第十三話「とある勇者の家族の絆」②
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現在、2chRead 対策で本作品「とある勇者だったおっさんの後日談」においては、
部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。
読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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……それから僅か三日後。
私とリネリアは、封門師の一族の協力を得て、王国に存在していたもう一つの越界の門を発見していた。
「こ……これが、超界の門……なのかにゃ? なんか、綺麗だにゃー……」
リネリアが呆然と呟く。
20ダーシュ(20m)ほどの部屋の床に広がりつつある虹色の水のような奇妙な模様。
その表面には、複雑な魔法陣が十重二十重に展開されている。
その荘厳さと美しさに思わず見とれそうになる。
「……そうだ。まさか本当に見つかるとはな……だが、良いのか? この先は勇者タケルベ殿の世界に繋がっているのは確実なのだが……何処につながっているかは解らない。戻れる保証も何一つ無い……我々もこれから先は、何の手助けも出来ない……それはお前たちの母親たちも同様だ。そもそも最後にひと目くらい会っていかなくてよかったのか? 今生の別れとなるやもしれんのだ……」
封門師の一族のひとり、イナガさんが淡々とした様子で私達に告げる。
けれども、その声には苦悩が滲んでいた。
いつも顔の前に垂らした布で素顔を隠しているので、どんな顔をしてるのかは解らないけど。
渋い声のおじいさんらしい……。
突然来訪して、向こう側の世界へ続く越界の門があるなら、使わせろ……なんて言う無茶を言いだした私達を、追い払いもせずに親身になって話を聞いてくれた。
そして、大量の一族の文献を漁って、この海底洞窟に隠されていた越界の門を探し出してくれたのだ。
もちろん、一筋縄ではいかず、一切の魔術を無効化する10ダーシュもある巨大クリスタルゴーレムなんて守護者が居たりしたのだけど……。
女王陛下から新たな力を授けられた私達の敵ではなく、クリスタルゴーレムは木っ端微塵に粉砕され、部屋の外で残骸の山となっている。
「イナガさん、ありがとうございました……色々お手伝いしていただき、感謝の極みです」
「感謝の極みーですにゃー!」
私もリネリアも、三人のお母様へ書き置きを残してきたが、直接に会うこともなく、何も言わずに出てきた。
三人共積年の友……家族を失ったことでの落ち込みようは、それはもう酷いものだったから。
お母様達は、死ぬ時は同じ場所で……お父様を見送ったあと、そんな誓いをしていたらしい。
その誓いは……もう永遠に叶うことはなくなってしまったのだけど、死者を悼み、喪に服す程度の時間はあげたかった。
女王陛下も今はそっとしておくべきだと……そう告げられた。
本当は、お母様達とも旅立つ前に、心ゆくまでお喋りくらいはしたかったけど。
元々、アルマリアと共に私達も旅立つはずだったのだから、お別れなんてすでに済ませていた。
なにより私達には、一刻の猶予もなかった……今度こそ、間に合わせてみせる。
それはリネリアと私の共通の思いだった。
聖騎士団については、今のところ女王陛下自らが統率しているのだけど、なんとロナンが騎士団長代行を任命されてしまっていた。
その人事については、主に女性団員から絶大な支持を受けたらしく、テッサリアお母様の訃報で沈みかけた空気を覆さんばかりの勢いで、士気が盛り上がっているらしかった。
おまけに、国軍への志願者が続出し、隣国からも大勢の義勇兵がやってきて、大変なことになっているらしかった。
ロナンについても、テッサリアお母様が亡くなった事で落ち込むかと思ったら、逆に妙な使命感に目覚めたらしく、あの弱々しさと頼りなさが払底されて、ある種のカリスマ性を発揮し始めていた。
その騎士団長代行としての、就任表明演説を私たちも聞いたのだけど、その内容は聞く者の魂を奮い立たせるような力ある演説だった。
まだまだ一人では、何も出来ないも同然なのは変わりないのだけど……ロナンは誰彼問わずつい、手助けをしたくなってしまう……そう言うところがあった。
それは、人の上に立つものとして、得難い資質だ。
ロナンは……テッサリアお母様の死を乗り越えて、偉大な指導者としての片鱗を皆に見せつけてくれた。
この国の……いや、人族の未来はきっと明るい。
魔王軍についても、武闘派の最大有力者アークボルトが居なくなったことで、穏健派が盛り返したとのことで、またぞろ内部対立が激しくなり、一悶着ありそうな様子ながら、均衡は取れている状態になりつつあった。
これも全て、テッサリアお母様の成し遂げた事だと言える。
私は……あの人の娘であることを改めて誇りに思う。
「……リネリア、行こう! こっちの事はロナンに任せれば、きっと大丈夫だから……私達はお父様とアルマリアを助けに行こう!」
「そうだにゃ! ロナンくん、カッコ良かったにゃあ……もう、軟弱な坊やなんて軽々しく言えないにゃ……」
少し照れたように、リネリアが呟く。
……実は、私も同感だった……アレ、身内じゃなかったら、普通に惚れてた。
あの子、私達と同じく10歳だから、誰も表立って手出しとかしないけど……5年後、成人したらきっと大変なことになりそうだった。
「だねっ! あいつ……あんな凄い演説出来るなんて、見直しちゃった。……あれ、全部自分で考えたんだって……女王陛下もまるで、お父様が乗り移ったようだったって、絶賛してた……私達も負けてられない……イナガさん、準備はいいでしょうか?」
「やれやれ……やはり、止めても無駄か。こちらは、いつでも構わん……すでに越界の門は稼動状態にある……その虹色に足を踏み入れるだけで、向こう側にいけるはずだ。せめて無事に戻ってくる事を祈っているよ……我々には、その程度のことしか出来ないのだがね」
「……そのお気持ちだけでも嬉しいです。ありがとうございます!」
「もし無事に戻れたら、向こうの世界のことを聞かせてくれると助かる。我々は、向こう側のことをあまりにも知らなさ過ぎる。いや、これまで無関心過ぎたのかもしれない。我が一族に伝わる伝承や向こう側に行って生還した者の話によると、向こう側にも我々と同じく超界の門を管理する者達がいるらしい。もしかしたら、力になってくれるやもしれんな……」
「そんな人達がいるんですか……? 向こう側には魔術もなく、平和そのものの理想郷のような世界だって聞いてますけど」
「理想郷なんて、ありえんよ。向こう側は向こう側でいろいろな問題があるようだ……以前、こちらの世界に迷い込んできた若者から聞いた話だ。彼は元の世界に戻ることを拒んでいたのだが……結局、強制的に帰してやったよ。それに、どうも我々も元々は向こうの世界から来た一族だと……そんな話も伝わっているくらいだ」
「なら、イナガのじっちゃんも、向こう行っても大丈夫だったりするのかにゃ?」
「どうだろうな……試すにせよそれは、命懸けになる。大丈夫だと解っていてもなかなか出来ん……実際、我ら一族の者達はこれまで誰一人として試そうともせんかったよ。正直、お主らには感心しているよ……生きて帰れない可能性のほうが高い……にも関わらず、二人共何の躊躇いもなく向こうへ旅立つと言う。なぜ、そこまで強くなれるのだ? それともそれが勇者の血を引く故……と言うことなのか?」
「にゃははー、リネリアはお馬鹿だから、難しいことは考えないのだにゃ。……勇者パパ様に会ったら、どうしようかなって考えてるにゃ! お顔ペロペロしちゃおっかにゃーっ! 向こうのご飯はとっても美味しいって話だから、それもお楽しみだにゃーっ! それにアルマリアちゃんも……あの子、一人じゃ頼りないんだにゃっ!」
リネリアはとっても気楽な様子だった。
でも、その微塵にも恐怖を感じていない様子に、私も肩の力が自然に抜ける。
どうも私は物事を悲観的に考えて、そのくせ、無駄に肩肘張る悪い癖がある。
今だって、本当を言うと未知の世界への恐怖で足が震えそうだった。
でも、割と考え無しで頭に血が上りやすいアルマリアと、お気楽でおバカなリネリア。
ビビリで慎重でお硬い私。
全員足して三で割れば、割とちょうどいいんじゃないかって気がする。
私は私……誇りある勇者の娘として、これからも肩肘張って、怖くたってやせ我慢して前に進むのだ。
「例え、困難にぶつかっても、泣きたい時があっても、そこで笑って前に進むっ! 勇者とは決して屈せぬ者なり! ……それが勇者の血族なんです! もっとも……お父様の受け売りなんですけどね」
そう言って、私もとびっきりの笑顔を浮かべる。
リネリアが私の手を握ると一歩前に出る……私も躊躇わずに一歩踏み出す。
そして……私達は……世界の壁を超えた。
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異界への出発のシーンとなると、やっぱクロノトリガーのOPテーマだよね。
なんでまぁ、これでも聞きながら、どうぞ。
クロノトリガー クロノ・トリガー(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=MksQiBoQ-kg
異世界前日譚編は、一旦終了。
次回からは、現代日本編に戻ります。




