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第二十六話 暑い家寒い家にこの一台……

「コレが精霊によるエアコン……快適すぎる……」


 足元、少し離れたところではボコンボコンとマグマが煮立っているが、私達の周囲にはリッカが喚んでくれた精霊によって気温や湿度がコントロールされた空間に包まれている。

 快適だ。夏は熱く冬は寒かった我が家とは大違いだ。


「マキっちの魔力は極上の味わいだからはりきってくれてるんで~すよ~」


「そんなに美味しいのかなー魔力って食べたことない……」


「マキさんの魔力は本当に透明で一切のゆらぎもない、素晴らしい魔力です。

 どんな属性の魔法だろうと最大の威力を発揮できると思います!」


 めずらしくナギちゃんが熱くなってる。

 褒められるのは悪い気はしないよね。

 火山に変化してからは、ものすごい鱗に包まれたトカゲとか、燃えた岩で作られたゴーレムや、炎の形をした鳥とか見たこともない生物が襲い掛かってきた。

 殺してでもうばいとるアイスソードなどを具現化したりテンションも上がった。

 むしろ属性的に偏ってるのでカウンター属性を取りやすくて戦闘は楽になっている。


「それにしても、マキがこういう武器って思い込めば具現化するなんてチート級のチートだよな」


「思い込みが強くなれば強くなるなんて、マキのためにあるようなものじゃないか」


「ほんまに妄想娘やからなー」


 褒められてるんだよね?


「仕事辛くなるとすぐ妄想の世界に篭っちゃうからなーマキは!」


「しかも変に凝った世界観を作って……確か小説書いてたよね?」


「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!!! その話は今すぐやめるのだぞ!!」


 最高の黒歴史を掘り返す……いや、つい最近まで書いているんだから歴史と言うよりは時代の途中……

 

「聖女になった、なんて黒歴史よりはなんでもマシな気がするよなぁ……」


「なんでですかマキさん! 聖女になってこうやって出会えて僕は幸せです」


「ありがとーナギ。そうだよね。私は今幸せなんだよね!」


『ごめんなさいね、おしゃべりはそれくらい。邪悪な気配が降りてくるわ、気を付けて!』


 メーリアの忠告と同時に巨大な地震が私達を襲う。


「あぶない! 皆さん集まってください!」


 降り注ぐ岩石、波打つマグマ、全員が集まってナギが作る防御障壁の内部で揺れが落ち着くのを待つ。


【おあつらえ向きの場所にいてくれるじゃねーか聖女様】


 空から火の玉が落ちてくる。

 地面に落ちる寸前で止まって炎のマントが解けていく。

 中から男性が現れる。

 真っ赤な鎧に巨大な剣を背負っている。

 炎のように燃え上がる頭髪にギラギラと輝く真っ赤な瞳。


「赤い」


 少しバカっぽい。


【魔王さまの剣、焔帝レドスとは俺のことだ】


 マントを翻し大剣を前にポーズを決める。

 ああ、愛すべき馬鹿だな。


「一人でおいでとは少しオレ達を舐め過ぎじゃないか?」


「マキ殿には指一本触れさせん」


【俺が戦うと、敵も味方もなく回りにいる奴らは焼けちまう。

 10柱にでも入るやつじゃなければ一緒には戦えないし、本気の俺はめんどがられるからな……

 まぁ、いい、場所もおあつらえ向きだ……消し炭になりな……】


 絶対最後の決め台詞だよね!

 大剣を振るうと業火が襲い掛かってくる。


いてトリシューラ!」


 しまった! あいての古臭い熱さに当てられて思わず詠唱を……

 とにかく、私は手に持つ氷の槍、シヴァ神が持つと言われる三叉の槍を振るう。

 氷雪の嵐が豪炎とぶつかり合い激しい水蒸気を発生させている。

 

【ほう、雑魚ではないのか。嬉しい誤算だな……

 少しは運動させてくれよ】


 くっそ、こいつはなぜいちいち芝居がかった喋り方をするんだ。

 ついつい乗せられそうになるじゃないか!


「くっ、なんて凶悪な攻撃なの……」


「マキさん! 大丈夫ですか?」


「肉体的には……」


「ん?」


 魔法による火属性に対する防御、精霊の加護、さらには私の作り出した武器による属性的優位をもってしてもレドスとの戦闘はきつかった。きつかったんだよ。


【我が業火を持って灰燼と化せ! 消し炭となれ!】


【やるではないか、凡百の雑兵とは比べ物にならぬ、敵ながら珠玉の輝きを見せおる】


爆炎エクスプロシーバ獄炎フエゴデラプリシオン炮烙地獄ピストラインフェルノ!!】


「なんでスペイン語何だよ!!!」


 わざとやってるのかコイツは!

 私の黒歴史を馬鹿にしやがって~~!!


「トウジ! リッカ! ナギ! 力を貸して!」


 そう言いながら具現化した幾つもの氷雪系の武器を巨大な弓で雨のように撃ち込んでいく。

 それぞれが強力な効果を秘めているので着弾するとフィールドを凍てつかせていく。


【この程度、焔帝の歩みを止める「うるせーーー!!」


 トウジリッカナギの3人で作り上げた氷雪系の魔法陣を手早くいじる。

 絶対零度。

 理論上の温度の下限。

 全ての分子運動は停止し、すべてのものが凍りつく温度。

 限定空間内の分子運動を停止させ、瞬時に絶対零度を具現化させる。

 もちろん敵の対魔力なんかも影響するが、空間全体を含めて絶対零度に維持し続ければ、エネルギー量で上まわれば理論的には全ての物を凍りつかせるはずだ。

 私は、怒った。

 えたーなるふぉーすぶりざーど。相手は死ぬ。


「食らえ」


 あえて詠唱はしない。

 ここで「ルーイ・エリ・グレ・スコルビリー  汝 黒き魂にて 我を清めたもう おお冥王よ 至高なる者の強き集いの内に  我は死の凍嵐を身に纏いたり 今新たなる契りによる氷雪の力束ねん 絶対零凍破テスタメント」 とか唱えたいと思った自分を殴りたいと思った。


 キンッ


 驚くほど静かに魔法が発動する。

 レドスを中心としたエリアに魔法陣が浮かび上がり、暑苦しいバカを包み込む。

 何か叫んでいたけど容赦なく発動した。

 

「また、とんでもない魔法をマキ君が作った……な」


「水と氷の精霊が怖がってるよ、あそこは怖いって……」


「逆鱗に触れるほうが悪い」


 魔法陣が光の粒子となって消えていくと、半ドーム型の空間、空気中の水分でさえも一瞬で凍りついたその空間の時間が動き出す。

 パキン、一箇所の崩壊から全体に崩壊が広がっていく。

 崩れ去り、粒子となっていく()()


 何一つ、残るものはなかった。


「えっぐいな……」


「よっぽど気に入らんかったんやねアイツのこと……」


『あんなんでも魔王軍の中で個人の戦闘力はNo1って言われてるんだけどね』


「さぁ、忘れて進もう」


「……はい」


 その日から、皆が悪戯に私の黒歴史をいじってこなくなったのは幸いだった。









次のお話は年明けになると思います。


良いお年を

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