第二十四話「とある少女のひとりごと」③
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部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。
読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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……でも、勝たせるための方法かー。
わたしが手を貸せば多分余裕なんだろうけど、さすがにそれは無理だろうな。
実際、興ざめもいいところだし、そこまでやっちゃったら、魔王様とまた一戦交える覚悟をしないと……。
シロとかいざ戦いになると、ガチで殺しに来るからあんまり相手したくないからなぁ。
どうしたもんかなー。
たぶん、鍵を握ってそうなのは、27番目の世界で勇者と魔王として戦ったおじさん達。
どちらも、27番目の世界に愛着持ってそうだし、事情をまるっと説明すれば、その気になってくれて、スゴいことをやってくれるんじゃないかって……そんな風に期待した訳だよ。
わたしって、策士とかそんなのとは、程遠いからね。
とりあえず、難しいこと考えずに真正面から、どっちにも会ってみた。
タニオさんって、アラフォーなオジさんは、発言とか口調がいちいち気持ち悪かったけど。
あれは、多分フェイク……頭のおかしい人と侮ってると、逆にやり込められてしまう。
そういうタイプだと思うんだけど、ただのロリコンな変態さんなのかもしれない。
とりあえず、人をロリババァ呼ばわりしたので、蹴ってやったけど、何故か喜んでた。
「変態ッ! 変態ッ! 変態ッ!」って罵ってやった。
わたしも、案外ベタだなー。
一緒に居た娘さんのパルなんとかって娘の掃き溜めでも見るような目が印象的だった……。
勇者おじ様は、普通にいい人だった。
肝心なことをすっかり説明し忘れた上に、割としょうもないおしゃべりに夢中になってしまった。
このわたしが、小娘のように無警戒に、デレデレと……。
うーむ、何ということだ。
と、と言うか、あの人……女の扱いってもんを解ってる。
若い子よりもやっぱ、ああ言う渋みの効いたオジさんの方がイイよねぇ……。
うん、憧れるな……ああ言うのって。
……ん? わたし、まさかのチョロイン枠?
いやいや、特定個人を気に入ったからって、そんな理由で魔王様に反抗とか、どんなセカイ系ヒロインよ! やだもーっ! 嘘だと言ってよ!
……と、そんな益体もない事を考えながら、街を歩いていると……。
町中を流れる川の横で、しゃがみ込んでじっと水面を見つめる変な娘が目についた。
「ね、猫耳だ……」
思わず、呟く。
なんとかと言う私立の小学校の制服姿。
黒髪で日焼けした褐色がかった肌。
上着も着ないで、やたら寒そうな格好。
冬なのに、腕まくって半袖、生足とか……この年頃の娘達ってある意味すごいわ。
けれど、何よりもわたしの目を引いたのは、スカートからビヨーンと伸びた黒い猫しっぽと、頭の上でピコピコと動く猫耳。
街ゆく人々からもそれなりに注目を浴びてるんだけど、誰も猫耳としっぽには注目してない。
普通に、珍しいはずなんだけど……。
あ、解った。
認識阻害系の幻術かなんか使ってるんだ……面白いな。
こんなのがサラッと混ざってるとか。
この日本モドキの世界……意外と面白いな。
昨日も、ふよふよと空飛んでる狐耳の変なのを見かけたし……。
でも、猫耳ちゃん! 思い切り車道の隅っこに座り込んでるのはどうかと思うよ?
それとパタパタと尻尾振るもんだから、後ろから見ると下着がチラチラ見えて、同性の身としてはさすがに注意くらいしたくなる。
ちなみに、わたしは享年19歳だったので、精神的には大人だと自負している。
見た目がちっちゃいだけで、立派に大人な女なんですからね。
まぁ、タニオさんに、そう言ったら、ロリババア呼ばわりされたんだけど……失礼しちゃう。
「君っ! そんなところにいると、危ないよ? って、わっぷっ!」
肩を叩きながら、そう声を掛けると、川面に居たでっかい錦鯉が引っ込んで、バシャッと水をかけられて、こっちまでひっかぶった!
「……う、うにゃっ! なんなんだ、お前! いきなり、後ろから襲いかかるとか、喧嘩でも売ってるにゃ? お魚が逃げちゃったにゃっ!」
猫耳少女がプリプリと怒りながら、抗議してくる。
……どうやら、気配を消して、鯉が近づいてきたところをふん捕まえるつもりだったらしい。
こっちも別に、襲いかかるつもりなんてなかったし、邪魔するつもりもなかったんだけど……。
それにしても、川幅3m程度の用水路なんだけど、結構深いし、錦鯉以外にも良く解らない魚らしき影も見える。
確かに、見てるとちょっかい出したくなる気持ちは、わからないでもないなぁ……。
「えっと、そうじゃなくてっ! とりあえず、ここは危ないから、場所変えましょっ! ねっ!」
そう言って、猫耳少女の手を引く、言ってる矢先から結構ギリギリを車が通り過ぎていく。
鉄板を渡しただけの橋があったから、とりあえず、そっちへ誘導する。
「こ、ここなら大丈夫かな……ごめんね、いきなり声かけちゃって!」
「うにゃーっ! お前なんなんだにゃっ! やる気かにゃーっ!」
そう言って、猫耳ちゃんが詰め寄ってくると、ベコンと言う嫌な音と共に足場が歪むのが解った。
……物凄く嫌な予感。
解った! これ……人が乗ることとか考えずに、とりあえず用水路の上に、鉄板を敷いただけなんだ。
よく見たら、地面と固定もされてないし、鉄板と言ってもめっちゃくちゃ薄っぺらい!
あんまり言いたかないんですけど。
わたし……身体こそは小さいんだけど、戦闘用に調整してるから、重量は結構ある……三桁余裕だったり……。
「うにゃーっ! これ、橋なのかにゃっ! すごーくたわむにゃっ! おもしろーっ!」
そう言って、ピョンピョンと飛び跳ねる猫耳ちゃん。
「ちょっ! 飛び跳ねないでっ! わたたっ! なんか、メキョメキョ言ってるし!」
慌てて、猫耳ちゃんを止めようとしたけど……。
猫耳ちゃんが着地した瞬間、鉄板がたわんで、わたしの足元の鉄板が入れ替わりにバコンと跳ね上がる。
思わず後ろに下がると、なんかヌルって感じで足がスベった。
で……そのままドボーンと……。
次の瞬間……わたしは……水の中。
いやはや、川に落ちるとか……我ながら、かっこ悪いなぁ……。
そうそう、すっかり忘れてたけど。
わたしってば、泳げなかったんだ。
……と言うか、元病弱少女には、泳ぎを習うような機会は全くなかったのだっ!
まぁ、水に落ちたからって、別に溺死とかしないんだけど……わたしは宇宙空間に放り出されたって平気なんだからね。
でも、きっちり底まで沈んで、ゴロゴロと水の中を転がりながら流されていくのは……何ともシュールで……。
適当なとこで這い上がって、逃げちゃおう……こんなの普通に大騒ぎになる。
警察沙汰とか、御免こうむりたいです!
そんな風に思っていると、下着姿になった猫耳ちゃんが割と必死な感じで水の中に飛び込んできて、こっちに向かって泳いできてるのが見えた。
猫耳ちゃん、スゴい! 我が身を省みずに、見ず知らずのわたしなんかの為に……!
でも、無造作に水の中をスタスタ歩いて行ったら、凄く怪しいっ!
と、とりあえず、重量軽減モードに移行して……死んだふりでもしてよう。
世の中、押し並べてナスがママなら、キュウリはパパっていうじゃない?
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イマイチ、不評か?
まぁ、端折るのも考えたんだけどねぇ……。