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第八話「とあるおっさんの本気、でも娘にゃ勝てそうにない」③


「ど、どっちもいややーっ! なんやねん! おまえっ! あんなメチャクチャになったんやから、普通は逃げるやろ! なんで、こっちに来るんや!」


 絶叫して、四つん這いでカサカサと逃げようとするヨミコ。

 どうやら、祥子の迫力にビビったらしかった……マジか?


 祥子、まさかの気迫勝ち!

 

「待ちゃがれ! こん糞ガキ! うりゃあっ!」

 

 必死で逃げるヨミコに追いすがると、そのケツめがけて、祥子の渾身のヤクザキックが炸裂する!

 

「ぎゃわわーっ! なんやこれっ! 超痛いんやけどっ! なんか、メリッてった! それに、うちの防壁が消えてもーたっ! なんでーっ! お尻がっ! うちのお尻がーっ!」


 もんどり打って地面を転がると、靴跡の付いた猫のバックプリント付きパンツを全開にして、尻を押さえてエビ反りしながら、ビクンビクンと悶絶するヨミコ。

 

 と言うか……こいつ、アルマリアの攻撃止めるくらい強力な防壁張ってたんじゃ……?

 それに、普通に攻撃魔法のひとつやふたつ放つだけで、祥子くらいなら無力化出来ると思うんだけど。

 

 なに、あっさりケツ、モロに蹴られてるの? それに防壁が消えたって? どゆこと?


「あらっ! 何かしらぁ、このカエルが潰れたような声は? これは年上を敬うっちゅう当然のことも出来ん糞ガキへのお仕置きって奴じゃけんっ! ウラァッ! ゲコゲコ言うとらんで、他になんか言う事あらへんのかっ!」


 更にもう一発……祥子のケリがヨミコの右ケツに炸裂する!

 一瞬防壁が展開されたのが見えたのだが……失敗でもしたのか、祥子のヤクザキックを全く防げていない。

 

「いったぁっ! 蹴ったね! この魔王12貴子が一人、ヨミコ・アルバトロスのお尻を蹴りおったね! 父様にだって、蹴られたこと無いのにっ! 万死っ! 万死に値するっちゃね! もう怒った! このメガネブス! ぶっ殺してやんよっ!」


 そんなどこぞの機動兵器パイロットみたいなセリフを吐きながら、立ち上がろうとするヨミコ。

 確かに、世の中の親父はあんまり子供のケツは蹴らないと思う。


「やかましいっ! そんな蹴ってくれと言わんばかりのカッコしてる奴が悪いっ! ぶっ殺す? 上等ッ! こうなったら泣かしたるわッ!」


 起き上がった直後に、膝裏ローキックを食らってもんどり打って、再び地面に転がるヨミコ。


「ちょ、おま……何してくれんのや……や、やめぃ……」


 蹴られた膝を押さえて、悶絶するヨミコ。

 真っ先に足を潰しにかかる辺り、手慣れてるとしか思えない……。


「オラオラオラァッ! もう一回おんなじセリフ言ってみぃやっ! よう聞こえんへんかったわっ!」


 更に、もう一発……二発、嵐のような祥子のヤクザキックがヨミコのケツに炸裂する。

 なにやら、反撃を試みようとしているようなのだけど、問答無用でエキサイト中の祥子の前に、為す術無く足蹴にされていく……ボッコボコである。

 

 おーい、魔王12貴子……。

 

 お前……後ろに(笑)って付くんじゃね?

  

「やめいっ! 解ったから……もう止めっちゅーのっ! オンドレ、ええかげんにせいやっ! 乙女のお尻を何だと思っとるんや! この駄メガネっ! しまいにゃ、メガネ割るぞコラァッ!」


「誰が駄メガネだっつのっ! つぅか、まだイキがる元気があるんか……。そかそか、こうなったら、そのケツもげるまで蹴ってやるから覚悟せいやっ! このっ! このっ! いっそ、ブチッとちぎれろっ!」


 サッカーボールのように執拗に、スパーン、スパーンとヨミコのケツを蹴り続ける祥子。

 

 最初は抵抗する素振りを見せていたのだけど、祥子は徹底してケツを集中攻撃する事に決めたらしく、避けようがガードしようがお構いなしで、ひたすらに機械のように蹴り続ける。

 

 やがて、ヨミコはぐったりとして抵抗すらしなくなる。


「う、うわぁ……」


 思わず、目を逸したくなる。

 そこには……嬉しそうに微笑みを浮かべた女子高生が、無抵抗の女児の尻を蹴り続ると言う無残かつシュールな光景が繰り広げられていた。


 さすがに、やりすぎな気が……。

 

 あ……そろそろ、泣くぞ……これ。

 

「……堪忍や、もう堪忍してや……ぴゃぎゃーっ!」


 地面に転がりながら、身体を丸めてえぐえぐと泣きじゃくるヨミコ。

 泣かせちゃったよ……どうすんだよ。これ。

 

 さすがに、なんだか可哀想になったので、祥子を羽交い締めにして止める。

 

「祥子! どうどう……ストップ、ストップ……そこまで! 泣いたら終わり、な?」


 まぁ、相手が泣いたら、普通そこまでだよなぁ。

 子供の喧嘩のルールってやつだ。

 

「いえ、お父様……情けは無用です。ここは確実に仕留めるべきです……生かしておく必要などありません」


 アルマリアが物騒なセリフと共にボウガンを構え、次弾を装填しながら隣に着地する。

 

 クレイゴーレム以外にも、カカシ兵と呼ばれる雑魚ゴーレムなんかもいたはずなのだけど、見渡すと死屍累々と言った様子。


 その数……ざっと見ただけで、100体ほど……。

 

 けれどもはや、俺達以外に動くものはいない。

 どうやらアルマリア一人の手で、ヨミコ率いるゴーレム軍団は壊滅したらしかった……。


 ついでにいうと、辺りの町並みはもはや原型を留めてない……これが現実だったら、大惨事だったな。

 

 と言うか……アルマリアはともかく、祥子ってなんなの?

 途中でヨミコも何度か防壁を展開してたみたいだけど、まったくお構いなし……。

 

 自覚してやってるのか解らないけど、向こうの世界でも、有数の実力者……魔王の眷属を文字通り一蹴して、泣かすとか……ホント、なんなのこいつ?

 

 ガキの頃から知ってる相手じゃあるんだけど、魔術防壁を素手で粉砕するとか意味がわかんなーい。

 

 寺生まれだから? 寺生まれって、そんなすげーの?

 

 なんか、このメンツで俺が最弱のような気がしてきましたけど、どうなの?

 

「そうよっ! 猛部さん! 止めないでっ! こんな物騒な奴……せめて、ベキベキに心折らないと! やるからには、二度と逆らう気が起きないくらい徹底的に恐怖を刻み込む……それが鉄則って言ってたでしょう!」


 ……もう、折れてると思いますし、何処の世界の鉄則なのです? それは。

 俺、そんな事言った覚え……全然ありません。


 ヨミコの様子を見ると、目もレ○プ目状態でどこ見てるんだか解らない状態。


 スカートもパンツもボロボロに破れて、擦り傷だらけで丸出しになった生尻を必死で隠そうとしながら、プルプルと痙攣してる。

 

 ……えっと、完全に婦女暴行の現場です……事案です。

 存分に恐怖も刻まれてると思います。

 

「う、うち……こんなんもう、お嫁にいけん……いっそ殺してぇな……。もうあかんて、うちが悪かった。……ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい……もぅおうち帰る。痛い……お尻がめちゃくちゃ痛いの。痛いのはもう嫌や……助けて、誰か助けてぇな……」


 ぶつぶつとうわ言のように、ひたすらに謝罪の言葉をつぶやいてる。


 これは……酷い。

 

「祥子さん、アルマリア……見ての通り、こいつはもう戦意喪失してる。……おい、ヨミコだっけか? お前ももう降伏しろ……とりあえず、謝っとけ! 喧嘩売った相手が悪かったな……命があっただけマシってもんだ」


「た、助けてくれるんか? 勇者はん……でも、うちのお尻、もう駄目になってしもうたみたいなんや……ちゃんと付いとるかな……」


「ま、まぁ……取れてはいないから、大丈夫なんじゃないかな……」


 痛々しく真っ赤になって、ところどころ血も滲んでるけど……形が変わってる訳でもないし……。

 

「そっか、まだ付いとるんやな……。なぁ、勇者はん……降伏でも何でもするから、もう蹴らんといてぇな。痛いんや、助けてぇな……もういやや……」


「ああ、この鏡面空間から俺達を解放して、二度と手出しもせず、大人しく向こう側に帰ると約束するなら、命までは取らない! 怪我の治療もしてやるから、安心しろ! 気をしっかり持て……傷は浅いぞっ!」


 ヨミコの手を握って、励ましの言葉をかけると、レ○プ目状態だったその赤い瞳に生気が少しだけ戻ってくる。


「するするっ! だから……この二人を止めてや……うちが悪かった! この通りや……命ばかりは、お助けをぉおお……」


 鼻水を垂らしながら、涙目で俺の足にすがりつく、ヨミコ。

 これは酷い……プライドも何もかも、かなぐり捨てての命乞い。

 

 よく見ると足元に水溜りも……これは、見なかったことにしよう。

 

 それにしても、ここまで……徹底して心をヘシ折るとか祥子パネェ!


 まぁ、こっちの実被害も……。

 俺もクレイゴーレムにモロにぶん殴られたけど、ダメージなんてちょっと擦り剥いた程度だ。

 もっとも、明日になってから、あちこち筋肉痛とかになるかもしれんけど……。

 

 他は、アルマリアの服が駄目になったくらいか……。

 すっかりチャイナ服状態になった上に、ゴーレムとの戦いで、袖とか取れてボロボロ。


 パンツは……履く気ないらしく、道路わきの茂みの上に引っかかったまま放置。

 つか、履いてください……我が娘よ。

 

「解った解った……そんな訳だから、二人共もう勘弁してやってくれ! それとヨミコ、お前にも色々聞きたい事があるから、ひとまず俺の家に連行させてもらう……要するに捕虜だ……それでいいな?」


 俺の足に縋り付いたまま、コクコクと頷くヨミコ。

 

 もはや、戦う意志も逆らうつもりもないらしい……。

 まぁ……まがりなりにもここは日本だし、平和的解決が一番だ。

 

 情報源にもなりそうだし……なんか、色々可哀想になってきた。

 

 確かに、あんな極悪な呪詛をかけられて、危うく呪い殺されかけたのは事実であり、アルマリアにとって魔王の子供たちは母親たるテッサリアの仇。

 

 俺にとっても、そう言う意味ではむしろ憎むべき相手なのだが。

 泣いて詫び入れて、こちらの降伏勧告を受け入れた以上、その辺は棚上げして然るべきだった。

 

「まぁ……猛部さんがそう言うなら……ねぇ。アルマリアちゃんはどう思う?」


「そうですね……お父様のご命令なら致し方ありません。ただし、妙な動きを見せたら、容赦しないのでそのつもりで」


 二人共納得してくれたらしい。

 

 かくして、唐突に始まった魔王の眷属との戦いは……。

 

 相手の心がベキベキに折れて、泣いたから終わり……と相成ったのだった。

 

 ……俺も優しくなったもんだなぁ。

魔王12貴子ヨミコ・アルバトロス戦、しゅーりょーっ!(笑)

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