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第九話「とあるおっさんの危険な夜」①

 それから……。

 俺達は、鏡面空間からも無事開放され、自宅に戻ってきていた。

 

 そして、このヨミコの処遇やこれからのことについて、話し合うことにした。


 ……祥子にも、結局異世界のことやアルマリアの事を包み隠さず全部打ち明けることにした。

 なにせ、とっくに巻き込まれてしまったのだから、知る権利があると言うもの。

 

「大体、事情は解ったわ……それにしても、異世界……魔術! それって、今流行の異世界転移モノって奴だよね? 夕方の鏡写しの世界やら、アルマリアちゃんのすごい魔法? あれ見てなきゃ、普通に信じられないけど、すごいすごいっ! 異世界って、ホントにあったんだっ! すごーいっ!」

 

 何とも楽しそうな様子の祥子。

 幸いコイツも、俺の影響でラノベやら漫画、アニメが大好物なオタク女子高生だから、ファンタジーな異世界だの、勇者だの魔王についても、意外とあっさり納得してくれた。

 

 もっとも、当人の発動した謎結界と魔術防壁を無効化した謎の力については、そもそも本人が全く意識して無かったので、不明のまま。


 案の定、異世界に行ってみたいとか言い出したけど、行ったら死ぬぞと警告したら、意外にあっさり諦めてくれた。

 と言うよりも、祥子の家の口伝で、門の向こう側に行って、戻ってきたものは居ないと伝えられていて……その理由を本人なりに理解したんだそうな。

 

 それにアルマリアの話だと、世界間を接続する越界の門は周囲の空間ごと、転送するタイプと俺が最初に向こうに行く時に使ったような半ば自然発生する門の二種類があるらしい。


 ちゃんと管理できているのは、前者なのだが……これは一度転移するとしばらく、再稼働出来ないと言う欠点があり、後者の方は双方の世界の月や太陽の配置と言った複雑な要素が絡んでいて、開く場所は決まっているのだけど、いつ開くかは誰にも解らないんだそうだ。


 こっちの世界に現存しているのは、大体が後者のタイプ……こっちの世界でもケンゾーさんのような守り人はいるようなのだけど……まぁ、完全に管理出来ているかと言えば正直疑わしい。


 であるからこそ、向こうに行くのは比較的容易なのだけど、短期間で確実に戻ってくる方法となると……文字通り運任せ。

 

 向こうに行ったまま、戻ってこれないとなると……俺の例だと、最長でも一週間……それも向こうの連中が必死で延命措置をしてくれて……の話。

 普通は、数日で息絶える……別の世界の住民は、異世界では生きて行くこと自体が出来ない。

 この事が、二つの世界の境界となっているのは間違いなかった。

 

 近くて遠い異世界。

 自由に行き来出来るアルマリア達は、例外中の例外なのだが……正直、羨ましい。

 

 呪詛の件についても、やはり祥子も知っていたようなのだが。

 ケンゾー爺さんから、下手な手出しをしないようにキツく言われていたらしく、陰ながら見守る程度しか出来無かったらしい。

 

 なにせ、ケンゾー爺さんには、神の祟りとかそう言うものだと思われていたらしく、本人に呪いのことを告げたり、祓おうとするだけで、自分も巻き込まれる……そんな風に言われていたようだった。

 

 逆を言うと、こちらの世界にもそう言うのが実在するって事なんだよな……。

 祥子なんかも、多分そう言うのを当たり前のように見てきたはずだった。

 

 なるほど、ファンタジーな異世界の存在をすんなり受け入れた訳だ。

 

 そう言えば、妙によそよそしかったり、心配そうな目で見られていたりはしたな……。

 嫌われたのか、心配されてるのか、さっぱり解らなかったが……今となっては、そういうことかと納得行った。

 

 ちなみに、その下手人たるヨミコの奴は、アルマリアが隣に座って、ちゃぶ台の俺正面向いにて正座中。

 祥子は、その後ろの壁際で正座してる。


 黙秘権を行使するとか、訳解かんない事を言い出して、祥子さんがまたしてもブチ切れそうになったので、話す気になるまで、祥子さんに背後を取られるという針のむしろ状態で、座っててもらうことにした。

 

 なお、ヨミコさん……パンツは大破したので、履いてない。


 現状、この場の女子のうち二名はノーパン。

 なにやら、今度は「人として、パンツを履く権利を要求する!」とか言い出したけど、パンツだってタダじゃない。


 そもそも、なんで、俺が娘でもないヤツのパンツを買わねばならんのだ。

 

 なお、スカートも真っ二つに大破していたので、俺の上着をスカート代わりに腰に巻いてやっている。

 ……さすがに、下スッパとかはあんまりだったから、それくらいはしてやった。

 俺、紳士だし。

 

 なお、アルマリアについては……。

 やっぱ、履いてないほうが調子いいんだってさ……俺もう知らん。


 力づくで履かせようとしたら、メチャクチャ抵抗された。

 あんまりな絵面だということに気付いたので、俺も諦めた。

 

 ちなみに、その絵面はどうみても、俺がパンツ脱がそうとしていて、抵抗するアルマリアって感じだった。

 実際は、間逆なんだが……祥子とヨミコには、ドン引きされた。

 

 ……な? あんまりだろ。

 

「ううっ……なんでうちが、お前らなんかの捕虜にならんといかへんねん。それにノーパン強制とか酷すぎや。スースーして落ち着かんし、漏らしたらどないするんや……」


「やかましい、捕虜は黙ってろ……あと、俺の部屋で漏らすとか許さんし、別にノーパン強制もしてない。人聞き悪い事言うな……。だいたい、お前……人のパンツなんぞ履きたいのか? 俺のトランクスで良ければ貸すぞ? ん?」


「ど、どんなセクハラやねんっ! せやっ! うち、お金出すから、ちょいコンビニでも行って買ってきてくれんか? ちょっとくらいブカブカでも我慢するで! あとコーラとポテチもついでに頼むわーっ!」


 そう言って、首から下げていたポーチから、がま口を取り出すと、中から千円札を出すヨミコ。

 

 なんか、コイツ……当たり前のように金出したけど、こっちの世界の現金とかどこで入手したんだろ……?

 俺だって、向こうの世界に行ったばかりの時は、無一文で割とどうしょうもなかったんだが……。


「あのな……人をパシリに使おうとするなっ! だが……貴様の知ってることを洗いざらい吐くなら、パンツを履かせてやることもやぶさかでない。この条件ならどうだ? 素直に言うことを聞く気にならんか?」


 ……どんな取引なんだ……これ?

 俺も自分で言ってて意味がよく解らん。

 

 ちなみに、祥子は何とも微妙な顔……。

 こうなったのもだいたいコイツのせい。

 

 おまけに、執拗にケツキックかました結果、ヨミコ……パンツどころか、尾てい骨粉砕骨折と言う悲惨な事になってた。

 さすがに、これは病院送りモノだったんだが、その辺はアルマリアと言う治癒魔法の使い手がいたので、ピローンと治してやってた。

  

 アルマリア……なんだかんだで、優しいいい子です。

 お父さん、とっても嬉しいよ!


 でも、何故かヨミコさん、治癒魔法かけられた時、やたら痛がって、泡吹きかけてたんだけど、治癒魔法ってそんなだったかな?

 けど、本来なら病院で手術とかになるくらいの重傷だったんだから、そのくらいで済んでよかったと思うべきだよな……冗談みたいに綺麗に治ってたし……。 


 反面、祥子さん……あなた鬼です。


 執拗に尻だけを狙ったのは、あくまでお仕置きだからって言い張ってたけど、イジメグループの女子に同じことをやって、非常に効果的だった……らしい。

 

 鬼です……鬼っ!


 なお、今はメガネも戻したノーマル祥子なので、至って大人しいもの。

 一応、やり過ぎた自覚もあり、大いに反省はしているとのこと。


 言い訳は、一言「ついカッとなった」……とのこと。


 祥子……恐ろしい子。


 もっとも、俺の前だと祥子は素直で大人しいし、お淑やかだ……基本的に猫かぶる習性があるのだ。

 もう手遅れだと思うけど……乙女心は複雑なのだ。

 

「はんっ! うちら魔王の眷属を舐めんといて! うちがそう簡単に口を割ると思ったら大間違いやで!」


「んじゃ、パンツはあきらめろ……そもそも、お前は捕虜の身だ! 生かされているだけでもありがたいと思え!」


 そう言って、ドンッと指差しながら、少し強めの口調で言い切る。

  

 魔王軍と人間の間で、戦時協定なんか存在しない。

 殺るか殺られるか……シンプルな関係。


 もちろん、動けないほどの怪我を負った者や戦意を喪失した者を、捕虜に取るような場合もあったのだが。


 そもそも、向こうの世界では、捕虜=奴隷と言っても過言ではない。

 本来なら、奴隷紋を刻んで、逆らったら死ぬような強制従属魔法をみっちり仕掛けるところだ。

 

 それを考えると、拘束すらしないのは、大甘な対応と言える。

 

「ふんっ! 情けをかけたつもりなんやろうけど、甘いわっ! このマヌケがァッ! そのうち生かしておいた事を後悔させたるわっ! 次回タイトルは「反撃の時来る! 雑魚どもがッ! 震えて待てっ!」乞うご期待やな……」


 こいつ……虜囚の身だと言うことを全然解ってないな。

 つか、いちいちセリフから垣間見えるネタ臭はなんなんだろう?


「……お父様、こいつらはこう言う奴らなんです。今からでも遅くないので、処刑しましょう。しばし、時間をいただければ、跡形もなく処理させていただきます」


 無表情で、恐ろしいことを言い放つアルマリア。


「あはは……アルマリア、うちら友達やよね? つか、跡形もなく処理ってどないするつもりんや?」

 

「あなたと友達になった覚えなんてありません。魔王の眷属と言えど、さすがに首と胴体を切り離したら、死にますよね? 首だけにした上で、念のため、深い穴でも掘って埋めます」


 ……やべぇ、アルマリア……本気で言ってる。


 目がめっちゃ怖いし、言ってることが超エグい……。

 ヨミコもそれを悟ったらしく、ゴクリと固唾を呑んで、引きつったような笑みを浮かべる。

 

 脅しとしては、こうかばつぐんだぜ! ヒャッハーッ!

サブタイトルは、一応今のところおっさん視点だから統一してるけど、そのうち別のパターンもありえます。

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