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第七話 始まってみたら楽しかった……

「うわーーーー! きれーーーーーい!」


 目の前に広がる大河と木々、それに道端に咲く草木花々、全てが美しかった。

 人間の希望として送り出された私たちは、まず馬車にてサウザンドリーフ王国の北に連なる霊峰ソウ山へと向かっている。

 街道がある間は今みたいに美しい風景にすっかり夢中になっている。

 日本でもこんなに綺麗な河川や街道を見たことはない。

 一見するとのどかな風景が広がっている。


「自然って素晴らしい!」


「まぁ、今はそう思ってるけど、基本的に都市部以外は自然しか無いんだよ」


「魔物や魔獣が活発になって、防衛機能のない小さな村なんかからは街へと避難してるんだろ?」


「旅の物資はウチのアイテムバッグにたっぷりやで! さっすが王様太っ腹やったわぁ」


 ガタンと馬車が止まる。


「またか……ほんとに活発になってるんだね! ミーのお友達もうんざりしているよ~」


 キラキラとした光の玉がリッカの周りを飛んでいる。

 これが精霊だそうで、リッカは精霊魔法の天才だそうで周囲の警戒に当たってくれている。


「さっきは皆に任せたけど、今回は私達に任せて欲しい。

 さ、ナギ様、上に出ましょう」


「う、うん。マキさん、見ててね!」


「だ、大丈夫ナギちゃん?」


「だいじょーぶ! マキっちも驚くよ、黒と白の魔導師の力に!」


 めっちゃきれいなウインクされた。私はうまくウインクが出来ないから羨ましい。


 馬車の上に出たトウジとナギは杖を掲げる。

 二人の頭上で魔力が渦巻いていることがわかる。

 相変わらずこの変な能力で、うちの子達のまわりの状況は空からでも見ているように把握することが出来ている。

 さっきの戦闘も皆の凄まじい戦闘もきちんと把握できていた。

 今回は私のレーザーは控えている。

 一回やったら草原に火がついてボヤ騒ぎになっちゃった。

 ヘイロンは反省してたけど、私を護るために一生懸命やってくれてる。


「シャドーアロー!」「ホリーライト!」


 馬車の上から二人の声がする。

 同時に接近してきた魔物たちに方や黒矢が降り注ぎ、方や聖なる光が素早い魔物を次々と撃ち抜いていく。


「凄まじい魔力量だな、あれだけの数が降り注いではどうしようもない……」


「ナギちゃんの魔法のコントロールも凄い……あのスピードの魔獣たちを正確に射抜いている……」


「これが『黒』と『白』の実力か……」


 ハル、ナツ、フユが舌を巻いている。

 トウジは攻撃魔法と敵の阻害魔法の使い手、しかも超一流の。

 ナギは神聖魔法と回復・補助魔法の天才だって。すごいねー。

 リッカもたくさんの精霊を呼び出して大活躍する。

 皆、こんなに立派になって私は嬉しいよ。


「皆、強いから私はなーんにもしなくて大丈夫だねー」


「馬車が入れるのはもう少し先までだから、そこからはマキも頑張ってくれよな!」


「えー、聞いてないよー……」


「ウチの商会の人間が仮拠点作っとくさかい、安心してダンジョン制覇しちゃいましょ」


 BB商会の方々も今回の旅に追従してくれて、倒した魔物からの魔石回収や野営準備、それに夜間警戒などを行ってくれている。

 国を挙げての旅だから各国からの資金援助も潤沢で大儲けやでーってアキちゃんが喜んでいた。


「それにしても、霊峰に近くなると敵の数も質も上がってきているな……」


「ハルもそう思うか?」


「魔王も自分に厄介な物は排除しようと思ってるのかもしれないねぇ~。

 最も、この事実は教会でも上層部の一部しか知らないから……

 霊峰はもともと勇者縁の地と言われているから……だといいんだけど。

 他の三箇所も同時に魔王に目をつけられていたらちょっと危ないかもしれないねぇ~」


 リッカもちゃんと喋れるんだ……

 内容よりもそこに驚いちゃった。


「マキちゃんそろそろ拠点予定地やー」


「ここで一泊したら、登山かぁ……山登りなんて初めてだけど大丈夫かな……」


 この身体になってから、色々と確かめたけど、まず、戦闘能力全般はヘイロンのお陰でよほどの魔獣でも相手にならないほどだ。

 それに加えて、うちの子達の力を私が利用できるし、うちの子たちも私のそばにいると物凄くパワーアップするみたい。


「さてと、まともなベッドで寝られるのは今日でしばらくお預けだな」


「王国は暑くてな、シャワーがない方が辛いな……」


「トウジ君はきれい好きだもんねー。でもボクもシャワーは欲しいな……」


「BB商会の技術力を馬鹿にしちゃあかんでー、移動式簡易シャワーはテントでも出来るで!」


「ほんと!? アキちゃん!」


 思わず大きな声を出してしまう。

 山登りで何日も身体を拭くだけってのは勘弁してほしかったから本当に嬉しい。


「今回はきちーんと準備できたさかい、任せといてー!」


「ペッセルヘルン様、設営完了いたしました」


「ありがとさーん」


「これはすごい……」


 フユが感嘆の声をあげる。

 わずか数時間で簡易的な建物や防壁が作られて、小さな砦のようになっていた。


「ねぇ、アキこれって……」


「そうそう、何かのテレビ一緒に見てるときにやっとった、組み合わせるだけで建物になるやつやね、ホントに画期的な方法やったんやで」


 マジックボックス内に既に切り出した木材を入れておけば、あとは現地で組み合わせればあっという間にかなりしっかりした建物が完成する。

 お陰で快適な空間を確保できる。

 魔道具の良いところは電気とか必要じゃないとこだよねー、上水も下水も魔道具で処理。

 便利だわー。


「ソウ山は観光地でもあるので、未開の道というわけではないですが山に入れば険しい道程になります。

 マキは山登りの経験は?」


「うーん……中学生の頃……?」


「ほとんどなし……と……」


「大丈夫さー、ミーのお友達が手伝ってくれる! マミっちの回りにいるとすっごく気持ちがいいから皆喜んでサービスしてくれるよ!」


「精霊魔法の身体強化とボクの魔法使えばかなり行程を短縮できますね」


「オレのアーツも使えば、さらにだな」


「本当にマキの力は凄いな……」


「いや、皆が凄いだけだよー」


「やっぱり早く俺の嫁になってもらわないと!」


「ハルはいつまでもそんな馬鹿なことを、マキはオレの嫁になるんだ」


「はっはっは、何を言ってるんだい? マキっちはミーのワイフになるのさ!」


「みんないい加減にしろ、マキ君は私の妻になることは決定的に明らかだろ?」


「だ、だめだよトウジ! マキさんは、ぼ、ぼくのお嫁さんになってもらうんだから」


「皆いい加減にせんか、マキ殿が困っておるだろう。それに自分だってゴニョゴニョ」


「フユももっと積極的に言えばえーやんか、嫁にしたいーって。

 まあ、ウチはマキちゃんとお友達としてずっと側に居るだけやしー」


「ははは、皆、大好きだから喧嘩しないの」


 様々なタイプのイケメンが楽しそうにじゃれているのは眼福だなぁ……

 

「マキはどうなんだ!? 誰と結婚するんだ?」


 ハルからいきなり振られた。うーん……


「みんな家族だから今更結婚しなくてもいいじゃん。さーて、お風呂はいろっと!」


 結構大きなお風呂だってマキちゃんが言ってたから楽しみだなぁ~。

 なんか部屋出る時に全員が死んだ魚のような目をしてたけどどうしたんだろ?


 その日はいつも寝床に潜り込んでくるアキも来なかったし、なんか翌日全員お酒を飲みすぎて二日酔いだった。

 まったく、大切な戦いの前にちゃんとしないといけないのに悪い子達だ。

 そんなわけで、もう一日滞在してから霊峰へと挑むことになりました。 




 

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