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Dark prince  作者: 赤月
第1章 堕ちた勇者
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第12話 黒印


疲れた。もう森に入ってから何時間が過ぎたんだ?体感時間的には3、4時間か?

まぁあてにはならないか、ずっと夜の世界、まだ朝日が昇ってくれれば外に出てからどれだけ経つかわかるのに。

皆んなはもう迎えと合流できたのかな?

ローンはきっとヒストリア様、、、いや、ヒストリアにしばかれてるのかな?

約束はしたけど、次いつ皆んなと会えるかな?

さっきからため息ばかりだ。

今後のことを考えなくちゃ。

とりあえずどこに迎えばいいんだろう?

地形がまったくわからないし食料も尽き、水もあと一口ほどか。最悪だな。


「なぁブル、お前この辺の事についてなんかしってるか?まぁ返ってくるわけないか。」

馬であるブルが返答しないのは当たり前だ。

それにしても静かな森だ、こうも静かだと不安になる。まぁ外のこの森で鳥の鳴き声でも聞こえるもんならどんな鳥か怖いけど。


「止まってくれ、少し休もう。」

って言っても悪魔であるブルには疲れるといった概念がない、ただ少し横になりたい。

ブルを横にさせると腹部を枕が割とにして横になる。

まずは第一位階以上の知恵のある悪魔を支配して手駒にしよう。第二位階なら喋れるだろうから情報も手に入る。一石二鳥ってやつだ。


「ブル、少し寝るから、何か気配があったら起こしてくれ。」

軽くブルが頭を下げたのを確認して目を閉じた。




真っ暗な空間に1人、辺りを見渡すと眩しく光る誰かが立っていた。

その誰かが叫んでいる。誰かを呼んでいるのか?

眩しく、ボンヤリとしていてその姿がハッキリ見えない、けど、懐かしい様な、とても好きな声だ。

わかっている、知っているはずなのに思い出せない。君は誰?泣いているの?俺を読んでいるの?俺?俺は、、、誰だ?俺の名前は、、、。

思い出せない。

《思い出す必要はない》

誰だ?

振り返ると真っ暗な空間よりもさらに暗く、黒い何かがそこにはあった。見えているのに認識できない何か。

誰、、、いや、なんだ?

《俺はお前、お前は俺。俺らに過去や思い出などいらない》

何を言ってるのかまったく理解できない。

《遅かれ早かれ、こうなる運命だったんだよ、問題なのはお前はまだ自分が何者なのか理解していない。》

何者?俺は、、、ダメだ、名前が出て来ない。

後ろの眩しく光る誰かが手を差し伸べてくる。

掴みたい、その手を引き寄せ、抱きしめたい。

とても愛おしい。

《触れてはいけない。お前は立ち止まり、振り返ることはもう許されない。前を見て、暗くどこまで続くかわからない道を歩まなければならない。その先にお前の求める世界があるのだからな。》


俺の求める世界?みんなが笑って幸せに過ごせる世界。誰も傷つかず、悪魔と殺し合う必要がない世界。武器ではなく、愛する人の手を掴んで誰に脅かされる事もない平和な世界だ。


《その世界に辿り着く為にお前はしなければならない事があるはずだ。お前にしかできない事が、例えそれが恨まれ、孤独になる道だとしても、そう、、、全ては、、、》


何かに頭を小突かれて目がさめる。

なんだったんだ今の、夢とは少し違う感覚、ん?ブル?

ブルは頭を小突いて起こした後、また目を閉じて寝たふりを続けている。

何か、、、いる!

再び目を閉じて全神経を耳に集中させ、辺りの音に神経を研ぎ澄ませる。

微かに聞こえる草の揺れる音、そして足音。

数は、、、一匹か。こちらの様子を伺っているとこを見ると第一位階ではなさそうだ。第二位階ならありがたいけど、三位階以上となると厳しいな。しかしその可能性は低い、二位階以上の悪魔は自分の力に溺れているやつが多いって聞いたことがある、そんな奴らが寝ている相手の様子を伺うなんて考えにくい。


少しずつ近づいてくる。

腰に差した短剣をすぐ取れる様にし、足音に意識を集中させる。

もう少し、もう少し近くに、、、ギィィ。

足音が一瞬止まったと思ったら矢を弓で引く音が聞こえた。

「しまっっ!!ブル!!」


勢いよく放たれた矢は俺の目の前まで飛んでくる。しかしブルが間に割って入り、ブルの腹部に刺さる。

さすが悪魔の馬だ。寝ている状態から即座に立って飛び込んでくるなんて普通の馬なら無理だ。関節が邪魔をする。しかし悪魔の馬なら関節が外れる痛みくらいどおって事ない。


矢を放った者は即座に方向を変え、全力で逃げ始めた。

逃がすわけないだろ、せっかくの情報を聞き出せるチャンスだ。捕まえて絶対に支配してやる。

「ブル追うぞ!」

外れた関節戻すとブルに跨り全力疾走で後を追う。

見えた!割と小柄だな。赤いコートを着ている為に後ろからではハッキリとどんな奴なのかわからない。


横にブルを付けるとブルから飛び降り、赤いコートの奴の上に馬乗りになり、短剣を首元に当てる。

「残念だが、お前を支配、、、女?」

女だ!しかも人間の女だ!


「は、離せ!この悪魔!境界線を無視した貴方が悪い!!」

なんだこいつ?境界線?そんなものどこにあった?


「待て待て、俺は悪魔じゃない!人間だ!」

「嘘だ!その証拠にあの馬、悪魔じゃないか、悪魔の馬に乗っておいて人間だなんて、人の皮を被った悪魔め!」


「いや、あの馬は、、、?!この首の痣。黒印か?」

「は、な、せー!」

暴れまくる女に右腕の黒印を見せる。

「この黒印、お前の首の奴と同じだろ?仲間だ、俺は仲間だ!」

何故女にも同じ黒印があるのかはわからない。けどどう見ても一緒だ。ならこう言うしかない。


「な、、、?!?!?!?!」

一瞬世界が静止したかのように目を見開いて固まる女。するといきなり目から涙を流しながら大人しくなる。

「申し訳ございません、気づかなかったとはいえ、この様なお姿を、ましてやお命まで狙って、どうか、どうか私の命で償わせてください!!」


「は?いきなりなに?ちょっと待って、なに言ってるの?」

女から退くとすぐに女は片膝を地につけ、祈りを捧げる様に崇めてくる。

「どうか、私だけのお命でお怒りをお沈めください!!」

なんなんだこの展開、本当に頭がおかしくなりそうだ。


「いや、命とかいいよそうゆうの、てかいきなりなに?どうしたの?」


女はキョトンとした顔で見つめてくる。そしてハッと何かに気づいたかと思うと勢いよく喋り出す。

「あ、貴方様はお記憶がないのですか?それとも何かの衝撃で一時的に、、、。その右手の黒印、それは我々グリュンの民の希望、勇者の証です!」

読んでいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします(^ω^)

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