第11話 別たれた道
ジャンヌと幼馴染?
何言ってんだ?
「それは、、、どうゆう、、、」
「あーもこーもない。そのままの意味だ、、、そうか。お前達は知らないのか」
ヒストリア様は腕を組むと顎に手を当て、何かを考え始めた。
「そうだな、なにから話すか、まず私はもう200年程生きている。まぁそう驚くな、Aランクの騎士になるには悪魔を殺し、神に貢献することによって新たなスキルを授かる。その際に我々人間の細胞も活性化するんだ。活性化された細胞は死滅せず、永遠に細胞分裂を繰り返し増え続ける。それによって騎士以上の者は人間では通常ありえぬ身体能力を引き出せる。勇者はその全ての細胞が極限まで高められているために、歳を取らない。聖騎士である私もだ。勇者みたいにまったく歳を取らないって訳ではないが、私の体内年齢は28だ。」
は?、、、まじ?!!
細胞が活性化?そんな話初めてきいたぞ!
「この事は本来ならCランクからBランクに上がるときに伝えられる。戦わなければ永遠に生きられる勇者、それは不老不死とも言える。Cランクの未熟な者達がそれに憧れ、悪魔を殺そうとむきになれば自ずと死者は増えるだろう。それを防ぐためにCランクの者には伝えないきまりなんだ。Bランクになれば悪魔の強さ、殺せば誰でもAランク、勇者になれる訳でもない事を自分で経験し、理解する。そういう趣旨があってのことだ。」
戦わなければ永遠に生きていける?
不老不死?勇者は戦死以外に死を選べないってことか。
だが夢のある話だ。
「それでは、、、ヒストリア様とジャンヌ様は、、、」
カーミラが混乱し、停止しそうな脳をフル回転させてヒストリア様がジャンヌ・ダルクに抱いている憎しみとも取れる感情があるのを思い出す。
「様などつけないくていい。奴は悪魔に落ちた汚れた聖女。我々の敵だ!私と奴の間に何があったかは話す気は無い。もういいだろ、迎えがもう着いてるかもしれん、行くぞ」
ヒストリア様を見る目が少し変わったとゆうか、何とゆうか、不思議な気分だ。
200年も生きている、、、か。
一体どうゆう気分なのだろうか。
黙って黙々と歩いているとライナーが近づいてくるとヒストリア様に聞こえないように耳元で話し始めた。
「ハルト、こらからどうするんだ?王都に戻ったらお前どうなるかわからないんだぞ?逃げるって言っても壁の内側じゃ行く場所は限られるし、他の国へのルートも抑えられるし、、、最悪殺させるかもしれないんだぞ?」
そんなこと言われてもどうしたらいいのかわからない。だがこのままではダメだってことはわかる。しかしヒストリア様から逃げれる気がしない。
「わからない。けど、、、迎えを頼んでる場所まであと1日ある。それまでになにかいい案を考えてみるよ」
そういうとライナーは何か言いたげな顔をして後ろについた。
王都に戻り、俺が悪魔の手先ではないことを証明するには何が必要だ?手先ではありませんって言い続けるか?それでは絶対にダメだ、王都では悪魔の手先である疑いがある者に対しての扱いは相当酷い。聞く耳を持たず、情報を聞き出せないと判断すれば即座に殺す。
弁解の機会すら与えられないのは目に見えている。王都に着き次第隙を見て逃げてもすぐに足がつく。他の国に行くにしても船や列車を使う。それ以前にすぐにどの国にも情報が行き渡る。どこにもにげれないじゃないか、、、。
王都に着く前にどうにかしなくちゃん完全に詰んでしまう。
「ヒ、ヒストリア様!お、俺は本当に悪魔の手先ではありません!信じてください!!」
もうこれしかない。
王都に着く前にヒストリア様を説得する以外方法はない!
「うるさいやつだ!それは王都に着いてからだと言っただろう!喉を裂けば少しは静かになるか?」
剣を抜くと少しずつこちらに近づいてくる、本気だ。この人は本気でやる気だ。
「待ってください!ハルトは本当に手先なんかではありません。私は小さい時からハルトを知っています。ハルトは優しくて、人を傷つけるのも、嘘をつくのも嫌いで、なにより私達の仲間です!」
ラフィタがヒストリア様に向かい杖を向けると杖の先に魔力を貯め始めた。
「そうだな!ハルトが悪魔の手先なんてありえねー!」
「そうね!」
「僕もそう思うよ」
そう言ってライナーは大剣を、カーミラは銃を、ローンは魔石を握りしめ、ヒストリア様に敵意を剥き出しにする。
「お前達、聖騎士である私に武器を向ける意味がわかっているのか?いや、まてよ。ハルト・ポートガス、貴様のスキルは支配だったな。パーティの皆にも手を出していたか。既にそこまで堕ちていたとは、もう手遅れだ。貴様は今ここで殺す!」
「やめろーー!!」
ライナーがヒストリア様に向けて大剣を本気で振り下ろす。
しかし一瞬ヒストリア様が光ったように見えると、ライナーの背後を取り、背中に手のひらを付けるとバチっと音が鳴る。
「ガッ」っという声をあげて体をピクピクさせて倒れこむライナー、それを見たカーミラがヒストリア様の足を狙って弾丸を放つが光の速度で動くヒストリア様に当たるはずもなく、ライナーと同様に気を失わせられる。
「どうする?お前達も私に刃向かうか?操られていて自分ではどうしようもないのならこの2人同様気を失わせてやろうか?」
剣の先で倒れているライナーとカーミラを指す。
「私達は操られてなんかいない!どうしてわかろうとしないのですか?どうして聞く耳を持たないのですか?!」
「わかっていないのはお前達の方だ!手先だと疑われ、だが仲間だからと信じた結果、国ひとつが滅び、罪のない民が、子供達が悪魔供に食い散らかされる様を、何もできずただひたすら泣いて謝り続ける!そんなの私はもう絶対に嫌だ!!あんな思いをするくらいなら、、、疑わしきは罰せよ!!!」
ダメだ、間に合わない。腰に刺した短剣を抜くよりも速くヒストリア様の剣が俺の頭上に振り上げられる。
だが振り上げた剣が俺の目の前まで振り下ろされた時、振り下ろさせた剣は俺には当たらず、何か飛んできたものを斬り落とした。
矢?
どこから?だれが?
「ちっ!!こんな時に鬱陶しい奴らだ!!」
ヒストリア様の視線を追って目をやると、空間の歪みから第二位階の悪魔の軍がこちらに向かい進行してきていた。
「そこで待っていろ、すぐに片付けてお前を殺してやる、逃げるなら逃げるがいい、貴様が稲妻より速く逃げれるならな!!」
そして一瞬光ったと思ったら悪魔の軍のど真ん中に稲妻が落ちた。
「ハルト!!」
走ってきたラフィタに強く、とても強く抱きしめられた。
「大丈夫!私が、、、私がなんとかするから!だから、、、だから、、、」
「ハルト?よく聞くんだ」
ラフィタの言葉を遮ってローンがいつもより低いトーンで、真剣な顔つきで口を開く。
「君が王都に帰還すれば多分、いや確実に処刑され、殺されるだろう。だから逃げるんだ!」
「でも、どこへ?行くところなんてない!この外の世界にいればいずれ悪魔に殺される。それどころかあの女から逃げれない!」
「いいかい?僕は一度聞いたことがある。外の世界で生きる人間達がいると、けどその人間達は僕たちとは真逆の存在。悪魔、魔神に祈りを捧げている人間達だ。もしハルトが本当に手先でないとしても、今王都に帰還するのはあまりに無謀だ。その人達を騙すことになるけど、ハルト自身が悪魔や魔神に祈りを捧げている仲間だと信じ込ませ、匿ってもらうんだ。その間に僕たちがどうにかさせてみせる!絶対にだ!だから今は、、、一度身を引くんだ。もうすぐあの空間の歪みは閉じる。目に魔力を集中させてごらん。空間の歪みでできた、亀裂が少しずつ元に戻っているのがわかるかい?ここまで来るまでに何度も見てきたから確実だと思うんだけど、そのタイミングで歪みに入って出口側の歪みから出れれば、いくらヒストリア様でも追うのは不可能だ。もうこれしかないよ?ハルト。やるなら協力するよ。」
「なによそれ、ダメよ!逃げだら認めたことになっちゃうよ!そんなの絶対にだっ?!?!」
胸の中で泣きながら反労するラフィタの後ろ首に短剣の柄で気を失う程度にど突く。
「ごめんなラフィタ。けどもうそうするしかないのかもしれない、このまま王都に戻ればきっと、、、。やろうローン!」
「わかった。タイミングを見て魔光石投げるから、、、最後に一ついいか?俺はお前を信じてる。みんなもそれは一緒だ。ライナーも、カーミラも、そしてラフィタも。絶対に戻ってこい!またみんなで馬鹿しよう!絶対にだ!」
「ありがとう、、、絶対に、、、絶対にみんなのもとへ戻って来る!!また、、、絶対に会おう!!」
ローンと最後の握手を交わし、ラフィタ、ライナー、カーミラに目をやる。
「みんな、また必ず戻ってくるから!」
空間の歪みの近くで交戦しているヒストリア様を見つめる。もう数10体しか残ってないのか、、、無茶苦茶の強さだな。
けど、、、やるしかない!!
悪魔の軍に向かい駆ける。
するとそれに気づいた一体の馬に乗った悪魔がこちらに気づき、駆けてくる。
馬に乗った悪魔は顔は人だが、体の一部が動物と混じり合っている。あれは、、、羊か?他の悪魔に目をやるとどの悪魔も何らかの動物と混じり合っている。
馬に乗った悪魔が足を止め、槍でタイミングを見計らっている。
距離が縮まり槍で突ける範囲に入った瞬間、勢いよく槍の剣先が飛んでくる。
それを地を蹴り回避すると短剣を取り出して悪魔の心臓に突き刺す。
しかしそれだけでは仕留めることが出来ずに首に手をかけられた。かなりの力だ。人間の首なら簡単に折れそうな勢いだ。
首を折られる前に悪魔の腰に差していた短剣を抜き取り首を刎ねる。
首を刎ねた悪魔を蹴落とすと、馬の脳を支配する「権利をよこせ」。
すると悪魔の馬の瞳、赤黒い瞳から青い瞳へと色が変わる。
よし、このまま歪みに入れれば。
しかしその時、一瞬目が合ってしまった。そう彼女と。ヒストリア・グランデと。
「貴様!!!やはり悪魔の手先であったか!!くっ?!?!」
ヒストリア様に気づかれたと同時、ローンが魔光石を放っていてくれた。
ナイスタイミングだ!!
歪みまで全速力だ!!
あと歪みまで少しってところで振り返るとヒストリア様が悪魔をなぎ払い、体全身を魔力で覆うのが見えた。まずい!あと少しなんだ!あと少しで!!
次の瞬間辺りが一瞬光った。
だがそれと同時に歪みに足を踏み入れ思わず目を閉じる。
しかしなにも起こらない。目を開け振り返るとそこにはヒストリア様も、悪魔の軍も、みんなの姿もない。やったのか?成功したんだ?!ヒストリア・グランデから逃げ切ったんだ!!
「しゃぁぁぁぁ、、、あ?」
嬉しくて雄叫びをあげながら前に振り返るとそこには広大な森が広がっていた。
そう、空間の歪みの出口は砂漠の端に繋がっていた。
かなり遠ざかったようだ。
俺はこれから、、、この世界で生きて行かなくてはならない。不安で、怖くて、寂しくて、孤独で、目に涙が溜まってくる。
もう前みたいにすぐみんなに会えない。
ラフィタ、、、ごめんな。
馬を歩かせ暗い森へと足を運ばせる。
ポツリポツリと次第に涙が溢れてくる。
赤い月の光に照らされ、1人きり。
暗く不気味な森に1人、その背中はとても弱々しく、寂しそうに消えてゆくのであった。
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