第6話 前進
地中に埋まった遺跡の通路は天井まで3メートル程あり、みんなで横一列になって進んでも余裕な程に広い。通路の広さからも遺跡の大きさが伺える。
今まで調査が及んでいない遺跡などを調査した報告書では、太古の魔道書や、武器、魔具などが見つかっている。もちろん発見者の所有物となり、スキルとは別に習得できる魔法もあれば、魔力又は魔法を宿した武器も手に入る。そういった物を得た者は必然的に強くなるのはいうまでもないだろう。
それにしても肌寒いな、俺でも肌寒いって感じるならラフィタはもっとだろう。
ファッション性を重視したラフィタの軽鎧は上は肘の辺りまでしかなく胸元は少しはだけている、布と鉄で出来たミニスカート、膝上までの鉄で出来たブーツ。
寒くて当たり前だ、軽鎧を選ぶ際に散々言ったのに。
「ラフィタ?寒いのか?」
「え?全然寒くないよ!大丈夫大丈夫」
「唇震えてるけど?」
「震えてません、勘違いですー」
「ラフィタも、うちみたいなタイトなスカートにすればいんじゃない?」
カーミラが履いているのはくるぶし付近まで丈のあるスカートだ、内側は布製だが、外側には柔らかい金属製の布地が貼られている。上も露出部分が少なく、手首まである軽鎧を着ていてる。
「長いと動きにくそうだもん」
「慣れればそんなことないわよ?」
「じゃ王都に戻ったら一緒に買い物に行きましょ」
「いいわね、じゃこっから絶対無事に脱出しないとね」
先頭を歩いていたライナーがかがみ込んで何かを手にしている。
「盛り上がってるとこ悪いけどこれ見てくれ」
ライナーが手にしてるのは松明だ。
それもありと新しく、まだほんのりと灰になった部分が暖かい。
「俺たち以外にも誰かこの遺跡にいるのか?」
「松明を使ってる辺りからすると人間の可能性は高いわね、けど利巧な悪魔の罠って可能性もなくわないわ」
確かにそうだ、驚くことにこの遺跡は魔石の原石でできているため、地中内でも微かに明るい。だが松明が使ってもっと周りを見やすくするのが普通だ、しかし松明に火を灯せばここにいますよって言っているようなものだ。
ボッとゆう何かが燃える音が聞こえ振り返ってみるとライナーが松明に火を灯していた。
「おいライナーなにしてんだよ!」
いきなり怒鳴られたライナーは何が?って感じの顔をしてやがる。
「なにって灯りが必要だろ?」
「それじゃ悪魔達に俺達の居場所を教えるようなものじゃないか」
「いや、よく考えてみろよ、灯りがあろうと無かろうと奴らは襲ってくると思うぞ?こんな薄暗いとこにいる悪魔が目が悪いなんて考えられないだろ、絶対目がいいに決まってるし、あるいは音で居場所を判断する奴かもしれない。そーなれば悪魔達からは俺らがよく見えるが、灯りがない俺らは数十m先しか見えない視界と、五感を頼りに戦うしかない。どうせ戦うなら灯りは絶対に必須だと俺は考えた」
言われてみればライナーの言う通りだ、ライナーとの言い合いでグーの音も出ないのは初めてだ。
「どうしたのハルト?いつものハルトらしくないよ?これ飲んで落ち着こう?」
心配そうな顔をしたラフィタが残り少ない自分の水筒を渡してきた。
「残り少ないしラフィタが飲んで。なんだかんだでこのアクシデントに一番ビビってるのは俺かもしれないな」
ハハって笑ってみたが全然笑えない。
「一番も二番もないよ、僕だってすごい怖いしビビってる、けど僕らは1人じゃない。みんながいる、このパーティのみんなが居れば、どんな悪魔とだって立ち向かっていける様な気持ちになれるよ」
「あらローン、珍しく良いこというじゃん」
「え、ん、あ、ありがとう」
「せっかくかっこいい事言ったのに最後の最後で女々しくなるなよ。まぁ、あれだハルト、ポジティブにやってこうぜ」
「ありがとうみんな。ライナー怒鳴って悪かったな」
「あ?いちいちそんな事気にしてんじゃねーよ。ほら、先に進むぞ」
再び陣形を整え、歩き出す。
ただただひたすらに伸びた直線を歩く。
歩いていると突然通路が二手に別れている。
右側も左側も、どちらの通路も先が見えずに特に荒れた様子もない。
こうゆう時は匂いで判断するのが一番だ。
何かが腐った臭いや、悪魔特有の臭いを嗅ぎ分けるんだ。
「どう?何か臭う?」
「いや、どっちもほこり臭いだけだな、ローン、索敵してもらっていい?」
「わかった、ちょっと待ってね」
目を閉じて魔力を杖の先に集中させる。
魔法を使う感覚は魔法によって異なるため、索敵がどんな感じで伝わるのか検討もつかない。
「何かいる!けど、、人間だ。あと、悪魔か?どちらも高魔力すぎてここからじゃはっきりとわからない」
「人間と悪魔?戦ってるのか?」
「そうだと思う。こんな魔力のぶつかり合い見た事ないよ、索敵で見える筈の魔力が歪んでる」
目を見開いてローンが右側の通路を指差し、「行くならこっち側だよ、どうする?」
「加勢しに行こう、もし戦っている人間が負けたとして、俺達が出口をすぐに見つけられなかったら、そのうち鉢合わせる可能性は高い、協力して倒しておいた方が出口を見つけやすいし、その人が出口を知ってるかもしれない」
その人が味方かはわからないが、悪魔に出口を聞くよりか遥かにマシだ。
みんなに合意を求めると即座に返答がかえってきた、みんな同じ事を考えていたようだ。
「ライナーとカーミラは状況を見て動いてくれ、ローンとラフィタは後方援護を頼む。それとローンは到着したらすぐに戦っているだろう人に魔復弾を頼む、急いで向かうぞ」
陣形のまま右側の通路に向かい走って向かう。
右側の通路はさっきまでの通路と違って道幅が倍ほど広く造られていて、一定間隔に人程の大きさに造られた鳥の石像が建っている。
暗がりで見ると何とも不気味な石像だ。
なんのためにこの遺跡が造られたのか想像もつかないな。
「灯だ、もうすぐ通路を抜けるぞ!」
ライナーの声で体に緊張と恐怖が産まれる。
通路の先の部屋から魔力をピリピリと感じ、今まで感じたことのない程の圧力、全力で走っているのに全然進んでる感じがしない、夢の中で走っている様な気分だ。それにまだ部屋にも入っていないのに全身から汗が流れでてきて止まらない。顔は見えないけどきったみんな歯を食いしばって一歩一歩進んでいるに違いない。
ただそこにいるってだけで押し潰されそうだ。
通路を抜けて部屋に入るとそこはとてつもなく広く、天井が高い。周りの壁には松明が置かれ、部屋を照らしている。
そしてその部屋の真ん中に女と男。
女は純白の鎧に身を包み、ラフィタの髪色よりワントーン暗いくらいの金色の長髪を後ろで1つに結び、手にしている剣はバチバチとここまで聞こえる程の魔力が込められ、青白く光を放っている。
白い鎧の女と殺りあっている男は、小麦色の肌にパーマがかかった黒髪、上半身は何も身につけておらず、黒いズボンを履いている。
手にしているのは真っ黒な一本の棒状の槍、
そしてその瞳の奥に宿した邪悪な魔力は全てを飲み干してしまう程の漆黒。
俺達に気づき、男が一瞬こちらに目を向ける、体が一瞬凍りついた様な間隔に襲われ、動きが止まる。俺だけではなくみんなが一瞬止まった様に見えた。
この部屋に入った事を、この遺跡に来てしまった事を、今となっては後悔してももう遅い。
この悪魔との出会いが俺の全てを狂わせる始まりなのだから。
更新遅くなってしまいすいません
読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします