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第二十話「とある魔王の娘の憂鬱なる日々」③

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 現在、2chRead 対策で本作品「とある勇者だったおっさんの後日談」においては、

 部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。

 読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。 

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 こうして、多大なる資金を手にいれたものの、使うだけでは、あっと言う間になくなってしまいます。

 それに、10億もの大金と言っても半分は借金。

 

 借りたものは返す……それは当たり前ですの。

 その為には、こちらもお金を儲ける為に、物を売らないといけませんの。


 ……銀行さんは、日本経済の専門家。

 早速、支店長さんに相談させていただくことに致しましたの。

 

 まず、こちらが輸出できそうな品目を上げていくと、向こうの顔色が一変。


 石炭やら、鉄鉱石、それに木材、宝石や金銀銅と言った貴金属。

 すぐに調達できそうなものとしては、このあたりになるのですが……。

 

 どれも日本が喉から手が出るほど欲しいような物ばかりらしいんですの。

 この調子だと、アルミニウムの原料となるボーキサイトやレアアースと呼ばれるハイテク産業に欠かせない貴金属類もあるはずだと、断言されましたの。

 これは要調査ですねー。

 

 とにかく、これらの価格を金換算の上で提示したところ、海外産と十分勝負できるどころか、むしろ、安すぎると言われましたの。

 

 鉱石のたぐいは、魔王国でも戦略物資とされているのですが、ビフレスト大火山やその周辺の山岳地帯では、割りといくらでも採掘できますからね。

 

 ぶっちゃけ、火山周辺に落ちてる石ころが鉄鉱石だったとかそんな話も普通。

 

 人族にも食料と引き換えにするための取引材料として使っていたので、その際の取引相場と、こちらの金相場から算出した金額だったのですが、どうやら相当ぼったくられていたようです。

 

 むしろ、提示した価格では、安すぎて海外勢が発狂して国際問題になりかねないと言うことで、提示された適正価格で、提供可能な資源量で換算すると……それだけで、魔王国の総資産評価額が兆とか言う単位になりましたの。

 

 こちらとしては、むしろぼったくっているような価格なのですが、こう言うのは相場というのがあって、その辺はきっちり守るのが暗黙のルールなんだそうで……。

 

 なにより、日本では、船を使って海外から資源の輸入をしているものの、国際情勢や通貨相場になどに左右されて、日本経済は常にそんなものに振り回されているとのことで、地続きでそれらが安定して調達できるのであれば、それはもう願ったり叶ったりと言ったものなんだそうです。

 

 だからこそ、多少強気の価格でも勝負になるとの事。

 

 このあたりから、担当者も支店長から、地域統括マネージャーにチェンジ、総合商社の営業担当者なんてのも出てきましたの。

 

 更に、これまで利用価値なしとされていた異臭を漂わす黒い水を湛えた巨大な湖。

 

 向こう側の知識を得たことで、それの正体が油田から溢れ出てきた原油なのではないかと気付いていたので、これについてもお話したら、銀行の頭取まで出てくるような大騒ぎになってしまいましたの。


 T&T社の言うがままに現地調査をし、提出した資料を元に、向こう側の専門家が鑑定した推定埋蔵量は、日本での年間石油消費量の50年分に相当するなんて話……。

 

 日本側の関係者のはしゃぎようったら、こっちがドン引きするくらいでしたけど、日本国内に無尽蔵に近いような油田が湧いたようなものなんだそうで……。

 

 それら資源サンプルの分析結果も、魔王国産資源の質は極めて良好で、大量輸送の手段が確立できて、輸送コストの問題が解決できれば、いくらでも買い手が付くなんて話になりましたの。

 

 どのくらいの勢いだったかと言うと、銀行側が先物買いと言って、物がないのに物があることを前提に予約を入れて、お金を先に支払ってくれたほど……。

 

 物がないのに、先払いなんて意味が解りませんけど、絶対値上がりしそうなものやたまたま相場が暴落した時を狙って、物を買う時に使うような商取引なんだそうです。

 

 おかげさまで、魔王国の代表ということで、作ってもらったわたくしの預金通帳の残高は、もはやちょっとした国家予算並の数字に……。

 利息だけでも、年間億単位で増えていくとかなんとか……。

 

 ちなみに、全額引き出しとか間違ってもしないでくれと念押しされましたわ。

 なんでも、銀行さんの手持ち現金の総額を超えてるからなんだそうで……。

 

 一度、札束の山ってのを見てみたかったんですけどね……残念です。

 

 かくして、こちらも莫大な日本円を手に入れたことで、日本製の食料品や日用品を大量に輸入できるようになりましたのです。

 

 そうなれば、早速爆買いなのですわーっ!

 

 第一陣として、T&T社に発注した食料物資の量は、なんと三万トン。

 直ちに必要な分を計算させたら、それくらいになってしまったのです。

 

 皆、黙ってただけで魔王国の食料難はその程度には深刻だったのです。

 さすがに、これにはわたくし、大激怒! もっと早く報告しろと。

 

 どうも、魔族の方々も今年が不作だった事を解ってて、それはわたくし達のせいじゃないと言うこともあり、気を使って黙っていたようなのですが……そう言うのを何とかするのが、執政者の努めなんですわっ!

 

 これと言うのも食料が足りなければ、他所から奪えばいいじゃない的な脳筋魔族の蛮族的思考が駄目なんですわっ!

 

 実際、各種族から人族の領域への侵略戦争の要求圧力が高まっていたのは、これが原因でしたの。


 ですが、そんな流れは断ち切ってしまえばいいのですっ!

 札束の力で解決なんですのよっ!

 

 T&T社としては、いきなりこんな量は調達できないと言っていたのですが、その辺は銀行さんや総合商社の皆様が政府筋に話を通してくれたことで、なんと政府レベルでの取引に発展。

 

 日本政府側の回答は「もう欲しいものがあったらドンドン売るよ! いくらでも用意するからっ! 石油の件、最優先でよろしく!」と言う超頼もしい返事。


 どうも石油採掘の話が出てきた時点で、介入する気満々だったようで、そこから先は国内主要企業関係者も続々とやってきて、あっと言う間に国家プロジェクト並に話が大きくなってしまいましたの。

 

 かくして、膨大な物資の買い付け、ピストン輸送での魔王国への大輸送。

 同時に魔王国での資源採掘体制や輸送網の大幅増強……それに伴う更なる物資の調達と、魔王国でも凄まじい勢いで経済活動が増加。

 

 これは日本側でも、食料品価格やら資材価格の上昇、交通インフラの圧迫と言った弊害をもたらし、それを契機にインフレ状態になるなど、色々な問題を起こしたようですが、消費拡大と言うのは悪いことばかりではありません。

 

 消費が増えて、物不足となり価格が向上……。

 これは消費者の立場からは、困った話ではあるんですが。

 

 物が足りなければ、増産すれば済む話。

 交通インフラも増強すれば問題なし……そこから生まれるのはさらなる需要。

 

 その結果、雇用促進、生産者側の収入向上と多大な恩恵が生まれるのです。

 生産者は消費者にもなるので、彼らの収入が向上することで、更なる消費促進へと繋がる。


 まさに、経済の好循環という奴ですね。

 物価だけが際限なく上がっていくハイパーインフレというのは、需要に供給が追いつかない結果発生するものなので、供給さえ追いつけていれば、それは爆発的な好景気へと発展するのです。

 

 おまけに、需要増から資源価格相場も向上し、こちらの資産も想定以上に増加……まさに誰もが美味しいWin-Win。


 わたくし一人の力という訳ではないのですが……。

 こんな結果になるとは、わたくし自身、想像もしてませんでしたの。


 それまで、日本という国は、消費の低迷から景気経済の縮小、いわゆるデフレが問題になっていたのですが。

 わたくし達魔王国と言う一大消費地が突如、国内に降って湧いてきたようなもので、その流れが完全に逆転してしまったようなのですね。


 ……めでたし、めでたし……なのですわっ!

 

 それから……。

 わたくし達も輸入品は、最初は穀物や資材などに限定していたのですが、余裕が出来れば、皆贅沢をしてみたくなるもの。

 

 徐々に品目を増やしていったのですが、少量ながら輸入していた嗜好品や高級食材が思った以上に大人気。

 それも日本産の高級食材を指名する声が大きいのなんの。

 

 元々、有力種族の上流階級の連中は、わたくし達十二貴子が日本からの土産と称して持ち込んだ贈答用高級食材などで味をしめていた事もあって、潜在的な需要があったみたいなんですね。

 

 難物で知られていた空竜の王ヒューリー卿が、それまで渋っていたワイバーン連絡網の増強要請に、松阪牛1tで手を打とうなんて、言ってきた時はわたくし、まさにこれだと思いましたの。

 

 かくして、日本産高級食材をターゲットにした調達ルートの構築。

 次に取り掛かったのは、これでしたの! まさに餌付け! 反抗的な魔族たちを手懐けるもっとも良い方法!


 例の支店長さんによると、日本の農業や酪農と言った産業は色々問題があって、生産者があまり儲からない構図になっているとかで、とにかく流通に無駄が多いみたいなんですの。


 聞いた例の一つでは、スーパーで贈答用に並んでいる一房で五千円もする高級ブドウも、生産者はわずか千円程度しか儲からないと言う話なんですの。

 

 で、これが魔王国だとどのくらいの価値があるかというと。

 

 アサツキ達サキュバス族の貴族の例をあげると、先の高級ブドウなら日本円換算で5万円出すと言ってくるような調子。

 なんせ、魔王国ではそんなもの栽培されてませんからね。

 

 ヨミコが拠点にしているのは、岡川というフルーツの名産地で、戻る度に手土産で色々持ち込んでいたらしいんですが……それですっかり味の虜になってしまったようなのです。

 

 竜族も牛肉、牛肉、牛肉が食べたいなどと、日に日にやかましく騒ぎ出すわで……。

 危うく日本産高級食材を巡って内戦になるところでしたの……洒落になっていませんの。

 

 そんな訳で、こっちもなるべく早急に日本産高級食材を大量調達する必要があったので、もう生産者に直接取引を打診。


 ……ええ、普通に向こうも大騒ぎですわ。

 

 なにせ、こちらの提示した買取価格は向こうの相場の十倍。

 二十倍だっていいくらいだったんですが、その辺は一応配慮したんですけどね……。

 

 文字通り桁が違う取引に生産者側も騒然。


 一人に声をかけたら、一人だけうまい汁を吸うのかと隣近所が大騒ぎ。

 

 流通関係者も既得権益や必要確保数ってものがあるんで、これまたちょっと待てやと、大騒ぎ。

 

 あっと言う間に、収拾しゅうしゅうがつかなくなってしまったので、日本政府が介入するような騒ぎになってしまいましたの。

 

 でも結果オーライだったらしく、大規模直接取り引きによる農村の収入の大幅アップとそれに伴い、機械化の促進、関係技術者や高給を餌に募集した労働者が農村部に流入と割といい事ずくめだったらしいです。

 

 これ幸いとばかりに流通形態の改革も強行されたようで、日本政府もなかなかのやり手のようで……これだから、侮れないんですわ。



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セリフ無し回ですが。

パルル様の軌跡、ダイジェストって感じです。


これ、細かくやったら別の話が一本出来ちゃいますから。

パルル様が10億円を元手に、わらしべ長者的に経済チート化していく話です。(笑)


ちなみに、この世界の日本人の大多数や生産者は、良く解かんないけど、日本政府が食料大量買い占めを始めたらしいくらいしか解ってません。


おかげで、食料品の価格が上がって、ブーイングも出てますけど、ガソリン価格が暴落して、景気もやたら良くなってるので、トントン。


農村部では、魔王国と直接取引が実現した人達を中心ににわか長者が続出なんてことになってる上に、農業法人の進出ラッシュが始まって、地方発の好景気なんて良く解かんないことになってます。

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