第三十五話 対話と使命
まぶしい……
最後の留めに放った攻撃は閉鎖空間内の魔物を焼き払った。
光の奔流が世界を埋め尽くし、私の視界も埋め尽くした。
浮遊感。
私はどこかでフワフワと浮いている。
少しづつ重力を感じて、慌てて体を整える。
足元に触れる感覚を感じたら急速に重力がかかってきた。
体制を崩さないように地面と思しき場所に足をおろす。
真っ白い空間でどこが上か下か、壁か床かわかりにくい。
『お疲れさまでした。片桐 真紀さん』
真っ白な部屋に同化するような存在、でも、そこに在ることは強烈に理解できる。
存在感だけの存在と言えばいいのだろうか?
「私の世界の、神様ですか?」
『おお、よくわかりましたね』
この間、魔王と共に話した人と似た雰囲気がある。私の立場的に、前の世界の神と考えたけど当たっていた。
「勘です」
『いい勘していますね。さて、貴方のあちらの世界での勤めはこれで終わりました。
いろいろとありまして、あのエネルギーを利用してここに来てもらいました。ああ、他の皆さんはちゃんと脱出していますからご心配なく』
「よかった……」
『彼らは彼らの世界で、各々の役目を今後果たしていくでしょう。そして、本題はここからなのですが、真紀さん』
「は、はい」
なんか神様に名前を呼ばれるというのは恐れ多い……
『あなたをどうすればいいか悩んでいるのです……』
「え? 私? 地球に帰ってまた仕事の日々かなぁって……」
『私の世界はまったく魔法とか存在のない、そして私自身もほとんど手を入れない世界を構築しているんですね、極稀に今回もその一つですが私が介入することもあるのですが……
はっきり言って、真紀さんは私の世界の理から大きく逸脱した存在になってしまっているんですよ……』
「はぁ……」
『簡単に言えば、今の力を持ったまま返すしかないので、神みたいな存在になっちゃうんですよ』
「え、いや、それは困ります……」
『そういう謙虚な人で助かります……選択肢としては、地球から離れる前のデータというかその地点に貴方の魂からこの世界で起きたことの記憶を消して元に戻す。ただし、力自体は存在するので、何かのきっかけでどうなるかはわからないです。
もう一つは、あちらの世界にもどって、聖女として暮らしていく。まぁ貴方の力なら目立たずのんびり生きて行く事も可能でしょう。なんたって、なんでもあなたの思うがままですから。
この場合私の世界の真紀さんはバックアップから再現した。記憶や肉体が同じ別の魂が生活してくことになります。ちょっと地震で死にかけていますが、そこは何とか奇跡的なことでうまくやります』
なんかサラっととんでもないことを……
『そして、三つめは全くの異世界への転生となります。これは、貴方は貴方としていられなくなる可能性が高いのでお勧めはしません。全くの別の世界で新たな生を受けることになります。もちろん世界を救った貴方にはかなり優遇された転生になることは間違いありません。
皆で話し合った結果、この3つの選択肢から選んでもらおうかってことになりました。
あ、あと、魔王との話し合いはしっかりと続いていて、新たなルール作りなんかも前向きに動いてますよ。本当にありがとう』
「あの、そのハルとかナツとか皆は……どうなるんですか?」
『日本の皆さんは、残念ながら地震の影響で皆さん亡くなっています』
「え!?」
『超局所的な直下型地震によって、貴方の住んでいた町は壊滅的な被害が起こってしまっています。
その影響であの家にいたあなた以外の動物は……』
「そ、そんな……そ、そこはどうにかならないのですか?」
『……どうにでもなりますよ……』
「え?」
『いや、私はできませんけど、貴方なら出来るでしょうね。そうか、その手があるか……』
「えっと、どういう話かよく……」
『第四の選択肢です。貴方を地震が起こる寸前に戻して、貴方の能力で地震を止めてしまえばいいんですよ。そんな奇跡を起こせば貴方の中の魔力も枯渇するでしょう。私の世界の魔力はひっじょーーーーーうに薄いので、きっと死ぬまで奇跡を起こすほどには回復しませんよ。いいですね。私もあんな災害怒らないで済んでくれれば嬉しいですし。貴方も元に近い生活を送れます。おお、いいじゃないですかコレ。いかがですか?』
「……みんなを救えるのなら、私、やります!」
『記憶を消したら止められないので、ここでの思い出も残せますしね。
片桐 真紀さん、貴方をもとの世界に返します。その力で未曽有の災害を防いでください』
「わかりました。最後の奉仕、頑張ってきます」
『流石に私とあった記憶は残せませんが、地震を止めなければいけないという想いは残しておきます。
もう、会うこともないと思いますが、あなた方の世界、ずっと見守っていますよ』
「はい、これからもお天道様が見守ってくれてると心に刻んで生きていきます」
たぶん、神様は微笑んでくれた。
再び光に包まれて意識を失う寸前、そんなことを考えていた。
私の不思議な体験も、最後の仕事をこなせば終わりを迎えるんだ。
そして、その仕事は、必ず、どんなことがあっても成功させなければいけない。
薄れゆく意識の中で、強く、強く、強く決意を結んだ。




