第7話 聖騎士
高魔力同士の戦い、この部屋全体を包む異様な雰囲気に飲み込まれ、当初の計画が吹き飛び、
ただ呆然と立ち尽くしてしまう。
「お前達!そこでなにしてる?!」
女の声で我に返る、女は悪魔からすこし距離を取ると体全体を魔力で包み込む、すると一瞬でライナーの前に姿を現した。俺達に背を向け、悪魔から絶対に目を離そうとはしない。
「死にたくなければ早くここから出ろ」
「は、入って来た階段は陸鮫が塞いでしまいました。出ようにも出れないのです。もしこの戦いが終わったあと、あの悪魔に追われればおしまいです。ならいっそ救援に向かい、共に戦った方がいいと思いました」
ライナーがテンパりながら早口で説明している。みんなこの人が自分達よりも遥かに強く、ランクも上であるとわかっている。
むしろわからないって方がおかしい。
純白の鎧に金色のラインが入った鎧、この人は騎士だ。それも騎士の中でも三本の指に入る程の。騎士は純白の鎧に銀のラインだが、その中でもずば抜けた才能を持つ選ばし者、勇者に最も近いとされる人が与えられる金のラインが入った鎧。
「私が負けると?お前いい度胸だな」
「い、いえ、そうゆう訳だでは」
「まぁ、いい、押されていたのは事実。ここに来るまでに半分以上の魔力を使ってしまったのが失態だ」
それを聞いたローンは空かさず女騎士の背中に手の平を当て、魔力を回復させる。
しかしローンの顔が険しくなると背中に触れていた手の平をそっと離す。
「すまないな、私の魔力は少し特殊でな、他の者の魔力による干渉を受けないだ」
「なら、尚更逃げるわけには行きません。僕達に気を使わなくていいです。自分達の命は自分達で守ります。ですから一緒に戦わせてください」
ローンが熱くなるのは珍しい。そんなローンを見ているとフツフツと心の奥底から何か熱いものが込み上げて来る。
こんなとこで死んでたまるか、みんなで王都に帰るだ!!
「私は王に使える聖騎士、ヒストリア・グランテだ。足だけは引っ張るなよ」
「はい!」
俺達があの悪魔に勝てる可能性があるとしたら最初の一撃だ。遥かに上の強敵と長時間戦うのは無謀だ。全てを賭けて最初の一撃で決めるしかない。
「ヒストリア様、あの悪魔の名はわかりますか?」
「わからない。名乗ろうとしないのだ。名が分かれば少しは戦いやすくなるんだがな」
悪魔の名がわかれば、どの魔法が有効か、急所はどこかなのかがわかり、戦いを有利に進めることができるが、名が分からないとこちらが不利になる。どんな魔法を使って来るかわからないし、最悪不死の類なら封印魔法以外意味がないから戦うだけ無駄だ。
「ヒストリア様、自分に少し考えが」
最初の一撃で終わらせるにはこれしかない。
「聞かせてくれ」
「もういいか?大分待ってやったぞ?お前ら人間が我に勝とうだなんて無理な話。たにを企てようとな」
「人間をあまり舐めるなよ悪魔」
ライナーが悪魔に中指を立て、大剣を力一杯握りしめると地を強く蹴りつけて悪魔に向かって走り出す、後に続いてカーミラ、ローン、ラフィタ、俺の順だ。
「真っ直ぐ突っ込んでくるとは愚かな」
悪魔は持っていた黒い槍をライナーの心臓目掛けて突き刺す。悪魔との距離はまだ30m程もある。しかし悪魔の槍に距離は関係なく、ライナーの心臓に伸びてくる。
その突きの速さは瞬きすることすら許さぬ速さ、しかし全魔力を見切りに回しているライナーは大剣で槍を弾く、その瞬間大剣を横に振り切ったライナーの脇からカーミラの光弾が放たれる。
「甘いな」
悪魔は何も持っていない右手の手の平に黒い球体を作ると、球体が棒状の黒い槍となり、カーミラの光弾が炸裂する前に切り裂く、切り裂かれた光弾の影が地面に2つ、ではなく3つ。
慌てて悪魔は天井を見上げるように上を見るとそこには光の魔石。カーミラが光弾を放ったと同時にラフィタが上空に光の魔石を放っていたのだ。
光の魔石が炸裂し、悪魔の目を一瞬奪う。
その際にも距離を縮めていたライナーが悪魔の懐に入り、大剣を横に振りかぶると同時、全魔力使い果たしたライナーにローンの魔復弾が背中に命中する。
「爆炎斬!!」
大剣は悪魔の脇腹を捉え、横に吹き飛ばす。
やはりDランクのスキルでは悪魔を切れず、大剣で思い切り横に吹き飛ばしただけだ。
吹き飛ばされて倒れ込む悪魔に視界がもどる。
視界が戻り最初に目に入ったのは自らが倒れている地面。
その地面は青白く輝いている。魔法陣だ。
ラフィタの全魔力を注ぎ込んだサンダーボルト。
悪魔は直ぐに体制を整えるの後ろに飛び魔法陣から逃げる。
「サンダーボルト」
ラフィタの最大火力で放ったサンダーボルトは容易に交わされるがそれで構わない。
だれも居なくなった魔法陣に1人の影。
ヒストリアだ。持っていた剣でサンダーボルトを受け止めたヒストリアの剣は自らの魔力とラフィタの全魔力をのせ、光輝く。
その輝きは目で直視できぬ程に眩しく、剣と呼ぶよりビームサーベルと呼んだ方がしっくりくる。
ヒストリアは自らも魔力で包むと悪魔の後ろに一瞬で移動し剣を振りかざす。
悪魔は片方の槍で防ごうとするがヒストリアの剣に槍と腕ごと斬り落とされ、首元から腰にかけて斜めに切り裂かれた。
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