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第七話「とあるおっさんの割りとゆるいたたかい」③

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 現在、2chRead 対策で本作品「とある勇者だったおっさんの後日談」においては、

 部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。

 読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。 

                  Copyright © 2018 MITT All Rights Reserved. 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「お前はなんなんだ……魔王の子供たち……なのか?」


 とりあえず、直球……まぁ、ガン無視されても文句言えないんだけど、ちょっとは乗ってこいっ!


「なんや、そこまでバレちゃってるんか。せや、うちはヨミコ・アルバトロスちゅうねん。「殲滅魔人エクスターミネイター」なんて、厄介な奴がこっちに来るとか、ホンマ参るわぁ。まったく、うちらの予定が大狂いや……ほんに、面倒くさいわぁっ!」


 なに、このポンコツ京都弁は……? アルバトロス……ああ、魔王の名前だっけ。

 「殲滅魔人」とか言うのは……どうもアルマリアの二つ名らしい。


 ……どんな二つ名だよっ!


 あいつ、向こうで何をやらかして、そんなおっそろしい二つ名をつけられたんだか。


 だが……こっちの話に乗ってきたのは、それだけでも十分な僥倖だった。

 このまま牽制するなり、無駄話で時間を稼いで、なんとかアルマリアと連携して反撃の糸口を掴む。

 

 いや、この場は祥子を逃す……これが最優先だ。

 ……非戦闘員の祥子をかばいながら、上級魔族と戦うなんて、とても無理だ!

 

「そう言うなよ……予定なんてのは、えてして裏切られるものさ。だが、やっと会えたなっ! あんな凶悪な呪詛なんぞ、こそこそと仕掛けるとか、舐めた真似しやがって……! 俺を魔王を討ち取った勇者タケルベだと知っての事か?」


「うちは、別にアンタみたいなオッサンにゃ、興味あらへんよ。大人しく呪い殺されてればよかったんや……あそこまで呪詛が育ってたんやから、もうなんもせんでも勝手に野垂れ死んどったのに……。余計な手間かけさせよって……ほんまムカつくわ。つか、後ろのメガネはなんやねん? ひょっとして、巻き込んじゃったりした系? うち、やらかしてもうたかなぁ……」

 

 おっさんで悪かったな……と思いつつも、どうも、祥子を巻き込んだのは不本意な様子だという事が窺い知れた。

 正直、意外な反応だった。


「そ、そうだ……彼女は俺達と関係ないただの通りすがりの女子高生だ。こっちの世界のまったく関係ない一般人を戦いに巻き込むのが、お前ら魔王の子供たちの流儀なのか?」


 まったく話にならないと思っていたのだが、祥子を気にかけてくれているのは予想外だった。

 

 考えてみれば、日本各地に進出していると言う他の魔王の子供たちも騒ぎ一つ起こしている様子も無かった。

 こいつらレベルが本気で暴れたら、警察なんかじゃ手に負えない。

 

 にも関わらず、そんな騒ぎは、一切ニュースにもなってない……。

 つまり、必要以上に騒ぎを起こす意図は無く、なるべく穏便に……と言うことなのだろう。

 

 この鏡面空間だって、無関係の人間を巻き込まないための配慮なのかもしれない。


 それに、こいつの着ている服も普通にこっちの子供服っぽい……つか、しまむろのTVCMで見たぞ、その猫プリント。

 

 ……なんとなくなんだが。

 こいつら……なんだかんだでこっちの世界を気に入って、順応してるんじゃないかって気がする。


 住むだけなら、絶対にこっちの方が便利だし快適……ひょっとしたら、こちらの世界を侵略する意図もあるのかもしれないが。

 自由に行き来できるのをいいことに、別荘感覚で、こちらの世界での生活を堪能してるんじゃ……?

 

 それに……なんか想像してたのと違って、やたらとノリが軽い。

 魔王の仇討ちとか言って、ガチの殺し合いを挑んでくると思ったのに、こっちのあからさまな時間稼ぎの会話に乗ってきてるし……。

 

 正直言って、真面目にやる気あるのか疑わしいくらいだった。

 

「えっ! そ、そうだったん? 出来れば、こっちの世界の奴は巻き込みたくなかったんやけどなぁ……。そうなんか? そこのメガネねーやん!」


「か、関係ないって……それ酷くない? 猛部さん! あたしって……そんな程度の扱いだったの? 酷いよっ! 何年付き合ってると思ってるのさ!」


 祥子さん、嘘にマジレス良くない。

 ……そこは、嘘でいいから、ただの通りすがりです! とか言って欲しかった。


「……馬鹿野郎、そこは空気読めよ……。それと、付き合ってるとか誤解を招きそうな言い方するのは止めて……」


 思わず嘆くのだけど、向こうは耳ざとかった。


「なんや、やっぱり勇者はんの知り合いなんやないけ! 知り合いって事は関係者……仲間って事やろ? うっかり巻き込んで死んでもうても、それはもう勘弁してもらわんとな! まぁ、勇者はんの仲間だったのが運の尽きやな……諦めてぇな。恨むなら、そこのおっちゃんとアルマリアを恨むんやなっ!」

 

 そう言って、ケラケラ笑う。

 むかつくけど……一応まぁ……正論。

 

 でも、好戦的なバカじゃないのは解ってきた。

 この敵には、良識ってモノがある。


 となると、わざわざ鏡面空間に引き込んで、直接出向いてきたのは何が目的なのだろう?


 理知的なタイプには見えないんだけど、ねちっこく呪詛とか使ってきたのは如何にもって感じじゃある。

 けれど、呪詛使いなんて姿を見せずに、こそこそネチネチ仕掛けてくるのが定番。

 

 わざわざ顔見せに来るとか、どうにもその行動の意図が解らない。


「なぁ、そんな事を言いにわざわざ顔見せに来たのか?」


「まさか! 影でおっちゃんの事は見とったからな。……ダサリーマンって言うんやっけ? お父様を倒した勇者様がこんな惨めな生活してるなんて、見てて可哀想になってな! せっかくやから、冥土の土産にうちの顔くらい拝ませてやろうと思うたんや! そこのメガネもよく見ると見覚えあったわ。せやせや! 思い出したわ! えっらい不細工なもんで、ブスメガネって、あだ名付けとったわ!」

 

 なるほど、口が悪いのは解った……ダサリーマンに惨めと来たか。

 まぁ、ハゲとか言われたら泣いちゃうけど、そこに触れないだけ許せる範囲だ。

 

 祥子については……しょっちゅう家まで送ったりとかしてやってたからな。

 俺に付きまとってたら、必然的に見かける機会もあったのだろう……でも、人に変なあだ名つけるの良くないっ!


 祥子だって、別に不細工じゃないだろ。

 ……おじさん、そこはちょっと腹たってきたよ?

 

 そんな事を考えていたら、なんか背後で地獄の底から響くような声が聞こえた。

 

「……ざっけんな……コラ」

 

 恐る恐る振り返る。

 

「誰がブスメガネじゃっ! それに、うっかりで殺されてたまるもんですかいっ! 笑って済ませろ……だぁ? 笑いごっちゃねぇよっ! こんクソちびっ! 今すぐそっから降りてこいや! あたしが相手したげるけん! 覚悟しぃやっ!」


 怒声と共にスチャッとメガネを外して、胸ポケットにしまい込むと俺の前に出て、両手を組んで、仁王立ちする祥子。

 

 ……やべぇ、祥子がキレた。


 どうやら、理不尽の連発と罵声の数々でストレスがマッハで振り切った模様。

 

 こいつ……基本的にお淑やかだし家庭的で大人しいんだけど、限界超えるとブチ切れて、いきなりバイオレンスになるんだよな。


 その合図は、ずばりメガネを外すこと。

 メガネを外した祥子は、間合いが適当になるから、加減も出来ないし、何でもかんでも腕力で解決しようとする。

 

 そこには、思慮熟考と言う四字熟語の存在する余地はない。

 

 力こそ正義、弱者に人権なんぞないと言う世紀末覇王思考の信奉者と化す。

 言葉使いも岡川弁全開で、そりゃあもうガラが悪いのなんの。

 

 実は、中学の頃、俺の知らないところで、いじめのターゲットにされたらしいのだけど。

 いじめた側の奴らは全員、キレた祥子にフルボッコにされて、パシリとして残る中学校生活を送ることを余儀なくされたと言う恐るべき前科がある。

 

 10人位の女子グループだったらしいのだけど、一人づつ闇討ちを仕掛けて、様々な手段を用いて、ベキベキに心を折っていって、全員に泣きを入れさせたらしい。

 

「もし相手が10人もいたら、どうやって戦えばいい?」……なんて聞かれて、一人一人各個撃破すればいいんじゃないか……と要らんアドバイスをした俺が悪かったのだけど。

  

 でも断言しても良い……メガネレス祥子が如何に凶暴でも、これ無理ゲーだから。

 

 グーパンじゃ、ファイアボールは防げませんから。

 そもそも、魔術防壁は素手じゃ砕けません! 無茶よくないっ!




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


祥子サン、怒らせるとヤバイ人。


アルマリアも「殲滅魔人」なんて、凄い二つ名で呼ばれとります。

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