第15話 グリュンの街
街があるだろう門の前についていた。
辿り着くまでに数体の悪魔に遭遇していたが、パーパシーのスキル【スコトススキアー】で姿を眩ませていたために襲われずに済んだ。
パーパシーの話によれば【スコトススキアー】と【転音】を組み合わせれば絶対に見つかる事はないと言っていた。【転音】は術者が出す音、例えば足音や喋り声、物音といった全ての音を任意の場所に転移させるスキル。相手の視覚から消え、音を背後から出せば相手は姿を消して後ろに回り込んだと思うだろう。しかし実際には移動していない。最高に暗殺向きのスキルだ。
「無事着きましたね。このまま門の下まで進んでください。」
言われた通りにブルに速度落とさせ、ゆっくりと門に近いていく。
真っ黒な外壁の門に魔力が通っているのだろう、たまに青く門が光り、黒印の模様が浮かび上がっている。10メートル程の高さがある強固な門だ。
門の真下までくるとパーパシーは腕につけたブレスレットを門に向けて掲げる。
すると門の青い光が一直線にブレスレットに向けられる。
青い光が消えたかと思うと門が音を立てて開かれる。
「ようこそグリュンの街へ。どうぞお入り下さい。」
開かれた門をくぐると直線に伸びた大通り、両サイドは高い建物が奥まで続いている。
大通りを進むと大きな噴水がある大広場に出た。広場からは道が三本に分かれていて、上から見れば十字路の様になっていた。
噴水近くでは多くの若い男女が楽しそうに談笑している。それを余所に若い男や女が1人で広場の端や、噴水の近くでなにやら祈りを捧げている。
「ここは良くああして恋人が多く集まる場になっています。その他の人達は、、、あ!もうすぐ始まりますね、せっかくなので見ていきましょうか。」
パーパシーが噴水を指差したその時、噴水が青く光り出し、噴き出している水がサファイアの様に輝きだす。
そして噴き出しす水が一斉に街中に飛び散り、建物や地面に吸い込まれて行く。
そして数分に一度輝き、街中を青く輝かせている。
「綺麗だ、、、。」
壁の中でもイルミネーションや夜景といったイベントやスポットはいくつもあるがそのどれをも上回って綺麗だ。
「あの光は魔力そのものです。夜になると街中に行き渡り第一位階の悪魔、神の魔力を帯びた人間達からの侵入を防ぐための防衛システムです。悪魔や神の魔力を帯びた人間があの光に触れれば周囲から魔力の矢が無数に襲いかかるようになっています。そして恋人達が多かったのは魔力の噴水地である噴水が一番綺麗に見えるからです。」
「確かに綺麗だった。他の人達はなにしてるんだ?祈りを捧げてるしただ見に来た訳じゃなさそうだけど。」
「はい。あれは力を授かるためです。魔力の光は基本的には建物や地面、壁などに吸収されて行きます。しかし極稀に人に落ちることがあるのです。その者は魔力が増加され、元々持っている自らの魔力による固有スキルを得る事が出来ます。そのスキルを得た者は勇者様の先鋭部隊に入る事が出来るのです。ですのでああして光が自らに落ちる様に祈っているのです。」
「そうなのか、ん?ちょっと待って、元々持っている自らの魔力?」
魔力は神や魔神から授かるものだ、自らの元々の魔力ってなんだ?
「え?はい。誰しも産まれながらに持っていますよ??」
これ以上何でもかんでも質問するとボロが出そうだ。
「ああ、そうだったな、すまない。」
「いえ、大丈夫ですよ。それでは先へいきましょうか。この街の長が待っています。」
広場を真っ直ぐ抜けると沢山の人達で賑わっている。ここはこの街の繁華街といったところか?流石にブルもこれほど人が賑わっていたら落ち着かないと思ったが案外大人しくしている。たまに俺の顔を覗き込んで来る、はやくここを抜けたいらしい。
ここの人達もブルが悪魔の馬である事に気付いてはいるが街を照らす青き光がブルを無害と判断して攻撃して来ないことからあまり目向きもしない。
繁華街を歩いていると呑み屋なのか顔を赤らめた男女が外のテラス席で賑わっている。
一瞬王都での行きつけの呑み屋のミミちゃん屋を思い出す。みんなは無事王都にたどり着いたかな?またみんなで呑みたいな。
繁華街を抜けると急に建物が少なくなり、ただ広い野原が続いている。
「ここは訓練所です。みなここで毎日訓練所を受けています。グリュンの民の7割は戦士です。残りの2割がお店の経営、1割が貴族になります。ですのでこれ程広い訓練所が必要となるのです。」
「この街を攻め落とすのには相当骨が折れそうだ。」
「はい!ここを抜ければ宮殿に着きます。」
訓練所を抜けると半壊した宮殿が見えて来た。
昔ここで激しい戦闘があった事を物語っている。崩れかけた部分は今でも工事中なのか足場とブルーシートで覆われている。
宮殿の門までくると扉が開き一人の老人が立っている。
「ようこそお越しくださいました勇者様。私目はこの街の長で、元ローマ帝国第三皇帝、ラウド・ハンニバルでございます。」
そう言うと老人はニヤリと笑い頭を下げた。
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