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第三十二話 妄想と創造

「ハル」


「はい」


「ナツ」


「あいよ」


「アキ」


「はいな」


「トウジ」


「はっ」


「リッカ」


「は~い」


「フユ」


「ははっ」


「ナギ」


「は、はい!」


「皆の力を貸して。これが最後の戦い」


 私の妄想の塊、みんなに与えた武具に無数の魔方陣が浮かび上がる。

 常時展開型の強化魔法、どんなご都合主義でも構わない。

 私は、私と私の家族たちを全力で守り抜いて、魔王を倒す。


【さて、もういいかな? 一瞬で終わるなよ?】


 にやりと口角を上げて魔王が手をかざす。

 自然なその行動、ただそれだけで私たちに死が降り注ぐ。

 巨大な隕石や火の玉、氷の玉、雷にレーザー光線。なんでもござれの雨あられだ!


「防壁展開!!」


 ナギ、トウジとリッカがすべてを受け止める魔法障壁を展開する。


「行くよ!」


 ほぅと感心したような魔王にアキの光速の矢が迫る。私たち前衛も高速化した時間の中で刹那の時間で魔王へと斬りかかる。


【愉快、愉快】


 私たちの攻撃をまるで赤子の児戯に付き合う親のように素手や障壁で全て受け止める。

 なるほど、こりゃ無茶苦茶だ。

 しかも、この魔王に触れると分解されて食われてしまう。

 片っ端から私の妄想で再生しながら攻撃するしかない。


「厄介すぎる! すべての攻撃に侵食する魔王の力が乗ってる!」


 矛盾みたいなものだ、絶対に食べられない防御でも作ればいいんだろうけど……

 じょ、常識の壁が邪魔をする!!


「ここまで来て何を恥ずかしがってんだマキ! あと、心の声駄々洩れだかんな!!」


 分身体を作り出しながら激しく魔王に斬りかかっているナツから突っ込みを食らう。

 そう、もう躊躇は無用。

 どんな黒歴史をここで作っても、誰も後ろ指をさしたりしない!


「貴方が食らってきたたくさんの世界の無念を、私がすべて晴らして見せる!

 皆の想いを! 私の力であなたの中でよみがえらせる!!」


 そういう風に強く思い込めば! そうなる!

 信じるのよ、自分自身が強く信じれば、妄想の中の世界で王子様にちやほやされるゲームの主人公にだってなれるんだから!!


【小癪な真似を……】


 ほら、魔王だって私の妄想に乗ってきている!

 攻撃したときや攻撃を防御したときに()()()()()()()量も心なしか減ってきている。


「しっかし、相変わらずでたらめな攻撃を!」


 四方八方から致死性の攻撃が遠慮なく降り注ぐ、みんながいなかったら私なんて何回死んでるかわかったもんじゃない……


「今まで倒された勇者たちの想いを、今、よみがえらせる!!」


 いっぱいいたでしょ強かった人! 戦いたい人!! 力を貸してあげるから、甦れー!!


「おお、マキ殿の呼び声に応えて数多の英霊たちが!」


「マキの鎧と武器を携えて加勢に来てくれたぜ!」


「すごい、勇者の軍隊が出来上がっていく……」


 皆、説明ありがとう!

 光の戦士たちが私の力をどんどん強くしてくれる。


【フハハハハハ!! 愉快愉快!! これが、戦いか! 一方的な破壊ではない戦いというものか!!】


 めっちゃ受けてる!


 たった一人で無限に湧き出る勇者の軍勢と戦っている魔王はまるで無双ゲーの主人公みたいだ。

 難易度は修羅の上だけどね。

 敵の攻撃も不条理でめちゃくちゃだけど、こっちの攻撃だって数の暴力も加えて容赦しない!


「魔法使える皆! 協力してね!!」


 魔王の持つ多重重責型防御魔法防壁を突破するにはすべての防御壁を吹き飛ばすほどの超火力多層式魔法をぶち込むしかない。私が作り出す巨大な魔方陣に、魔法使い系勇者さんたちが大量の魔方陣を組み込んでいく。マンパワーを用いた魔法による数の暴力の誕生だ。


「くらえ、魔力大暴走エーテルスタンピード!!」


 すべての魔方陣をほんの一瞬のタイムラグをつけて一気に発動させる。そうすることによって魔王の幾重にも折り重なった魔法防御に再生の時間を与えずに食い破る。


【ぐおおお!! クハハハハハ痛みか、久しい感覚だ! 他社に身を滅ぼされる感覚!

 良いぞ!! もっとだ! もっとその感覚いたみを俺によこせぇ!!】


 そんなこと言うなら、その一瞬で復元させた障壁無くしてくださいよ魔王さん……

 

「マキに続けぇ!!」


 ハルの号令で勇者たちが一斉に必殺技を放つ、物理防御にも幾重の結界を展開している魔王。

 私の武器で強化された勇者たちの必殺技はまるでレーザーのように束になって魔王へと襲い掛かる。

 あふれ出す魔王の魔力によって作られた障壁は、勇者の攻撃のエネルギーによって可視化され次々と破壊され剥がれ落ちていく。


「まだまだぁ!!」


 さらに、ナツ、アキ、フユが剣劇を重ねる。

 

「我が呼び声にこたえ、神具よその姿を現せ」


 妄想力全開で伝説の武器を大量に呼び出す。

 一つ一つが神話級の威力を持つ武器を、一斉に魔王へと向かって放つ。

 幾千の光の奔流が魔王へと向かって伸びていく。

 神器たちはいともたやすく魔王の防壁を貫き、砕き、切り裂いていく。


【グハハハハハ!! 手が飛び、足が千切れる、私が、粉みじんになっていくぞ!】


 自分の滅びゆくさまを嬉しそうに実況する魔王、異常だなこの人……


【だが、俺の飢えはこんなものでは埋まらんぞ……聖女よ】


 いままで垂れ流していた禍々しい魔力が魔王の周囲にまとわりつく、千切れかけた足の隙間、完全にはじけ飛んだ腕に凝集され形を成していく。

 イケメン風な外観が膨れ上がり、皮膚が鱗のように変化し爪が生えて角が生える、まさに悪魔のように変貌する。

 

【さぁ、もっとだ、もっと俺に滅びを与えてくれ……】


 プレッシャーが一段階も二段階も上がる。

 

「変身しないラスボスなんているわけないわよね……皆! 何度変わっても、何度でも倒すまでよ!」


 別の世界の勇者たちも諦めたりなんかはしない、私だって、私の家族だって、誰一人諦めたりしないんだから!


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