第十五話「とあるおっさんのいい旅、夢きぶん」②
4人ゾロゾロと、例によって徒歩でレンタカー兼ガスタに出向いて、車を借りる。
車種は、トヨムラの「ハイパーエース」で決まりっ!
土建屋御用達、人員移送に機材運搬、色々便利に使える現場のお供!
……なので、扱いは手慣れたもの。
質実剛健! 万能無敵! 広くてデカくてカッコイイ!
略して「ハイエース」!
燃える漢の浪漫満載な名車中の名車っ!
……別にハイエースしてダンケダンケしに行く訳じゃない。
自分の娘を迎えに行くのだ! ちょっと軽く合法ハイエースってところだ。
誰にも文句なんて言わせないぜ!
そんな風に、ノリノリでドライブGO!!
……そう思ってた時期が俺にもありました。
まぁ、なんなんだろうね。
最新型ハイパーエース……乗るなり、もうなんか違った。
インテリジェントカーナビやら、ドライブアシストとかレーダーサポートだの……謎ハイテク機能てんこ盛り。
前面フロントガラスは、SFチックな感じに文字や数字が表示されて、四角のやら線やらがあちこち走ってるヘッドアップディスプレイなんてのが装備されていた。
質実剛健が売りのハイエースにも、時代の流れで着実にハイテクの波が押し寄せていたのだよ!
「俺さぁ……もっと普通ので、よかったんだけど」
思わずつぶやく。
ネット予約もせずにレンタカーにいきなり行った結果。
ハイパーエースはもちろん、ワゴン系もあらかた出払ってて、残ってたのが自律稼働車のデモカーとして置かれていた最新式の「ハイパーエースFX マークⅦ」!
やったねハイエースゲットだぜ!
……と思っていたのだが。
俺の知ってる10年落ちの土方仕様ハイパーエースとなんか違った……。
「お父様っ! スゴいです! これ……リネリアより、はっやーいっ!」
なお……助手席のアルマリアは、窓にへばりついて、やたら興奮中。
身内を車と比較するのは、どうかと思うし、そのセリフは色々ダメだ……。
……とにかく、初めてのドライブというものを存分に堪能してらっしゃるようだった。
なお、ナビゲーターとしては、全くの役立たずながら、超頭いいカーナビ様がいらっしゃるので、問題ない。
ヨミコも祥子も後ろでお菓子食べたり、TV見てたりで、なんだかすっごく楽しそう。
良く解らんが、ヨミコは例のマッサージですっかり、祥子に取り入ったらしい……なんと言うか、抜け目ない。
なんでも、祥子……万年肩こり持ちなんだとさ。
理由は……皆まで言うな。
俺は、ハンドル握って座ってるだけで、あんまやる事ない。
加減速も勝手に行われるし、ハンドルも手を添えてるだけで、勝手に切られて勝手に戻る。
まさに左手は添えるだけってやつだな!
信号フライングとか煽り運転なんかは、許してくれない。
黄色信号だって、きっちり止まる。
皆、勘違いしてるけど、黄色は急いで渡れじゃなく、止まれなんだぜ?
ロボットカーが普及すると、警察さんが仕事無くなるからやめてーとかなんとか、駄々こねてるらしいけど、納得。
スピード違反も絶対しないし、信号無視も一時停止違反もしない。
駐禁だって、変なとこでエンジン切ろうとすると、フロントガラスいっぱいに『警告! ここは駐停車禁止区域です!』とか警告される。
横断歩道を渡ろうとするお年寄りが居たらきっちり止まるし、自転車を避けるのだって、スムーズなもの。
狭い道でのすれ違いも、絶妙なすれ違いポイントで譲り合って、完璧に決めてくれた。
燃費もリッター30kmとか出るらしい……もはや、原付顔負けだ。
このロボットカー。
聞いてた話だと、せいぜい高速道路で車間や一定速度をキープしてくれるとか、危ない時に自動でブレーキかけてくれるとか、そんな程度だと聞いてたんだけど。
何故かヨミコがやたら詳しくて、訳の解らない操作をして、全自動モードに設定された。
裏モードって言ってたんだけど……なんでそんなの知ってるの? コイツ。
なんでも、例の後援者とやらは、とあるハイテク企業の重役という話で、アサツキもそこの関係者らしい……。
……なにそれ、怖い。
と言うか、異世界人の方がハイテクに詳しいとか、どうなの?
俺って、いつのまにか時代に取り残されたローテクオヤジに成り下がってたの?
……なんか、悔しいっ!
高速に乗ると、トラックなどはロボットによる半自動運転が進んでいるとかで、お互い譲り合うような感じでスイスイ進んでいく。
むしろ、フルマニュアルの普通の車……君たち、すごく邪魔。
追い越し車線をのんびり走ってたり、フラフラ右へ左へ行ったり来たり。
ちょっと車間が空いてると、強引に割り込み……あっぶなっ!
たまに表示されるエマージェンシーコールは、ほとんどこの手合が原因。
この自動運転システム……ちゃんと、インテリジェントカーとフルマニュアル車を区別して、フルマニュアル車はフロントガラスに、赤いマーカーが表示されるようになっている。
人間が最大のミスファクターって話は多分本当。
よく見ると、他のインテリジェントカーも連携して、フルマニュアル車を避けている様子。
ロボット君達、差別は良くないと思うよ?
たまに煽り運転してくるようなのもいるのだけど、悪質なのはしっかり周り中からカメラで撮影されてるので、後々警察から呼び出しくらって、免停とかなるそうで、最近はめっきり減っている。
路上のインフォメーションモニターにも『そこの車、もっと車間を開けなさい!』とか撮影したての証拠写真付きで、警告が表示される有様。
悪いことなんて、もう出来ないっ! すごい世の中になってきたなぁ……。
まぁ、いつもニコニコ安全運転、飲酒運転だってしやしない俺には関係ないけどね。
と言うか、仕事以外でハンドルなんて握らんからなぁ。
やがて、二時間ほどで目的地の作州市付近に到着。
勝央のサービスエリアで腹ごしらえと休憩を兼ねて、ストップイン。
結局、俺、ハンドル握ってただけで、ほとんど何もやってないけどな!
でも、血の通わない冷血マシーンに命を預けるとか嫌すぎるんで、それなりにずっと気を張ってたのだよ! ああ、疲れたっ!
なお、電車だと、ここまで来るのに驚きの4-5時間コース。
新幹線なら、東京いけちゃうくらいの時間がかかる……訳が判らんのだけど、本当の話。
姫新線と言うローカル鉄道の旅だから、なんども乗り換えないといけないし、いちいち30分とか一時間待ちとかそんな調子。
おまけに、姫新線と言っときながら、新目から姫城の直通運転もない上に、一日8本しか無くて、一本逃したら次は二時間後とか、そんな世界……まさに、ハードコース!
やっぱ車って最高っ! ロボットカーじゃなくて、軽ワゴンでも良いから車、買おう!
ああ、でも家族が増えるから、大きいのにしないとなぁ!
でも、大きいのにすると高確率でロボットカーになると言うの現実のようだった。
日本は、何故かAI技術とロボット関連技術について、ブッチギリの最高峰の技術を持つようになってしまい、自動車についても凄まじい勢いで自動化が進んでいるらしい。
ロボットカー以外となると、むしろ外車とか、硬派な走り屋仕様な車作りで知られる広嶋のマスダ車になってしまう罠。
マスダも悪くないんだよなぁ……RX-87とか超かっこいいし、でも、広嶋はなぁ……。
「むむむ……」
思わず、スマホとにらめっこしつつ唸り声をあげる。
「なぁに、唸っとるんや? でも、この黒豆ソフトってのも美味いなぁ! タケルベはんのお勧めにしちゃ悪くないで、一口おすそ分けやっ!」
サービスエリアの飲食コーナーで、ちゃっかり隣をキープしたヨミコがご機嫌そうに、スプーンに掬ったアイスを俺に向ける。
差し出されて、拒絶するのも何だったので、遠慮なくいただく。
「うん、相変わらず、きなこ味だな! 黒蜜かければパーフェクトだ!」
「うちも好きやでー! 信玄餅っ! あれはええモンやなー」
それ、この辺じゃ売ってないんだけどな……このヨミコ、異世界人のくせにこっちの事、詳しすぎ。
アニメとか漫画の事も詳しいし、当たり前のようにスマホで、インターネットなんかも使いこなしてる。
日本各地にも行ったことあるらしく、帝都東京の事だって、よく知っていた。
ちなみに、この辺、信玄餅は売ってないけど、似たようなもんで「大風呂敷」なる取鳥県の名物ならある。
きなこ餅に黒蜜ならぬ梨蜜をかけるって代物。
なんと言うか……すごく……パチもんです。
「な、なんでヨミコがお父様にそんな事を! なんかズルいです!」
向かいで、カレーうどんを食ってたアルマリアがプンスカと怒り出す。
なお、気に入ったらしくこれで三杯目。
アルマリア、割と燃費悪いのか、車内でも隣でずっと何か食ってたような気がする。
この小さな身体に何処に入るのかと言いたいくらいよく食べるようになってきた。
どうも最初のうちは自重してたようなんだけど、こっちの世界の食べ物の美味さに気付いてきたらしく、なんか食べ物に関しては目の色を変えるようになってきた……もしかして、大食いキャラ?
太ったりしませんように……でも、よく食べる子って、意外とかわいい。
「ええやん……うちは、もう身も心もタケルベはんに捧げると決めたんや……もう一口どや? あーんや!」
自分の子供と大差ない女の子にあーんとかされる。
おまけに、朝からずっとこんな調子で、割りと露骨な求愛行動のようなものを連発してくれている。
傍目からは親子とでも思われているのか、似たような子供連れから微笑ましいと言った視線を浴びる。
まぁ、違うんだけどな。
と言うか、コイツ……馴れ馴れしすぎる上に、アルマリアもヤキモチ焼き始めて、さっきからピリピリした雰囲気なのよね……元々敵対関係だったみたいだし……。
今も視線を交わし合って、バチバチと火花が飛び散りそうな雰囲気。
「はっはっは! 二人共仲良くしろよーっ!」
もういい、ここは空気なんて読まずに、軽く笑って済まそうっ!
この世界、現実よりもAIやロボット系技術がかっ飛んでるもんで、田舎なんかだとハイテク車と軽トラが並んで走ってたり、シュールなことになってます。
ドローン技術の応用で、狂った飛び方をする試作無人戦闘機とかも作られてたり、着々と変な方向へ向かいつつあったりします。




