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第九話 なんかドキドキしちゃった……

「知らない星空、満天の星空……」


 目の前に広がるのは視界一杯の星空。

 美しいふたつの月、見たこともない星座、何もかもが夢のように感じる。

 同時に、自分が日本には居ないことをはっきりと認識させる。

 その異世界で山登り、そして今休憩所のベランダで空を見ている。


「何もかも、夢みたいだからなぁ……皆が人間になっているし、剣と魔法のファンタジー……

 私もこんな姿になっているし、異世界転生物はいっぱい読んだけど、自分がそうなると、なんか実感が無いなぁ……今も小説でも読んでいるみたいな気分」


「マキ、ここに居たのか」


「ハル……ここは本当に日本じゃないんだね……」


「……マキは日本に帰りたいのか?」


「うーん……わかんなくなってきた……

 皆といると楽しいんだよね。こんな風にお喋りできるなんて信じられないよ」


「俺は……マキと一緒に居られればどこでもいいんだ。

 マキに救われてから、俺の全てはマキのためにあるんだ」


 ハルがまっすぐと私を見つめている。

 月明かりに映されたハルの美しい顔立ちがさらに輝いているようにみえる……

 ……あれ、なんか、恥ずかしいな……ハルなのに……


「マキ、俺が君を護る。どんなことがあっても、だから……」


 ハルの顔が近づいてくる。

 ……なぜか、動けない……ハルのきれいな瞳に吸い込まれそうになる……

 その綺麗な唇が……私の唇に……


「ぐおっ!」


「おい! てめぇハル!! 何してやがる! 遅いと思ったら!!」


「クッ! ナツ! もう少しだったのに……!」


「あ! こいつぬけぬけと! 

 表にでろ! 決闘だ!」


「ナツ殿自分も手を貸そう、約定を破ろうとする不逞の輩に鉄槌を!」


 ハルは皆に引きずられて外へ連れてかれていった。

 

「……まだドキドキしている……」


 自分の胸に手を当てる。

 

「ハルなのに……、まるで違う人に見えた……」


 思い出すと顔が熱くなる。早く寝よう。

 いそいで自室の布団に潜り込む。


「~~~~~~~~駄目だ! ああーーーもーーーー……」


 ハルは、ハル。あの頃のハルの姿が段々と今のハルの姿に置き換わっていくような気がする。

 ブンブンと尻尾を振って無邪気にじゃれるハルが、男性としての魅力あふれるハルの姿に……


 さっきの光景が頭をぐるぐると巡ってしまうのをブルブルと頭を振って振り払う。

 無理やり布団をかぶって寝っ転がっていたら、いつの間にか朝になった。


「あーーー、なんか寝た気がしない……」


『おはよう主、あまり眠れてなかったようだが、疲労は私が受け持つから心配するな』


「な、なんかゴメンねヘイロン」


 ドアの外で待機してくれていたヘイロンがスルリと私の影に潜む、それと同時に身体の倦怠感や寝不足気味だった頭までスッキリする。なにこれ、一家に一台欲しい。


 スッキリした身体で食堂へ向かうと朝食のいい匂いがする。


「マキ君おはよう」


「マキさんおはようございます」


「おはようトウジ、ナギ」


 ちょうどトウジとナギと一緒になる。

 軽く身支度も整えて朝の支度もしっかりと出来ている。

 あ、顔も洗ってないや……

 なんか、トウジもメガネイケメンだし、ナギは美少年……うーん、なんか昨日から変に意識してしまう。


「これはマキ殿おはようございます」


「マキちゃーんおはよーさん!」


「マキ、おはようよく眠れたか? あの馬鹿は絞めておいたから安心しな!」


「ああ、皆おはよう、ハルはどうしたの?」


「あいつは周囲の警戒に当たっている」


 ビッと指差す先にフラフラのハルが周囲をキョロキョロと見回していた。

 なんかボロボロな感じがするけど……ついついその横顔を見つめてしまうけど、顔を振って振り払う。


「さ、朝ごはん食べよー」


「今日は日本食を真似しとるから期待しとってねー」


 アキちゃんの言った通り、白米に海苔、卵に焼き魚。立派な朝食だ。


「すごいね~! いただきまーす! ……うん! 美味しい!」


 少し固めではあるもののお米は美味しい。

 海苔はいつも食べていたものよりも香りが凄い。

 お魚も美味しいし、これは幸せだ。


「あれ? そう言えば卵とかお魚ってどうやってるの? 

 マジックバッグ内で傷んじゃわないの?」


「ああ、それはやな、大量の氷で包んで丸ごとしまっとくんや」


「魔道具の冷蔵庫は稼働したままだとマジックバッグ内にはしまえませんからね」


「そういえば帝国は魔道具よりも魔法っぽい方が発展してるんだっけ?」


「そうですね、魔石に直接魔法を書き込んだりしてスクロールの何倍もの魔法を使えるようにしたり、どうしても戦闘に傾いていますね。

 魔道具みたいに生活につながる物がある方が素敵です」


 うーん、ナギちゃんは可愛いなぁ~。


「はぁはぁ……夜間警備きちんと終えたぞ……悪いが出発前に起こしてくれ……」


 フラフラとハルが食堂に顔を出して、すぐに自室に行ってしまった。

 今顔を合わせると赤くなってしまいそうなので、ちょうどよかった……


「全く、アイツは……マキ、ホントに何もされてないんだよな?」


「なっ! 何もされてないよ! 全然平気!」


「ホントにホントだな!」


「う、うん! だ、大丈夫だよ!!」


 いきなりナツに言われてうろたえてしまった。

 なんだかアキがニヤニヤとこっちを見てるのがムカつく……


「準備できたみたいだな、それじゃぁハル起こしてくる」


「……なんだかんだナツとハルは仲いいよね。前のときもいつも一緒に寝てたもんね」


\ワーバカ! ヤメロ! ネボケルナオレハマキジャナイーアッーーー!/


「……仲いいねぇ……」



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