第二十九話 急展開
『さぁ聖女よ伝説の地への扉を開くんだ』
伝説の地スワムホース、この世界のどこかの空を今も漂っているらしい。
ようやくみんなが目を覚ましたので最後の地へと進むことになる。
みんな自分自身に流れている力の強さに驚いている。
そして全員聖獣の守りを得ており、別の次元の存在になったと言ってもいい。
もちろん、私もだ。
「わかる……スワムホースよ我が前にその姿を現したまえ……」
私が願うと霊峰の空が割れる。
空が割れただけでも非常識極まりないのに、さらにそこから空飛ぶ島が現れるんだからもう常識はログアウトしたんだろう。
「これが……スワムホース……」
『そう、これが対魔王最終決戦兵器スワムホース。俺たちの世界の最後の切り札』
「最終?」
「決戦?」
「兵器?」
「世界の?」
「切り札?」
全員の頭上に『?』が出たのは間違いない。
それくらいわけのわからない話だったのだが、私にはわかってしまう。
確かにこの島は人工的な兵器だ。
「前の勇者や、神って人も大概な中二病患者みたいね……」
何を隠そう自分もだ。
「みんな、入るわよ」
すべてを理解した私は、艦のブリッジに皆を転送させる。
「まるで、宇宙船みたい……」
ナギちゃんの素直なコメントが私の心を洗い流す。
でも、ちょっとデザインが古い。
個人的には未来的デザインは今は薄暗いところで計器が光っているのではなくて、明るいブリッジで一体型コンソールみたいなタッチパネルだと思っている。
私の中二心を全開で船全体のデザインを変化させるイメージ。
「わわわ、光ってるぞ!」
周囲がまばゆい光を放って変化する。
動く空中庭園のような戦艦スワムホースは、流線型のボディ、白を基調とした優雅なデザインへと変化する。
帝国と共和国の戦いを描いた一大スペースオペラにおける帝国軍の旗艦のような美しいデザインだ。
「しゅ、趣味丸出しですねマキさん」
「なんか言った?」
「いえ、何でもありません」
「さて、みんな席について。操作方法は今送る」
皆の頭に新生スワムホースの取扱説明書を送る。
「……言ったら殴られるな」
「あら、ナツ言いたいことがあれば言ったら?」
「チート戦艦……痛っ!!」
「うるさい。魔王の周囲はともかく、魔王の正体がわかったらこれくらいのものは必要なの」
魔王の正体、それはこの世界を壊そうとするもの。
国じゃない、世界だ。
よく先代の勇者はそんなすさまじい規模の魔王を封印できたもんだ。
この世界に侵入してしまった魔王という名のウイルスはすべてを破壊消滅させて、自らの世界とした上でまた別の世界を探しに行くのだろう。
先代の勇者の命を懸けた攻撃は魔王に向けたものではなく、次元の境目に向けて使われた。
それにより生じたひずみに勇者と仲間たちで必死に押し込んだ。それが前回の戦い。
失われていく力を聖遺物として残して、長い時間をかけて聖遺物たちは力を蓄えていた。
そして、聖遺物達は別の世界から私と、私の大切な家族を探し当てた。
魔王を滅ぼす可能性のある力の持ち主を……
「想像力豊かと言えば言葉はいいけど、妄想漬けってことよねコレ……」
前任の勇者では想像もできなかった、世界を滅ぼすほどの魔王を倒す方法。
それをいともたやすく何種類も想像できる無限の可能性を秘めている人間。
それが私。そんなのいくらでもいそうだけど、この世界と結びつきが強くないといけない。
そこで目をつけられたのは家族たち。
家族たちの魂と私の魂を結び付けてより強大な妄想力を作り出す。
そして、その力でこの世界から魔王を滅ぼす。
『私たち聖獣は、この世界を破壊する小さなひずみを処理するために存在する』
『神、と呼べばいいのか、この世界を作りし父がそう定めた』
「この世界の人間には妄想を実現する力を与えなかった。
個人の妄想で世界が変わることを良しとしなかったのね神様は……」
外部の力、救世主的な存在が世界を救い、そして救世主は世界を救ったのちにはこの地を去る。
そして、この世界は静かに穏やかに人の営みを繰り返していく。
神は、そんな姿を温かく見守っていきたい……
「まったく、自分の業務を他人に擦り付けてるだけじゃない。
やるならやる。やらないならやらないではっきりすればいいのに」
自然に任せるなら任せる。
自分で手を少しでも出すのなら、全力でやればいいのに……
自然のままでとか言って、飼育しているという自然ではない状態の動物に治療をしない飼い主を思い起こして少し不機嫌になってしまった。
「なんにせよ、この世界にも人が住み生活しているんだから、意味もなくただこわすのを止める力がありながら見てるだけってのは性に合わないのよね」
「マキは救える命を見捨てられないもんな」
ハルの言う通り。家族たちとの生活だってその繰り返しによって出来上がった絆だ。
「スワムホース、世界の果て、魔王の領域へ出発します」
私は最後の戦いの覚悟を決めてそう命令する。
「了解、スワムホース発進します」
以外にもフユがノリノリで復唱してくる。案外みんな嫌いじゃないんじゃない。
すべてを理解した。
私がやるべきこと。
私の本当の力。
あとは、任せられた役割を最後まできっちりと演じること。
そして、職場へ帰るんだ!
「さぁ、皆。最後の戦いよ! 頑張っていきましょう!」
「ああ」「おう」「はいな」「了解だ」「オ~ケ~」「承知した」「は、はい!」
7人のイケメンたちと、私の最後の戦いが始まる。




