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第五話「とあるおっさんのドキドキトゥナイト」③

 ……とりあえず。


 アルマリアは、シャンプーとリンス、ボディーソープとタオルを渡して風呂場へ放り込んでおいた。

 ちなみに、先程の甘ったるい空気は、雰囲気ぶち壊しにすべく、唐突にTVを付けてお笑い番組にチャンネルを変えたら、そっちに気を取られてくれた。

 

 つまり、やばい空気はとっくに霧散している……俺の勝利だ。

 

 一応、簡単にシャワーの使い方やシャンプーやらリンスの使い方とかは教えておいた。

 ちょっと不安だったけど、向こうでも風呂くらいあったし、この年なら身体を洗うくらい一人で出来なきゃ、むしろおかしいだろ。


 そう思ったので、一人で行かせたのだけど……正直、かなーり、不安。

 

 でも……小さいとは言え、女の子と一緒に風呂に入るとか、さすがに抵抗ある。

 

 大丈夫! 一人で出来るさ!


 水洗トイレだって、独力で使い方解ったくらいには、彼女には順応性があるし、頭もいい……さすが俺の娘だ!

 

 ……とタカを括っていたのだけど、お約束のように風呂場の中で騒ぎ始める。

 

「お父様ぁっ! 冷たい水がいきなりっ! それに目がっ! 目がしみて、何も見えませんっ! 助けてーっ!」


 ……やっぱり、無理でした……ごめんよ。

 

 とは言え、助けを求められて、ほっとける訳もなく風呂場の扉を開けると、全開になって床で暴れまわってたシャワーから吹き出した水が、盛大にぶっかかる。

 

「あばばばばっ! ぶわっぷ……あばぁっ!」


 ずぶ濡れになりながら、手早くシャワーを止めると、浴槽に身体半分浸かりながら、顔がシャンプーの泡まみれになったアルマリアの様子が目に入ってくる。

 

 当然ながら、全裸だ。

 

 とは言っても、体中泡まみれだし、胸もちょっと膨らんでる程度という事くらいしか解らない。

 うん、セーフだ! 問題なしっ!


 ちょっと一瞬……フリーズしかかったのだけど、大丈夫、問題ない。

 

「お、お父様ですか……ど、どうすれば……あいたっ!」


 壁の方へバックしようとして、思い切り壁にブチ当たった挙句に足を滑らせたのかすっ転んだ。

 しかも、シャワーのホルダーに後頭部をぶつけたっぽい……痛そう。

 

 湯船も……ボディーソープのキャップを開けて、そのままお湯に沈めたらしく、泡がボコボコ溢れて、何がなんだかと言った様子。

 

 おまけに、アルマリア本人も転んだ拍子に湯船に沈んで、アップアップともがいてる。

 

 なんてこった! わずか一瞬で大惨事ッ!

 

 うん……向こうの世界の住民に、いきなり一人で風呂に行けとか、無茶ぶりでした……反省してる。

 

 考えてみれば……銭湯とか温泉行くと、お父さんと一緒にこれくらいの娘が一緒に男湯入ってきたりしてるの見かけるし、親子でお風呂とかって、普通なんだよな。

 

 これはもう、一緒にお風呂に入っても、別に構わないような気がする……。

 世間様で当たり前のことを、俺がやっちゃダメって道理はないだろう。

 

 俺もすっかりずぶ濡れになったし……これからは一緒に暮らすんだから、風呂の入り方くらい教えてやらないといけない。

 

 それに、裸の付き合い、スキンシップの一つもすれば、この微妙な空気も少しは親子っぽくなるんじゃないか?

 

 ……そんな風に自分に言い訳をしつつ俺も服を脱ぎ、腰にタオルを巻くと、もはやパニックになって溺れかけているアルマリアを救出すべく、湯船に突入するのだった。

  

 それから……。


 風呂で溺れるという器用な真似をしていたアルマリアを無事救出し、一通り洗い終わったのはいいのだけど。

 俺の思惑とは裏腹に、アルマリアは湯船の中で背中を向けて、膝を抱えて縮こまっていた。

 

 まぁ、膝を抱えればアルマリアと一緒に入っても、ちょっと狭い程度で、さしたる問題無いのだが……なんか凄い悪いことしたみたいじゃないか。


「ごめんな……アルマリア。いきなり、こっちの風呂一人で入れなんて言われても、そりゃ全然解らんよな」


 とりあえず、自然体で接する。

 俺が堂々としてれば、向こうも大丈夫だろう……たぶん。


「あ、はいっ! ごめんなさい……私こそ、ご迷惑をおかけしてしまって……」


 こっちをチラ見して、慌てて壁に向き直るアルマリア。

 それっきり、妙な沈黙と見えない壁のようなものが、アルマリアとの間に横たわる。

 

 一応、これでも気を使ったつもりだし、アルマリアもガッツリ、タオルで軍艦巻き状態にしてやった。


 俺も腰にタオルくらい巻いてるので、別に問題ないのだけど……。

 どうもシングルマザー状態で育ってきたせいで、むしろ、男の裸に全く免疫が無いらしい。

 

 普通、これくらいの年なら、まだそこまで異性のことなんて気にしないはずなんだがなぁ……。

 

 俺の小学校時代とか、プールや体育の時、男女同じ教室で着替えたりとか普通だった。

 まぁ……さすがに、色々と問題があったらしく、最近はそんな事もないらしいのだけど……。

 

 それに、あっちの世界って女性優位の世界だから、女性達もかなりオープン。

 割りと南国風で暑いところだったから、裸同然のスケスケ衣装で皆、平気で街を歩いてたりしたもんだ。


 最初の頃は、そりゃあもう鼻の下伸ばしたりしてたもんだが……一年も暮らしてれば、慣れた!

 

 それはともかく、俺の気分は、極めて冷静だ。

 いわゆる賢者モードというやつだ……大丈夫だ、問題ない。

 

 先程までは、髪を洗ってやったり、身体を洗ってやったりと……大変だった。

 子供……それも女の子の身体を洗ってやった経験なんてないし、うっかり微妙な所に触れて、妙に色っぽい声出されるし……。


 ちなみに、こう言うときは素数を数えるのが良いと言う教訓を得たぞ。

 

 ……向こうはもっと恥ずかしかったらしく……すっかり、この有様である。

 

 その様子を見ていたら、むしろ落ち着いたのは、不思議な話なんだが……大人の余裕って奴?

 とりあえず、大人として恥ずかしい所は見せないようにしないと……そう思ったら、素晴らしく冷静になれた。


 そうだ……俺はもう父親なのだ! さらば、独身の俺! 今日から俺は人の親と言う立場を自覚してだなっ!


 うん、ここはひとつ、父親の威厳と言うものを醸し出すような言葉でもかけるとしようっ!

 

「えっと、アルマリア……お風呂って、入ったことあるのかな?」


 実際、俺の口から出た言葉は、なんとも普通だった。

 俺、ヘタレった!

 

「あ、はい……夏場、水風呂や川で水浴びなら……。けど、こんな風にたくさんのお湯を贅沢に……なんてのは、ありませんでした」


 言いながら、今も蛇口からダバダバと流れるお湯を手ですくって、不思議そうにしている。

 追い焚き機能なんて無いからな! 冷めたら、お湯を足すのが我が家の風呂の仕様だ!

 

 それにしても、湯水のようにってよく言うけど……お湯ってのは火を焚いて沸かさないといけないから、ファンタジーな異世界じゃ、貴重品なのだよ。


 それをこんな風に、身体を温め、清めるために潤沢に使うとか……確かに贅沢な話である。

 

「そういや、あっちじゃ……お湯張ってとか、そんな贅沢そうそう出来ないもんな……。でも、俺も結構風呂には拘ってたから、河原で水せき止めて、ファイアボールブチ込んで、即席露天風呂とかやってたぞ……あれはなかなか良かったな」


 割とどうでも良い世間話……のようなものを振ってみる。

 向こうの世界の話なら、ちょっとは乗ってくるかな……と思ったのだが。

 

 ちなみに、向こうの世界じゃ風呂なんて贅沢、王侯貴族くらいのもので、一般人はもっぱら川で行水したり、井戸端で濡らした布切れで身体を拭くくらいがせいぜいだった。

 

 当然、冬でもそれだ……肩までお湯に浸かってほっこりなんで、贅沢も良いところだ。

 でも、俺の考案した「ファイアボール風呂」は割りとお手軽だったんで、川の側での野営の際の定番だった。

 

「あ、それ! 知ってますよ! お母様達が集まると、皆こぞって、お外でお風呂なんてやってました! 火力の調整がキモなんですよね!」


 知ってたらしく、思った以上の勢いで食いついてきた。

 そもそも、俺が考えた奴だもんな……でも、しっかり受け継いでくれていた事にちょっと嬉しくなる。


 それにしてもお母様たち……か。

 俺の嫁達ってお互いの子供を自分の子供同然に扱ってたのかも……家長不在のハーレム大家族って奴?

 

 本来、俺がその中心にいるはずだったんだがな……。

 俺も交じりたかったなぁ……つくづく、思う。

 

「そういや、あの即席露天風呂……結構、好評だったんだよな。なるほど……あいつら、すっかり味をしめたってわけか」


「聞いてますよ……向こうでお風呂を普及させたのは、お父様だって! でも、冬場はすぐ冷めちゃうし、外で裸になるのって、どうにも落ち着かないんで、たまにでしたけどね。レティシア姫様ともご一緒しましたよ……でも、警備とかすごく厳重にされちゃって、全然落ち着きませんでした」


 ……また、懐かしい名前が出てきた。

 

 レティシア姫。

 

 一言で言えば、ロリっ娘ツンデレお姫様……初対面は、王国に取り入るためのネタを探して王城に忍び込んだら、城から脱走しようとしてた姫様と鉢合わせ……って、そんな感じだったんだよな。

 

 当時、彼女は13歳……めっちゃ懐かれて、将来結婚の約束までさせられてたのだけど。

 さすがに、大人の付き合いはなし。


 もっとも……最後の夜は、当然のように迫られたんだけどな!

 

 幸か不幸か、服を脱ぐだけ脱いで、そこからどうすれば良いのか解らないと、真顔で聞いてくるような無知っぷりを見せつけてくれたので、頭撫でて一緒に寝たら、それなりに満足してくれた。

 

 本人は「これで子供が出来るのだな!」とか言ってたから、適当に話合わせてお帰りいただいたのだけど。

 ぶっちゃけ、何もしてない以上、絶対にそんな事ないので……。

 

 たぶん、いや……絶対怒ってると思われる……思われるのだが。

 あんな状況で、どないせいと言うのだか。


 俺の選択……間違っちゃいないよな? 人として……。

このくらいなら、大丈夫だ問題ない。(笑)


なんだか、思った以上にPV伸びてるみたいですが。

良かったら、ブクマとか評価とか入れてください。


正直、この作品……ウケてるんだか、そうでないんだか、よく解らないんですよね……。

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