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第九話「とあるおっさんの危険な夜」③

 ヨミコ=噛ませと言う祥子の例えは、言い得て妙だった。

 

 実際、その通り……見事なまでの噛ませっぷりだった。

 まぁ……覚醒したのは、たぶんこの場で最強と思われる祥子さんなんだがね。

 

 その的確な例えに、ヨミコもずーんと落ち込む。

 

「ええんや……うちなんて、防御と召喚術、呪詛以外はまるでアカンのやから。けどなぁ……うちに何かあったら、お兄が黙っとらんから……そのつもりで居たほうがええで?」


「ほぅ……お前の強気はそう言うことか? お前に何かあったら、兄貴が仇を取ってくれると?」


「せやっ! お兄はめっちゃ強いんやで? おまけにごっつぅおっとこ前なんやっ! せやから、うちを殺したり、酷いことはしない方がええと思うで! ここは、お互いのためって奴やな!」


「なるほど……確かに、それは一理あるな。俺も正直な所、余計な敵は増やしたくないからな」


「せやろ? なぁ……実はうち、勇者はんとは今後仲良うしよう思っとるんや! なにせ、うちは魔王12貴子一番の小物ッ! 長いものには巻かれる主義なんや! なんなら、肩くらい揉んだるで?」


 ……自分から、小物宣言するスタイル。


 揉み手なんかもして、もはや媚び媚びである。

 素早く俺の背後に回ると、早速肩もみなんか始める。

 

 ……ある意味、清々しさすらも感じて来た。

 ここまでされると、さすがに憎めないものがある……よなぁ。


 と言うか……手が小さいんだけど、絶妙な力加減でいい感じのとこを刺激してくれる……。

 い、意外と上手いな……コイツ……これは、たまらんっ!


「くっ……なかなか上手いじゃないか……そこそこっ……」


「せやろ? うち、マッサージは得意なんや。どや? うちももう逆らうつもりもないから、もういじめんといてや……な? 頼むわぁ……勇者はん、仲良ぅしてねぇなぁ……」


「解った解った……どのみち、危害は加えないと約束したからな。その代わりに聞くが、お前のそのお兄とやらは、どの程度のやつなんだ?」


「ふふん、お兄はうちと違って魔王12貴子でもトップクラスの上位陣なんやで! その名も第3貴子蒼月のアサツキ! アルマリアなら、知っとるやろ?」


 いきなり、ナンバー3かよっ!


「アサツキ……強敵ですね。向こうでも何度かアサツキ率いる軍勢と戦ってますが、こちらの被害も甚大でした……アサツキ本人もお母様達全員で挑んで、足止めがやっと……魔王よりよほど手強いと言うのがお母様たちの評価です……魔王軍でも二番目くらいに強いんじゃないかと」


 ……こりゃ、思った以上の強敵だな。

 

 向こうの俺ハーレムの全員がかりでも勝てないとなると、相当だ。

 おまけに、軍勢を率いても強いとなると……武人としては、非の打ち所がないかもしれない。

 

 と言うか……アルマリアもだけど、こいつら第2世代の連中って、純粋な向こうの世界のヤツより強いんじゃないか?


 ヨミコも、はっきり言って相当なもんだし、話を聞く限りだと、どいつもこいつも、魔王並みかそれ以上のような気がする。

 

「……そいつは、お前を人質にしていても、問答無用で襲い掛かってきたりするような奴なのか?」


「さすがに、それは無いと思うなぁ……けど、うちを人質に使えるとか思わんほうがええで! お兄はそう言う卑怯な真似は大嫌いなんや! 元々呪詛使うのだって、反対しとったんやけどな。見つけたのはうちやから、チャンスをくれたんや……公明正大って奴やな……。けど、もし本気で怒らせたら、勇者はんなんて、片手でプチッと逝かれてしもうよるよ! そっちのアルマリアだって、よゆーやろな!」


「アルマリア……そんなに、そのアサツキってのは、そこまで強いのか? コイツの話は身内補正かかってるだろうから、あまり参考にならん」


「アサツキは……遠近両用のオーソドックスに強いタイプです。正面切って正々堂々と戦う……その辺りは、お父様に近いかもです。私の姉妹がいれば、勝てない相手じゃないと思うんですけど……私一人だとあまり相性が良くないので、必ず勝てるとは断言出来ませんね」


 俺に近いとなると、近距離強化系か。

 それに加えて、遠距離戦も出来るとなると、死角がないな。


 アルマリアは、基本、遠距離特化みたいな感じだし、単独で相対したら確かに厳しいかもしれない。


 俺が戦力になるなら、まだマシだろうが……今の俺じゃ、ヨミコにすら勝てるかどうか怪しい。

 出来て、多少の足止めくらいか? まったく使えねぇな。


 祥子は……能力があまりに未知数過ぎるから、この際、戦力としては考えないほうが良い。

 そもそも、ちょっと沸点低くて、キレやすいだけの普通の女子高生だもの。


 軍勢については、こっちにいる限り考えなくて良いのが、不幸中の幸いだが。


 逆を言うと、アルマリアの姉妹……つまり、他の娘達と連携すれば勝てない相手じゃないってことでもある。

 当てにするのは間違ってるかもしれないけど、もう少し味方が欲しいところだな。


「ふっふーん! お兄は敢えて目立つのを避けて、3位に甘んじてるだけで、本来なら魔王12貴子最強なんや! せやから、うちの事は大事にした方がええで! だから……はよ、うちにパンツ寄越せっちゅうねん!」


 腰に手を当てて、立ち上がるとドヤ顔でパンツを要求するヨミコ。

 さっきまで、土下座しておきながら、このドヤ顔である。

 

 飯とパンツのどっちかしかやらんと言ったら、コイツどうするんだろ。

 

「解った解った……祥子、アルマリア用に買ったのがあるから、それでもくれてやれ……。背丈もあまり変わらんからサイズも大丈夫だろ。だが、アルマリア! お前はむしろ頼むから、パンツ履いてくれ……な?」


「あうあう……お父様、ぱんつはどうしても履かないと駄目なんですか? 私、あれ動きにくいし、気持ち悪くて嫌なんです……」


「ばっかもーん! ノーパンツァーなんて、危なすぎてアウトです! 祥子、それにヨミコも同性として、このノーパン愛好バカ娘に一言、言ってやってくれ!」


 俺がそう言うと、二人共頷き合うとアルマリアを台所まで引っ張っていった。

 女子同士の内緒話……ってところだな。

 

 まぁ、目の前で堂々とパンツの意義について話されても俺が困るんだがね。


 ハブられ大いに結構であるっ!


 ……コーヒーでも飲むか……男は黙って、ブラック無糖でっ!


「あのさぁ……アルマリアちゃん、あなた女の子なんだから、はかないのは駄目だと思うよ……? その……恥じらいは大事大事なのよ……女子として……」


「せやな……あんま言いたかないけど、アルマリア……あんた、さっき戦っとる時、モロ出しだったで! さすがに、あれはあかんやろ。オナゴとして、そこは絶対防衛ライン、なによりデリケートなゾーンなんやで? ……勇者のおっちゃんも困っとるんや、そこは文明人として、女子として、むやみに晒しちゃあかんと、うちも思うで」


「でも、向こう側じゃそんなの誰も履いてませんでしたよ! ヨミコ……あなただって、同じようなものでしょう? 今だって、履いてないんですよね?」


「うちだって、好き好んでノーパンになっとる訳じゃないっちゅうねんっ! そもそも、うちら魔族は、お前ら蛮族とは違うんやっ! 魔王様はこうおっしゃいましたぁ……ノーパンツァーノーライフ! 魔界でノーパン女子なんて、それだけでもう犯罪者扱いなんやで? 言っとくけど、その辺こっちも同じやぞ! 外歩いとってノーパン生尻なんぞ見せとったら、けーさつにたいーほされるか、好き者思われて襲われるで? お前らみたいにケツ丸出しで、平気で外歩いとる蛮族のほうがおかしいんや! 祥子はんもそう思うやろ?」


「そ、そうね……ホントは下着見られるのだって、恥ずかしいんだから……履きましょう! アルマリアちゃん、可愛いんだから、慎みってものを覚えないと、お父様にも嫌われちゃうよ?」


「そ、それは嫌ですぅっ!」


 ……普通に、女子三名の会話が聞こえてくる。

 

 別に聞き耳立ててる訳じゃないんだけど……三人共声を潜めるとかそんな気全くないらしい。

 まぁ、目の前でパンツ談義されるよりはマシなんだがね。

 

 ヨミコも敵だったはずなんだが、凄い説得力あるトークでパンツ推しをしてくれている。


 いいぞ! もっと推せっ!


 と言うか、改めて聞く魔族達の領域……魔界の諸事情。

 ……あいつら、そんなだったんだ。


 思ったよりも、文明的だったんだな……。


 まぁ、魔王自体割りとシャイな奴だったからなぁ。

 なにせ、最終決戦で対峙した時も俺の嫁達の姿を見て、しきりに目を逸しながら戦ってた。


 たぶん、敗因もそれ。

 きっと、魔族も人族も知らない魔王が負けた原因。


 うちの嫁共がエロいカッコだったから。

 

 俺達も後先考えず、敵陣強行突破なんかしたからな……皆、無傷な訳がなく、服や防具なんかもボロボロ。

 

 最初のうちは、皆、慎ましく隠そうとしてたけど……そんな状況じゃないと悟ってからは、恥も外聞もなくポロリ、チラリしまくりで大暴れ。

 おかげで、魔王もいらんことに気を取られて、実力の半分も出せてなかったかもしれない。

 

 実際、最終決戦以外でも魔王とは、何度も交戦していたのだけど、あんなもんじゃなかった。

 

 これは、もう語られない黒歴史扱いでいいと思う……俺と魔王の名誉のために。

 

 魔王と俺は正々堂々一騎打ちの末、辛くも俺が勝利したのだ!


 それに、最後の一撃はお互い全力全開、手加減無用で最強技の応酬の末、俺が紙一重の差で勝ったのだ。

 そこに至るまでのグダグダな戦いは、余興のようなものだ。

 

 向こうの世界の正史では、そう言う事になってるし、真相なんて闇に葬るべきだと思うんだ。

 

 そういや、魔族連中って男も女も皆、露出度低かった……ヨミコも割りと慎ましいみたいだし。


 魔族の領域は、山岳地帯や寒い地域が中心だったってのもあると思うけど、貞操概念については、むしろこっちの世界に近いのかもな……。

 

 人族側は、女性人口のほうが多かった上に、海辺や暖かい地域中心だったから、服装も薄着が基本。

 皆、男の目なんて、あんまり気にしてなかったからなぁ……。

 

 そりゃ、蛮族呼ばわりされても仕方ない。

 ただ、その辺は文化の違いって奴なんだから、どっちが良いとも悪いとも言えない。

 

 でも、アルマリアのパンツだけは、俺も妥協しないからな!


 がんばれっ! がんばれっ! 祥子……それにヨミコも!


 アルマリアはむしろ、がんばんなくていいっ!

 

 ……それから。

 小一時間あまりの口論の末、アルマリアのパンツについてはひとまず、話は付いたらしかった。

 

 パンツははく……そして、むやみに見せない。

 女子として至極当然……と言うことで、アルマリアも納得はしたらしい。


 どうもゴワゴワした綿パンが気に食わないらしいので、明日しまむろで祥子サンお勧めの履いてないと錯覚するくらいの素敵パンツを買いに行くという話になったらしい。

 

 祥子サン、どんなん履いてるか、俺良く知らんけど……素敵すぎるよ。

 

 なお、ヨミコには、報酬としてパンツをくれてやることにした。

 5枚セットの安物綿パンのひとつだが、同じのがもう1セットあるから1枚程度なら問題ない。

 

 とは言っても、アルマリアもヨミコも、割りと全身ドロドロだったので、お前らパンツ履く前に風呂……と相成った。

 

 ヨミコの方は、こちら側に活動拠点として、マンションの一室を借り上げていて、風呂に限らず、こっちの一般常識については、まったく問題なかったという……。


 なんか知らんが、所持品を確認したら、現金以外にもスマホすら持ってる始末。

 どこかよく解らん私立中学の学生証まで出てきたのだから、もはや何が何だか。


 と言うか、順応しすぎ。

 ホント、何しに来てる訳? こいつら。

 

 俺を倒した奴が次期魔王って話になってるらしいのだけど、とっくに、目的変わってんじゃねーの?

 

 ヨミコの話だと、どうもこっちの世界に後援者みたいなのが居て、資金援助やら行動の便宜を図ってくれたりしているらしい……。


 なにそれ? な、なんか、きな臭くなってきたな……。

ヨミコの口調……誰かに似てると思ったら、うる星のジャリテンだ。(笑)

ヨミコ CV:杉山佳寿子さん


……ハイジの人だよ? ハマりすぎて、脳内再生余裕でした。

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