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とある勇者だったおっさんの後日談。ある日突然、異世界生まれの娘達が押しかけてきたんだけど、問題児揃いだった件について。  作者: MITT
第四章「進撃の魔王国執政パルル様」

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第二十二話「とある魔王の娘と元魔王、ふたりの語らい」③

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 現在、2chRead 対策で本作品「とある勇者だったおっさんの後日談」においては、

 部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。

 読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。 

                  Copyright © 2018 MITT All Rights Reserved. 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「……ごめん。ついアツくなっちゃったね。君達は何も悪くない……けど、俺だって悔しいし、情けない。これじゃ、まるで俺たちは道化みたいだ……。本来、俺もタケルベも責任を取るべきなんだ。女神に踊らされたその責任を……。けど、俺達はそのツケを君達次代を担う者達に託す……それしか出来ないんだ」


 俯き、苦悩している様子のお父様。

 ……その悔しさ、無念さが伝わって来ますの……。


「私は……お父様もタケルベ様も悪くはないと思います。けど、具体的にどうすればよいのでしょう? 世界が滅びると言われても……それに、魔王の中の魔王……それは一体、何が目的なのですか?」


「そうだね……アレは、邪悪な存在ではないのだけど、善良でもない。絶望的な状況で、人々が苦悶し、必死で足掻いているのを見て、悦楽を感じ、最後の最後のギリギリになって、助け舟を出してくれる……そんな存在なんだ。だが、それこそが君達にとっては、最後の救い手となりうる」


「だから、何ものなんですか、それは? なんで、そんなのに頼らないといけないんですか? 他にやりようだってあるはずなのでは、ありませんか!」


「……ない。本来の救い主たる神々ももう居ない……これは、もう覆せない摂理なんだよ。魔王の中の魔王は、君達に救いの手を差し伸べる代わりに、試練を課すと言っていた。具体的には、その使徒達や同じように異世界を欲する勢力達との戦いが始まる。君達はそれら全てと全力で戦い、新天地を勝ち取らねばならない」


「そんな……戦うって? なんで、そんな事になるんですの! 魔王の中の魔王ってのは、何なんですか! それのどこが救いの手なんですか! そ、それに……わたくし達の世界だって、たとえ土地が枯れ果て、食料が得られなくなっても、日本と交易をすれば、まだまだ何とかなりますの!」


「無理だ……マナが完全に枯渇した世界なんて、もう誰も住めやしないよ……。それに、マナが枯渇したら、世界間の繋がりだって切れてしまう。世界そのものが……もう死にかけているんだ。神ですら見捨てると言うのは、そう言うことなんだ。きっと何年も前からこうなるのが決まってたんだ。もうどうにもならない……。であるからこそ、絶望の底の最後の希望にすがる……それ以外に、救われる術はない」


「……な、なら、わたくしがその魔王の中の魔王と交渉いたします! お父様……その様子だと、交渉の窓口もお持ちなんですわよね? ならば、わたくしにお任せください! もっといい条件を勝ち取って来てみせますわ!」


「ははっ……君は、ほんとに聡明だね……。何よりもとても優しい子だ。きっと順当に行けば、向こう側に本当の平和をもたらすことだって出来ていただろうね。けれど、あれは交渉できるような相手じゃない。俺へ伝えられたのも一方的なこれから起こることの通達だ。そして、俺に出来ることも、こっちの世界を利用して、君らの手助けをする程度だ。俺自身はもう戦う術も無い、言わば終わった存在だからね」


「それでも、お父様は……わたくし達の味方。そう思ってよろしいので?」


「ああ、いつだって俺は、君達の問答無用の味方だ。親ってのはそう言うもんだ。そこは信頼して欲しい。けど、君達にはもうひとつ選択肢がある。向こう側のすべてを切り捨てて、君達だけでこちらの世界に移住するんだ。幸い君達はこっちの世界ですでに足場を築いているからね。可能な限りの資源を向こう側で収奪して、日本へ亡命を希望すれば、この国はきっと受け入れてくれるだろう。これも一つの手だと思う」


「……論外ですわね。誇りある魔王の眷属が、己が導くべき民を見捨てて、自分達だけ助かる? 我らをそこまで恥知らずだと思っておいでですかっ!」


「うん、思った通りの回答だね。なら、出来る限り多くを救う為に……奴らの思惑に乗るしかないね。であれば、まずは戦争に備えるんだ……これはもう、なりふりなんてかまっちゃいけない。禁呪、封印魔獣、魔剣……向こうにも色々やばいのはあるよね?」


 地竜族の使う重力魔法……。

 それに匹敵する地形や天候すら変える戦略級魔法とも呼ばれる……禁呪。


 ……古竜と呼ばれる竜族の真祖達、海の底に封じられた海魔と呼ばれる存在。


 永遠の虚と呼ばれる大穴の底に封じられた吸血鬼族の真祖達、お父様が魔王国の各地で平定し、煉獄の地に封じたと言われる数多くの大魔族達。


 魔王城の宝物庫に眠る、いくつもの忌まわしき逸話を持つ魔剣の数々……。


 いずれも本来ならば、永遠の眠りに就いているのが、相応しいモノばかり。


「正直、どれも……あまり、使いたくありませんわ……」


「そうだね。その様子だと俺が居た頃のままなんだろうね……君は、実に賢明だ。そうだ……こっちの世界の銃火器の類も出来るだけ大量に買い漁るんだ……確かアメリカから兵器購入の打診を受けてたよね。なんであれ断っちゃったの? ゴブリンと銃火器とか、かなりいい組み合わせだと思うんだけど」


「……わたくしは、そう言う力を追い求めると言うのは、あまり気が進みませんの。わたくし達ゴブリン族は弱いからこそ、どこに居ても許される……そんな存在になれたんです。そして、魔王国のあらゆる場所へ浸透し、魔王国にとって欠かせないパーツとなる……それこそが、我らの安全保障政策なのですわ。わたくし達に、力など必要とされなかったのですよ」


「なるほど、君達ゴブリンは魔王国の血液のようなもの……欠かすことの出来ない存在故に、誰も排除出来ない……そう言うことか。やはり君こそが、魔王を名乗るに相応しいね……誇りにすら思うよ」


「ありがとうございます……でも、わたくしのこれまでのやり方では、通じない相手だと言うことなのですね……」


「ああ……残念ながらね。状況はそれを許されない。いいかい? 近いうちに君達の世界と日本に新たな世界へ続く転移門が現れる。けれど同時にこの世界の他の国にもそれは現れる事になる。門の向こう側の世界はどんなものだって受け入れる世界だと言う話だ。……それが魔王の中の魔王が用意してくれた救済なんだろうね。……けど、その結果、何が起こるか? 君なら解ると思う」


「地獄のような争奪戦……日本ですら敵に回る可能性がある?」


「そうだ。今の世界情勢は日本と、ご相伴に預かったアメリカだけが好況で、他の国はその煽りを受けて、ドン底レベルの不況に喘いでる。そんな折に、自由に行き来出来る、手付かずの異世界へ続く門が世界各地に開かれたら、どこもこぞって進出するだろうさ。そして、君達も滅びゆく世界を捨てて、その世界へ進出せざるを得ない! どうやっても戦争は回避できないだろうさ」


「つまり……生き残るために、熾烈な争いを勝ち抜けと……そう言うことなのですか?」


「そのとおり……君達が生き延びるには、戦って戦って、自力でその世界を奪い取るんだ! それが君達に科せられた役割だ。別の異世界の軍勢、それに魔王の中の魔王の使徒の軍勢もそれに加わる事になる。彼らは、状況をかき回すために用意されたジョーカーだ。話し合いなんて初めから通用しない。それに、こちらの世界の他の国は、日本みたいに甘くない」


「……はぁ、そうなると覚悟を決めるしかありませんね……」


「そうだね。もはや、内輪もめなんてやってる場合じゃない。使者の話だと、タケルベにもこの話は伝わっている。奴の娘経由で、話は人族側にも伝わるだろうから、早急に協力体制を構築するんだ。いいね?」


「……ゆ、猶予はどの程度なのでしょう? 戦いになる前に、他国との話し合いとか、出来ないものでしょうか?」


「およそ、三ヶ月後……それなりの時間があると言えるけど、それしか猶予がないとも言える。あのお方は死に物狂いの戦と、そこから生まれる奇跡の物語をご所望らしい。話し合えるとすれば、人族側とタケルベ達達勇者の一族。それと日本とも交渉の余地はあるだろう。この国は変わった国で非戦を国是としてるんだ……侵略とか侵略されたりとか、もううんざりだって、半世紀以上前に思い知って、頑なにそれを守ってる。それに君のおかげで何十年も続いた不景気が解消されて、今後も景気をかき回してくれることを期待してるんだ。上手く立ち回れば、味方になってくれるかもしれない」


「良くも悪くも、わたくし達、次第……そう言うことですか……」


「まぁ、この国は領土的野心はあまりないから、上手く利権を分け与えれば、心強い味方になってくれるだろうさ。それとアメリカも……現時点で、あの国を敵に回さなかったのは実に賢明だった。実は、あの国の大統領とは個人的なお友達でもあるからね……こっちは俺がなんとかしてあげるよ。……ただ、ロシア、中国あたりは確実に敵に回りそうだけどね」


「あの国々は21世紀になっても、まるで蛮族みたいな調子なんですよね……。その辺は、例の国際調査団の相手をして、思い知りましたわ」


「……だろうね。俺もあの国には技術をパクられたり、現地法人を乗っ取られたり、随分やらかされたよ……。他に大きな勢力としては、EUあたりだけど、あっちはもう地球の反対側だし、日本とは利害関係も少ないけど、ドイツあたりは妙な動きを見せてるようだからね。多分何か企んでる……」


「……こちらの世界の国々も相手取って、異世界争奪戦の準備もしろと……つくづく、面倒な話ですわ。お父様はどこまでお力を貸して頂けるので? 傍観者に徹するとか言い出したら、グーで殴りますのよ……」


「さ、さっきも言っただろ? 俺は、君達の絶対なる味方だ。こちらの世界で手に入れた力の全てを使ってでも、君達を支援するつもりだよ。それだけは確約できる……具体的にはT&Tカンパニーの総力を使って、支援する構えだ。金、武器、人材、技術……なんでもよりどりみどりだ! 何と言っても、世界有数の国際企業で、その上世界中のコンピューターシステムのOSを握ってるからね。その気になればなんでも出来ると思っていいよ」


「実に、頼もしい話ですこと……けど、せいぜい当てにさせてもらいますわよ?」


「ふっふーん、このタニオ様、ちょっと本気出しちゃうからね! 可愛い子供達のためなら、なんだってやるよっ!」


 ……唐突に告げられたわたくし達の世界の終わりと、魔王の中の魔王とその軍勢。

 

 生き残るための戦いの到来の知らせ。

 わずか三ヶ月先に到来するその戦いに備えて、わたくしも独自の戦いを開始しなければならない。


 お父様と言う頼もしい味方もいるけれど、交渉しなければならない相手は山盛り。

 

 憂鬱ですわ……また満足に眠れない日々が始まりますのね。

 

 戦が始まってしまえば、戦自体は、戦の専門家達にやらせるだけの話ですけど、戦に至るまでの備えはまさに、わたくしの仕事なのですよ……。


 政治は軍事上の失敗をつぐなうことができますけど、その逆はありえませんからね。

 

 けど、その前に……わたくしも、ミリィ達を見習って、休暇でも取ろうかしら。

 と言うか、今がチャンスって気もしないでもないですわよね?

 

「それでは、お父様……わたくしもやることが出来ましたので……そろそろ、お暇させていただきます」


 そう言って、お父様へ向き合って、深々とお辞儀。


「ありゃ、もう帰るのかい? そうだね、お互い忙しくなりそうだからね……まず、何から手を付けるんだい?」


「いえ、まずは三日ほど休暇でも取ろうかと。レミィたちにも休暇を与えたんで、それに便乗しようかなって思ってますの。二人は群馬の草津温泉に行くそうなので……今から追いかければ、合流できますわ! 時間が時間ですけど、タクシーでも呼べば、連れて行ってくれますよね?」


「温泉っ! そりゃあ、いいね! 解った……そう言うことなら、俺が車で送っていってあげよう! 実は、俺って結構暇人なのよ! どうせなら、景気良く旅館一つを貸し切って、親子で贅沢三昧のんびりしっぽりとかどうよ? レミィちゃん達とも色々お話したかったんだよね! 褐色エルフ娘とか超いいっ! あ、なんだったら、家族風呂でも借りてさ! 皆で、仲良……」


 最後まで言い切らせる前に、ヨミコから預かってたハリセンをその顔面にズドーンッ!

 

「お父様は、なるべく口を開かないほうがよろしくてよ? 何してるんですか、送っていってくれるんですよね? とりあえず、時間が勿体無いんで早く行きましょうねっ! お・と・う・さ・まっ!」


 そう言って、手を差し伸べて上げますの。

 頭を掻いて、苦笑しながらわたくしの手を握るお父様。

 

 そう言えば、初めて……手が触れたかも。

 それに気付いたら、ちょっとドキッと……しちゃいましたの。

 

「ん? どうしたんよ……パルルちゃん、顔が赤いよ? そいや……君から手を握ってくれるなんて初めてだね! ちっちゃくって暖かっ! いいね、いいね! ホント可愛いなぁ……もうっ!」


 抱きついてこようとしたお父様を、無言でハリセンでパンパンと殴りつけて差し上げますの。

 ……照れ隠しとかじゃありませんからねっ!

 

 けど、割りと過酷な現実を突きつけられた割には、わたくしもそこまで深刻に感じてないし、プレッシャーも感じてませんの……元々、図太いって自覚はあるんですけどね。

 

 深刻さに程遠いお父様を見てると、真剣になるのも馬鹿馬鹿しくなってきますの。

 どうせ、なるようにしかなりませんのよっ!




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

一応、ここまでで第四章は終了。

割りとなし崩し的に四章始めちゃったので、続きの第五章はまだまだ全然書きかけ……。


なので、ここでまたストーリー的には、インターバルをはさみます。


明日からは、一週間ほどかけて、日常回(?)の外伝をアップします。(笑)


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