第5話 遺跡②
口いっぱいに砂の味がする。何段もある階段を砂と一緒に一気に流れ落ちたせいか体のあちこちが痛い。
「ハルト!大丈夫かい?他のみんなはもう治癒をしたから大丈夫だ。安心してくれ、あとはハルトだけだがら、ひとまずちょっと移動するよ」
「ありがとうローン」
ローンに肩を抱かれながら立ち上がり、周りを見渡すと、砂を失くして体をバタつかせてる陸鮫が数体近くに倒れている。
「ここは通路みたいだね、かなり奥まで続いてるみたいだよ」
ローンの話に耳を傾けながら後ろを振り返る、階段は螺旋状になっていたみたいだ、出口は砂で8割くらい塞がれ、砂時計の様に上から少しずつ砂が流れ落ちてきている。
前に向き直ると、砂が完全に途切れた辺りにみんなが座り込み、頭を抱えていた。
こちらに気づいたラフィタが心配そうな顔をして駆け寄ってくると、
「ハルト!大丈夫?大きな怪我してない?」
「あぁ、頭を打ったくらいだし、なんとか大丈夫だよ」
「よかった。ローンはやく治癒してあげて」
「そんな慌てないでくれ、今やるから」
ローンが右手をかざすと緑色の魔法陣が展開され、ゆっくりと回転しだす。
暖かく優しい魔力を感じる。
攻撃魔法が使えない代わりに、治癒魔法を毎日特訓してきたローンの魔法は誰よりもはやく、そして優しく傷を癒してくれる。
「ありがとうローン、かなりよくなったよ」
「これが僕の役目だからね、それで?この後どうする?」
「そうだね、階段は完全に砂で塞がれてるし、上も砂で遺跡が埋もれてるかもしれない。そうなったら救助隊がここに気づく可能性は低い、かと言って他の出口を探すって考えたんだけど、地中に埋まってるこの遺跡に、そこの階段以外で地上に繋がる出口なんてあるのかなって思ったんだ。危険だけど、時間をおいてそこの階段の砂を少しずつ乗り除き、外に這い上がるのが一番いいんじゃないかな?」
みんながそれぞれ話を聞き終え、何かを考えている。
そんな中、一番最初に口を開いたのはラフィタだ。
「いつ陸鮫が襲ってくるかわからないけど、それが一番いいと私は思う」
ラフィタはいつも俺の意見を尊重してくれる。こんな緊急事態だし、ほかのみんな意見を聞かなくては何も決めれない。無責任に階段の砂を取り除いて、また砂雪崩れが起きたら今度こそ出られなくなるリスクもある。
「それもありだが、俺は先に進むのもありだと思う。本当に出口がないのかわからないし、そこの階段みたいに他の地上に繋がる階段があるかもしれない。もしあるなら崩れかけのそこの階段を登るよりはリスクが少ない。陸鮫もいない可能性があるしな」
やはりライナーは進むことを考えているみたいだ、冒険者ならだれだって未だだれも踏み入っていない遺跡があるって聞けば、好奇心に負けて飛び込むだろう。
だがここは普通の遺跡じゃない。悪魔がわざわざ砂を掘ってまで見つけ出した遺跡だ。
進むのはリスクが高過ぎると思うんだが。
「僕は任せるよ、こうなった以上、やれることをするだけだ。それで判断を間違えたからって誰かを責めるなんてありえない」
「そうね、うちもローンと同じ意見かしら」
「そっか、じゃ少しだけ調査をして、出口が無さそうな場合場合ここに戻ってこよう」
みんね頷くと、自然と陣形を取り、暗くどこまで続くかわからない通路を進み始めた。
読んでいただきたきありがとうございます。
今回は大分短くなりましたが、次話が長くなりそうなので一旦区切りました。
これからもよろしくお願いします^o^