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第十話「とあるおっさんと新しい出会いの予感」②

 それから……。

 ひと騒ぎあって、アルマリアはご機嫌で、俺の膝の上。


 パジャマは今日買ったばかりの猫しっぽと猫耳フード付きのきぐるみニャンコパジャマ。

 ……かわいい。

 

 ヨミコは……エグエグと泣きながら、毛布にくるまってふて寝。

 俺に色々見られたのがショックだったらしい。

 

 軽い罪悪感……でも、事故です。

 たぶん、俺は悪くないし、そもそも俺にロリコン趣味はない。


 ……たとえ毛が生えてたって、お子様はお子様だっての。


 祥子は、お風呂上がりのパジャマ姿で、マイペースに鼻歌交じりにドライヤーで髪を乾かし中。

 こっちもいたってご機嫌。

 

 シャンプー・リンスに、化粧水、パジャマまで持参とはまた用意周到。

 なんでも、一式全部置いていくつもりなんだそうな。


 おかげで、我が家の風呂場は一夜にして大量のシャンプーやリンスのボトルが林立することになったんだがな。


 つまり、今後もお泊りしまくる気満々……祥子パパ、それにケンゾーさん。

 嫁入り前の娘なんだから……少しは止めるとかしないの?


 ちなみに、祥子がお風呂に入ってる隙に、家に電話したら、祥子ママはよろしく~の一言。

 さすがに、これはどうかと思うよ?


 なお、アルマリアが壊した風呂の蛇口は、俺がその場で応急修理した。


 一応、これでも土建屋だからな。

 工具一式、水回りの補修資材くらい常備してるのだよ!

 

 なにせ、普通にあちこち水漏れとか雨漏りとか日常茶飯事だしな! この部屋。

 

 もう、引っ越しだ! 引っ越し!

 一軒家とかだって、安いところだと家賃4万とか、そんなだもんな……岡川って……。


 どっかいいとこ探さないとな!

 

 そして、軽く食事も済ませ、ネット上に拡散アップされてた例の高速道を突っ走る猫ライダーの動画をアルマリアに見せてやっているところだ。

 

 最初は隣で並んで見ていたのだけど、見づらそうだったので、俺の膝の上に乗せた。

 ついでに、いよいよこたつ様も登場だ!

 

 それにしても、アルマリアの座椅子代わりになると言うのは思ったより、いい感じ。

 

 全然重くないし、なんか、すごくしっくり来るな……これ。

 もうすっぽり収まっちゃったし……俺もポカポカ温かいし、アルマリアも幸せ気分夢気分と言った様子。

 

 いかんね……これは、親子揃って溶けてしまいそう。

 

「で、これ……やっぱり、知り合い?」


「知り合いも何も、私の姉妹達ですよ! シャーロットとリネリアの二人ですよ! 間違いありませんっ!」


 ちょっと興奮気味のアルマリア。

 頭の上で二つ分にされた髪の毛が踊って、顔にビシバシ当たる。


 …………どうどう、ちょっと落ち着け。


「えっと……どっちがどっち?」


 当たり前のように名前言われても解らんし……。

 でも、いい名前だな。うん。


「獣化してますけど、こっちがリネリア、ラファンお母様の娘。上に乗ってるシャーロットはラーゼファンお母様の娘ですね……二人共、私の姉妹達……とっても仲良しなんですよ? でも、なんでお父様、見てわからないんですか?」

 

 見て解らないのかと言われても……。

 

 一人は、フルフェイスのバケツメット姿。

 もう一人は、でかい猫にしか見えない。

 

 でもまぁ、大体予想通りではあった……でも、自分たちに原因があるにせよ、大事故現場を目撃して、逃げるのではなくわざわざ救難活動を手伝っていくなんて、なんと言うか……律儀な奴だった。

 でも、ラーゼファンの娘って事なら、納得だ。


 ラーゼファンのやつは、何かと言うと俺の身代わりになって傷付いたり、ここは任せろ! なんて言って殿を務めたり……。

 何かと男前なヤツだった……そのぶん、二人きりの時にだけ見せる、凄まじいほどのデレっぷり。


 ……うん、あれはまさにギャップ萌えだった。

 

「さすがに、これは解らんよ……一応、あっちの関係者だとは思ったけどな。でも、アルマリアはひと目見て、俺の娘だって解ったぞ?」


「そ、そうです! 私もお父様はひと目会った瞬間、お父様だって解りましたから……」


 何故か照れ照れな様子のアルマリア。

 

 会った時は、なんか疲れきって死にそうな顔してたんだけど、目があった瞬間、超嬉しそうだったからな。

 尻尾があったら、きっとちぎれんばかりに振ってただろう。

 

 まったく……可愛い奴だ。

 思わず、頭を撫でくり回す……アルマリアも嬉しそうに目を細める。


「そうなると……明日の行動は決まりだな……早速、こいつらを迎えに行かないと」


「そうですね! 二人と合流すれば、アサツキとも互角以上に渡り合えます。でも、二人共無事にこっちに来れたんだ……よかった! お父様、明日と言わず、今すぐ迎えに行くってのは出来ないんですか?」


「……もう遅いから、無理だな。あの辺まで直線距離でも軽く50kmはあるからなぁ……電車で行くのも無理だな。明日の朝イチでレンタカーでも借りて、車で行くのが一番だと思う。と言うか、お互い連絡を取る方法とか決めてなかったのか?」


「……来る時に色々ありましたからね……。本来は、全員揃って行動するはずだったので、連絡方法とかそんなのは決めてませんでした……すみません」


 準備が甘いと言いたいところだが……多くは望めなかったのも解る。

 むしろ、魔族の妨害にあいながらも、新たな増援を送り込んできた向こう側の奴らも良くやっていると思う。

 

 アルマリアの実力からすると、俺の娘達って人族側の中核戦力のような気がする…。

 そんな文字通り虎の子と言える重要戦力を三人も送り込んでくれるなんて……。

 

 10年経って、世界の壁に阻まれていても、俺の嫁やかつての仲間達は、俺を見捨てるどころか、最大限支援するつもりなのだろう。

 全てが終わったら、せめて感謝の意くらい伝えに行きたいところだよなぁ……。

 

「まぁ、その辺はしょうがない……しかし、どうやって見つけたものか。この映像が撮られたのは、今日の午前中らしいから、とっくに移動してるだろうし、念話とかも2kmとか3kmくらいしか届かないしなぁ」


「でも、近くに行けば解りますよ。大丈夫です! 私達、勇者姉妹の絆を信じてください!」


 そう言って、自信満々な様子。

 

 姉妹の絆か……きっと、この二人とは、幾度となく死地を共にしたような間柄なのだろう。

 

 いずれにせよ、愛すべき俺の娘達だ。

 なるべく早く、出迎えてやらないとな。

 

 ……今夜は冷えそうだから、暖かくして寝れてると良いのけど。

 食事だって、どうせ粗末な獣肉とか木の実くらいしか食えてないだろうし……。

 

 車さえあれば、すぐにでも迎えに行くんだがなぁ……。


「やっぱり、あの動画のにゃんこライダーって、アルマリアちゃん関係?」


 祥子が俺の隣に寄り添うように座り込むと、ノートPCのモニターを覗き込んでくる。

 にゃんこライダーって……近いし、あと、そのはちきれんばかりのお胸様をちゃんとしまってください。

 

「……ああ、本人に確認してもらったら、ビンゴ……どうやら、俺の娘達らしい」


「猛部さん……異世界の子供っていったい何人いるの? そんなにあっちの世界ではお盛んだったのぉ……?」


 祥子さんの視線がとっても冷たいし、俺としても言わば黒歴史なんだが……。

 

 ええいっ! あの日の俺、爆発四散しろっ! 

 

「お、俺にも解らんっ! つか、向こうは一夫多妻が当たり前なんだよ! 男一人に女三人とか男女比もおかしかったし……独身貴族だの、男を独り占めにするような女なんて、許されないって、そんなだったんだよっ!」


「そ、そうです! お父様は、私達の世界では魔王を討ち取った伝説の大英雄なんです! お嫁さんになりたいって言ってた人なんて、沢山いますから! 私だって……その……」


「……アルマリアはお父さん思いだね」


 思わず頭を撫でると、ポッと頬を赤く染める。

 みなまで言わずとも言いたいことは何となく解る。

 

 お父さんと結婚する! ……小さい女の子のあるあるだよな。

 

「…………突然、向こうに行っちゃったりしないよね。猛部さん……そんなの嫌だよ」


 俺の様子を見て、しばしの沈黙の後、寂しそうに告げる祥子。

 まぁ、そう思うよな。


 黙って、祥子の頭にポンっと手を置く。


「それが出来れば、苦労しないさ……さぁ、明日は早いぞ! さっさと寝ようぜ! そういや、お前はどうするんだ?」


「もちろん、付いていくに決まってるでしょ! アルマリアちゃんの姉妹にも会ってみたいし、どうせ色々服とか買わないといけないんでしょ? 猛部さん一人じゃそんなの無理でしょ」


「まぁ、そうなるだろうな……悪いけど、頼むわ」


「はいはい、やっぱあたしが居ないと駄目ねっ! 任せて! ふふん……あたしは、さしずめ皆のお母さんってところかしら? じゃあ、アルマリアちゃん……今日はあたしと一緒に寝てみない?」


「え、でも……お父様を一人で寝させるなんて……あ、三人で寝るってのは、どうでしょうか?」


 ……やめて。

 さすがに、それは駄目だと思うのーっ!

 

 アルマリアはともかく、祥子とひとつ布団でなんて、どう考えても駄目です。

 

 祥子も想像でもしたのか、みるみるうちに真っ赤になっていく。

 なお、その表情は妙に緩んでデレデレである……うっ、見るんじゃなかった。

 

「お、俺は、どこでも寝れるから心配するな! うん……祥子、あとは頼んだ!」


 そう言って、強引に話を締めくくると、俺は台所に行き、寝袋を引っ張り出し台所の片隅でミノムシ状態になる。

 夏は暑苦しくて、冬は寒いという微妙な代物だけど、この際、問題ない。

 

 アルマリア達は……祥子とアルマリアは俺の布団で寝ると言うことで……。

 

 ふて寝したヨミコは、そのまま放置……なんか、扱いが酷い。

 ……捕虜の身なんだから、贅沢言うなと。

 

 かくして、二日目の夜が更けていくのであった。

次回、視点がタケルベから、別の人物に移ります。

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