルマリアと一緒に帰るんだけど、シャーロットは特訓だとかでまだ学校。

 

 なんか、最近、ヨミコとアルミナとばっかり遊んでて、つまんないにゃ。

 

 あんな奴ら、ワンパンで泣き入れる程度の弱虫なのだ……相手にする価値も無いと思うにゃっ!

 アルマリアも、勇者パパの護衛だとかで一人で先に帰っちゃった。


 つまんなーい! つまんなーいっ!

 

 そんな訳で、リネリアは一人でお散歩なのだ。


 リネリアは、帰り道なんて、匂いで解るから、シャーロットみたいに迷子にもならないし、悪いヤツだって、ボッコボコなのだにゃ!

 

「ふぉおおおおっ! でっかいお魚だにゃっ!」


 道路の真ん中に川が流れてるにゃーと思ってたら、超でっかいお魚が!

 お髭が生えてて、赤と白のまだら模様! 大きさもリネリアの半分くらいもあるようなのが、たくさん泳いでるのだ!

 

 リネリアが覗き込んでたら、むしろ近づいてきて水面から顔を出して、お口をパクパクさせてる。

 それも一匹だけじゃなくて、10匹位の団体さんでっ!

 

「な、なんだにゃん! お前ら……捕まえられるものなら捕まえてみろってことかにゃ!」


 にゃにゃにゃにゃにゃ……!

 リネリアは海でお魚採りとかやったこと無いけど、川で泳いでるお魚を捕まえるくらいなら出来るにゃ!

 

 まずは、深呼吸……獲物を捕える時は、逸る心を抑えて、殺気を消すのだー。

 周りの風景と一体化……そこにいるのが当たり前な存在となるのだー。

 

 しんらばんしょーとひとつになりて、じしょーに溶け込むのだ……なんて話を勇者パパは言ってたにゃ。

 小難しい言い回しだけど、要するに気配を消すようなものなんだにゃ。

 

 それなら、リネリアは大得意! 狩人にとっては、そんなのは朝ごはん前なのだーっ!

 

 なんてやってたら、車が来てパパパパーなんて、鳴らされた……。


 うっさいなぁ……この鉄の箱めっ!

 パパ様がたまに運転してくれるんだけど、リネリアはフヨンフヨンした乗り心地が好きになれないにゃ。

 

 避けて通ればいいのに、もう一回パパパパーッ! 

 ……こいつ、喧嘩売ってるにゃ! アルマリアがやったみたいに、くず鉄にしてやってもいいかもだにゃ。


 パパ様がうるさく言うから、今日は武器持ってないけど、剛力の魔術くらい使えるもんね!

 ちょっとリネリア、怒りの鉄拳、悪を討っちゃうのだっ!

 

「き、君……そんなところにいると、危ないよ?」


「はにゃっ!」


 気配なんて無かったのに、唐突に背後から、背中をポンと叩かれた。

 

 思わず、振り返りながら飛び退く。


「あ、ごめんなさい。驚かせちゃったかな?」


 何だかとっても、黒いやつ!

 

 長くて黒い髪に、赤っぽい眼……黒いコートにバツマークと矢印みたいなマーク入り。

 背丈は、リネリアよりちっちゃい! んー、こいつ低学年の子だにゃっ!

 

「うにゃーっ! お前なんなんだにゃっ! やる気かにゃっ!」


「えっと、そうじゃなくて、とりあえず、ここは危ないから、場所変えましょっ! ねっ!」


 そう言って、黒いのはリネリアの手を取って、ちょっと先にあった鉄板の橋の上まで引っ張っていくにゃ。

 

「こ、ここなら大丈夫かな……ごめんね、いきなり」

 

「うにゃーっ! これは橋なのかにゃっ! すごーくたわむにゃっ!」


 これ知ってる! トランポリンってやつだにゃ!

 おもしろーいっ! 思わず、飛び跳ねるとたわんで戻って……すっごい跳ねる!


「ちょっ! 飛び跳ねないでっ! わたたっ! なんか、メキョメキョ言ってるし!」


 調子に乗って、飛び跳ねてたら、鉄板がバコンって言って、黒いのがビョーンとすっ飛んでいって、ドボーンと川に落ちちゃったにゃ……。

 

 黒いの……泳げないのか、バタバタともがいてぶくぶく沈んでいくのだにゃ!


 た、たいへんだにゃーっ! 人間、水の中だと死んじゃうにゃっ!

 

「た、助けるにゃっー!」


 とりあえず、上着とスカートを脱いで川へ飛び込む!

 思ったより、深いけど、リネリアは泳ぎも達者なのだっ!

 

 黒いのは……全然泳げなかったみたいで、底まできっちり沈んで、気絶してたんだけど、頑張って引き上げてやったにゃーっ!

 リネリア……頑張ったぞーっ!

 



「はぅわぁ……危うく死ぬかと。助かりました。えっと、猛部璃乃さんでしたっけ?」


「そだよっ! こんな寒いのに、川で泳ぐもんじゃないにゃっ! さむさむだにゃーっ!」


 二人揃って、毛布にくるまりながら、病院のベッドの上で暖かいミルクを飲む。

 生き返るにゃー。


 足を滑らせて川に沈んじゃった黒いのを助けあげて、川から這い上がってきたら、もう大騒ぎだったのだにゃっ!

 野次馬でいっぱいだわ、救急車やらパトカーやらが、いっぱいやってきたり……。

 

 おまけに、川の水はそんなに冷たくなかったけど、陸に上がったらめっちゃ寒かったんだにゃっ!

 真冬に川に落ちて、そのままだと低体温症になるからって、割りと問答無用で救急車に乗せられたのだ。

 

 で……お迎えが来るまで、大人しくしてて欲しいからって、黒いのと一緒に病院の一室に押し込められたのだにゃ。

 

 リネリア、別にどこも悪くないけど。

 勝手に帰っちゃ駄目らしいんで、大人しく言うこと聞くことにしたのだにゃ。

 

 パパ様に怒られるようなことは、リネリアもしないのだ。

 

「はぁ……そう言えば、全然泳げなかったんだっけ……わたし。水陸両用とか意味ないと思ってたんだけど……そうでもないのね。璃乃ちゃんは、偉いのね。普通、人助けだからって、真冬の川に飛び込んだりしないって皆言ってたよ。あの用水路深いし、流れも重いから、うっかり落ちて溺れ死んじゃう人もいるんだって……」


「リネリアは、泳ぎも達者なのだ……寒いのだって、我慢すれば結構平気なんだにゃっ!」


 言いながら、思わずしっぽがフリフリしてたら、黒いのがその動きを目で追ってた事に気付いたのだ。

 にゃ? 一応、耳と尻尾は幻術でカバーしてるから見えないはずにゃんだけどな。

 

 しっぽを右に動かすと、黒いのの視線も右へ、左へついーと動かすと左へ……。

 

「も、もしかして、お前……リネリアのしっぽ見えてるにゃ?」


「あ、はい……尻尾がツヤツヤで触ってみたくて……しまった」


 そう言って、今更のように俯いて誤魔化す黒いの。


 しっぽや猫耳が生えてる人間って、こっちの世界じゃありえないって、パパ様が言ってたんだけど……黒いのは驚いてない。

 

 マジでなんにゃんだ? こいつ。

 

「……お前、鬼眼とか龍眼もちにゃんか? もしかして」


 宇良部っちやシャーロット……あいつらの目は普通じゃないから、リネリアの幻術も全然通用しない。

 ……こいつも、同じ手合っぽいにゃ。


「あ……そ、そうです! そんなところです! えっと、猫耳さんは猫耳さんで? 趣味なんですか?」


「リネリアはリネリアだにゃっ! この尻尾も耳も自前だにゃっ! 実は、変身も出来るにゃっ! 見て驚けーっ!」


 ……ひとまず、リネリアの新技っ!

 

 こっちの世界で、そこら中にいるネコってのに変身!


 フォレストデビルは、こっちの世界には居ないし、おっきすぎて大騒ぎになるから、人前では変身は厳禁って言われてるんだけど。

 

 ネコなら、町中に当たり前のようにいるから、変身しても怒られないのだ!

 まぁ、ちっちゃいから弱っちいんだけど、耳も鼻も効くし、どこでも走れるし、何処にだって入れるから、結構便利なのだ。

 

「どうだ……驚いたにゃ? 言っとくけど、身体変化だから幻術なんかじゃないにゃっ!」


「おおお……ねこねこーっ!」


 黒いのが無造作に抱きついてきて、ぎゅーっと抱きしめられる。

 この黒いの……リネリア達と一緒でぺったんこだし、なんか妙に身体がゴツゴツして硬いにゃっ!

 まるで、甲冑でも着込んでるような感触なのだ……。

 

「も、もっと優しく抱っこするにゃーっ!」


 こいつ……なんか知らないけど、ちっちゃいくせに、やたらパワフルでもがいても抜けられないにゃ!

 こうなったら、パワーアップ……あれ? 魔法が使えないし……どうなってるにゃ?!

 

「うふふ……にゃんこ、にゃんこ、にゃんこっ! サラサラでふわふわで素敵ーっ!」


 いかんにゃ……触れるものをトリップさせると評判の、リネリアの毛皮にすっかり我を忘れてる感じだにゃっ!


 けど、結構ツボを解ってる感じで、いい感じのところをサワサワしてくれる……背中にそってツツツーイとか、そこっ! そこいいにゃーっ! はにゃーんっ!


「の、喉が勝手になるにゃっ! 不覚、でももうちょっと力を緩めるにゃっ! リネリアは逃げも隠れもしないにゃっ! 優しくしないと痛いにゃっ!」


「あ、ごめんっ! 優しく、優しく……だよねっ! うはーっ! 猫はやっぱいいですなーっ!」

 

 黒いの割とご満悦な様子で、頬ずり中。

 相変わらず、リネリアの毛皮の破壊力は抜群だにゃっ!


 ……そんな風に黒いのと遊んでやってると、不意にドアが開いて、パパ様登場!

 

「璃乃っ! お前、何やってるんだっ! ……って、お前はっ!」

 

 はにゃっ! パパ様はこの黒いのと知り合いなのかにゃー。

 

「え? ちょ、貴方は! あ……そいや、この娘も猛部って……」


 とりあえず、腕が緩んだ隙に脱出……しようとしたら、爪が引っかかって、黒いのが巻き付けてた毛布がぺろーんと……。

 

「って、っきゃああああああっ!」


 あ、黒いの素っ裸になっちゃった……そいや、お洋服は乾かしてもらってて、お互い毛布巻いてるだけだったんだっけ。

 

 どうするのかなって思ってたら、一瞬でパパ様の眼の前にワープしたと思ったら、アッパー!

 

 あのパパ様が、綺麗に食らって、ぶっ飛ばされた!


「な、何故だぁあああああっ!」

 

 あのパパ様にパンチ当てられるなんて、その時点で普通にスゴいにゃ! この娘、やるにゃーっ!

 

タケルベ、ぶっ飛ばされオチもそろそろ、恒例だにゃー。

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