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幕間「とある元魔王の苦悩」②

 とにかく、そこまでは良かったんだ。


 けれど、ここに来て……。

 俺にも状況のコントロールが出来なくなってきてるのだよねー。

 

 どうしてくれんだよっ! コレッ! チキショーッ! コンニャローッ!

 

 まず、向こうの世界の奴の娘の一人がこちらの世界にやってきた事。

 そして、俺の子供たちがいつの間にかタケルベにちょっかいを出していた事。

 

 この二つの誤算が起きてしまった事でもう歯車が狂って、おまけにその歯車がどっかぶっ飛んじゃったの!

 この俺、一生の不覚ッ! 油断、まぁさに油断ッ! 驕れる者久しからずとはよく言ったもんだ!

 

 ひとまず、我が子達……アサツキとヨミコについて、少し説明が必要だろう。

 

 あの二人は、魔族の中でも有力氏族……サキュバス族の姫アーデル姫との間に生まれたちょっと年の離れた兄妹。

 アーデル姫……ちょっとツンデレ、ぺったんコンパクトボディに似つかわしくない超絶テクの持ち主の美人ちゃん。

 

 可愛い子だったんだけどね……最終決戦で俺を守って、タケルベのお供の女の一人と相討ちになってしまった。

 悲しい話だよ……どちらも自分の思い人のためにって……誰も責められないし、恨めない。


 とにかく、その忘れ形見となるアサツキは、向こうの世界の俺の後継者候補、魔王12貴子を名乗るに至った子供達の間でも、第三位と上位陣でなかなか優秀な奴なんだ。

 

 まず、昔の俺だったら、爆発しろって呪ってたくらいにはイケメン!

 その上、あっちの世界では、将としては常勝無敗……俺の再来なんて言われるような超絶エリート!

 そのくせ、謙虚で控え目で驕らず、妬まず、怒りもせず、冷静沈着、品行方正!

 

 なんなの? この完璧超人。

 

 なのでまぁ……こっちの世界では、俺の会社の役員に取り立てて、海外支社をひとつまるごと任せるくらいには重用している。

 

 親の七光りだって? いや、違うね……奴はその地位にふさわしいと、誰もが納得する程度には出来る男だったんだよ。

 ぶっちゃけ、俺もアイツがうちの会社に入社するまでしか手伝ってない。

 

 本当言うと、実年齢は14歳ってとこなんだが……魔族は成長も早いから、外見上は20代の好青年にしか見えない。

 

 戸籍なんかも俺が偽造してやったから、アルバトロス・浅槻と言う日本人名も持っている。

 むしろ、俺の誇り! 憎たらしいくらいの完璧超人なんだけど、これが息子ってなると、パパもうデレデレよ?

 

 ヨミコの方は、そのまんまアルバトロス・夜見子。

 どこにでもいる中学一年生ッ!

 

 フリフリの制服着て、名門私立に通ういいトコのお嬢さんと言う設定だ。

 もう、この子がまた今は亡きアーデル姫そっくり!

 

 思わず、隠し撮りした写真をデスクの写真立てに飾って毎日眺めてうっとりしてるくらい!

 

 だって、JCロリっすよ? 我が娘とは言え、可愛すぎて、可愛すぎて……ああ、かわいい。

 よっぽど、直接会いに行ってやりたいと思ったことやら……。

 

 でも、俺……あくまで、影でそっと見守るあしながおじさんでいいんだ。

 いいんだ……それで。

 

 俺みたいなヤツ、やだキモいとか言われて、嫌われちゃうのが関の山。

 ……そうなったら、俺鬱だ氏のうってなっちゃう。

 

 いずれにせよ。

 どちらもこっちの暮らしにすっかり溶け込んで、順風満帆、委細問題ない……そう思っていたんだが。

 

 いつの間にか、あの子達ってば、タケルベの所在を独自に見つけ出して、人知れず呪詛で始末しようとしていたのだ!

 

 もうっ! 夜見子ちゃん……俺に似たのか天才だった! 参っちゃうねっ! もうっ!

 お父様、困っちゃうんだけど、君の才能にしんびれちゃったわんっ!

 

 それにそれにっ! 夜見子たんって、実は召喚術の名手でもあって、俺の知らないうちに大量の使い魔を全国各地に放っていて、タケルベの所在を自力で発見していた上に、その行動を逐一マークしてたのだよ。

 

 それだけに、飽き足らず、超強力な呪詛を使って、割りといい線いってたみたいなのよね。

 勇者相手に呪詛……俺も似たような手を使ったけど、それをこっちの世界でやる辺り、夜見子ちゃんってばエゲツない……もうホント、天ッ才ッ!

 

 もっとも、その呪詛自体はタケルベの娘……アルマリアたんってロリッ娘が解呪したらしいんだけどな。

 

 うーむ、俺様の開発した超絶呪詛ですら、タケルベのとこのひんにゅーちゃんはあっさり解除してたからな。

 夜見子たんも少々詰めが甘かった……と言うか、アルマリアたんが普通にスゴかった。

 

 もしかして、アルマリアたんって、あのひんにゅーちゃんの身内かなんかなのかな……俺、向こうの事情良く判らんし。

 なんか、向こうの方でも一悶着あったみたいで混乱してるらしく、まともな情報も入ってこない。

 いかんせん、向こう側の状況って、俺の子供達経由でしか知りようが無いから俺も疎いんだ。


 でもさ、近くの防犯カメラハッキングしまくって、アルマリアたんのご尊顔を見せてもらったけど。

 これがまた、超激プリティーロリ! 俺、痺れちゃったよっ!

 

 出来れば、友達から始められないかな……?

 けど、どう言う経緯か良く解らないが……夜見子たん、アルマリアたんに喧嘩売った挙句、タケルベの奴の捕虜になってしまったらしい。

 

 やべぇ……やべぇよ。

 

 もし、タケルベがガチロリペド野郎だったらどうなるんだよ!

 ……夜見子ちゃんが、あんな事やこんな事を強要されて!

 

 ああ、もう許せない! タケルベ、てめぇにゃ地獄ですら生温い! ホワァタアアアーッ!

 

 ハァハァ……落ち着け……落ち着こうぜ、俺。

 そうと決まった訳じゃない……早まって、失敗するなんて、もうたくさんだ。

 

 こう言うときは、素数を数えろって言うじゃない? 言うじゃなーい!


 当然俺も、タケルベには常に監視要員を張り付けていたのだけど。

 そいつの報告によると、それっぽいのがアイツの部屋に連れ込まれたと言うのは、確かな情報だった。

 

 でも、別に悲鳴とかも聞こえないし、むしろ、お風呂でキャッキャウフフとかやってて、とっても楽しそうな雰囲気だったとか言ってた。

 

 なにそれ? どうなってんの? つぅか、超気になるんですけど。

 アルマリアたんと夜見子たん……戦いを通じて、アツい友情が芽生えたとか? なにそれ、尊い。

 

 そう言う事なら、一安心……なのかなぁ。

 

 夜見子たん……何が何でもタケルベの魔の手から、奪回しないといけないのは解ってるんだけど。

 ちょっと、どうしたもんか決めかねてる状況なんだ。

 

 会社の海外セキュリティ部門の傭兵みたいな連中だって、その気になれば動かせなくもないんだけど。

 力づくで奪還するのは、非常に危険のような気がする。

 

 複数の監視要員からの報告や付近の事件情報を統合すると、奴の娘はバスに轢かれそうになったからって、夜中車庫に侵入し、報復にバスを一刀両断にして破壊するような危険人物。

 

 付近の山では、バラバラに解体されたイノシシやら鹿の惨殺跡なんかも見つかってるらしい……。

 

 エージェントが発見し、報告として送ってきたその現場写真は……鹿の生首が地面に転がってたり、内臓ぶち撒かれてたり、スプラッタ過ぎてモザイク必須!

 

 なんてっ! なんて! 恐ろしい子なのっ! やめてーっ! 俺のMPはもうゼロよっ!

 

 子供たち同士の話を盗み聞きした感じだと、アルマリアたんって……向こう側の世界でもたった一人で戦局を覆すような勇者の再来とも言われる超A級のデンジャラスロリ。

 

 結論、手出ししたら絶対ヤバい……。

 

 それに加え、先程飛び込んできた全国公開されてしまった動画。


 それは、タケルベの娘と思われる二名のニューフェイス。

 名前も子供達情報で、シャーロットたんと、リネリアたんって言うらしい。

 

 どっちもアルマリアたん同様、向こうの人類側の四勇者とか呼ばれる強豪中の強豪。

 

 でも、この娘達の存在が明るみに出てしまったのは、正直とってもマズイ。

 ……ネット発の与太話だったら、まだトンデモニュースで片付けられたのだけど。


 何処のどいつの仕業なんだか知らんが、地方TV局に匿名の通報があったとかで、地方ニュースになってしまい、それをきっかけに動画が拡散。

 

 もはや、情報統制も無理な状況と化してしまった。

 

 なんてこった! コンチクショーッ!

 

 この事態を受けて、日本国内に点在する超界の門やら、遺跡、魔術、異形の者共……そんなものを管理、対応していた裏社会の秘密魔術結社「総社会」なんてのも動き出してしまった。

 

 警察やら公安程度なら、いつも賄賂……じゃなくて、資金援助をしている政治家を動かせば黙らせることは可能だったし、マスコミも俺の力を使えば黙らせることだって不可能じゃない。

 実際、その工作が現在進行系で実施中だった。

 

 ネットの世論ですら、俺の作ったクラウド型超絶ハイパー人工知能を使えば、フルオートで情報を拡散し、嘘を本当に、真実を嘘にすることだって不可能じゃないのだ。

 

 なんせ、皆持ってるパソコンだの携帯端末は俺の会社のOSで動いてるからね。

 それくらい余裕なのよ? 

 

 ああ、俺の才能と手にしてしまった力が恐ろしい……。


 恐ろしいから、普段は何もしないで、ネトゲやソシャゲ、60インチのビッグモニターでのアニメ鑑賞やら、最新ゲームの攻略に勤しんでいるというのに!

 

 ああ、恐ろしいッ! 恐ろしいッ!

 

 世界はまた……この俺にこの手を汚せと言うのか?

 まぁ、汚さないけどね。

この元魔王、とにかく、行動や思考がカオスッ!(笑)

ただ、根っから邪悪な人物ではありません……独善ってだけ。


物語ってのは、色んな人物の色んな思惑や行動で形作られます。

気分の悪い人物の登場とかで物語の価値を決めるのは、早計じゃないかなって思いますがどうでしょう?


なお、本日は二回更新の予定です。

手違いでこんな時間にアップしたとか、そんな事ないよ?

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