第2話
翌日、俺は朝っぱらから机で突っ伏した。 相変わらず日が昇ると暑い、それに今日は非常に体がだるいし頭が重いし眠い。 昨日寝るのが遅くなって寝不足に陥った。
勿論、アンドロイドには寝不足なんてわからないだろう。 一応寝ると言う機能は備えていると言えど、奴らには睡眠は不要だし、一生睡眠を取らなくても何も問題はない。
「おいどうした幸樹、また体調が悪いのか?」
「ああ、ちょっとな」
そんな俺を心配(実際は好奇心だろうが)して声をかけてきたのは、俺が良くつるんでいる友達の一人『剛』だ。 背が高くて金髪のイケメンだ。 何故こうもアンドロイドは美形に作られるのか腹立たしく思う代表格と言っても過言ではない。 個性を重視するならもっとブサイクなアンドロイドも作りやがれと思うのは俺だけか。
「昨日までは元気そうだったのにどうしたんだ?」
「実はちょっと、気晴らしにゲームやってたんだよ。 夢中になってレベル上げてたらいつの間にか深夜3時過ぎちまってて」
「ゲームをやりすぎただけで風邪を引いちまうのか?」
「風邪とは違う、これは寝不足だ。 前も言ったと思うけど、俺はお前達と違って睡眠をしっかりとらないとダメな体なんだよ」
「うへぇ、人間って大変だよなぁ。 睡眠時間にまで気を使って体調管理しなきゃいけないのか?」
相変わらずアンドロイドとは思えない言語能力ではあるが、それにしても機械と人間を比較すればするほど自分が惨めに思えてくる。 やはり俺はここへ来るべきではなかったんだと後悔したくなる程だ。
「大変だと思った事はないけどな」
「でもよ、そうまでして普通ゲームやりこむか? 下手すると死んじまうって事だろ?」
「人間って基本バカばっかなんだよ。 何というか、自分の身を削ってでもやりたい事ってのが絶対出てくるんだ」
「ふーん? 人間ってのは面白いよなホント……ん?」
俺の話に興味津々に耳を傾けていた剛が、何かを見つけたのか視線を変えた。 気になった俺はだるい体を何とか起こして振り返った。 多分、剛と俺は同時に目を丸くした。
「なぁ、あそこでお前と同じように突っ伏してるの風切だよな?」
「間違いなく、風切だな」
「あれ何してんだ?」
「さあ、アンドロイドらしかぬ行為であるのは間違いないな」
どういう訳か、あの風切が俺と同じように机に突っ伏していた。 アンドロイドにも確かに疲労という感覚は存在するらしいが、少なくとも三か月近くこの学校で生活をしてきた中では、俺と同じように机で突っ伏して寝るような奴は見た事がない。
俺は何も言わずに風切の席まで向かうが、気づいている様子はない。 試しに脇腹を突っついてやったら、ふにゅっとした妙な感触が――。
「ひゃあっ!?」
奇妙な声を上げて風切がカバっと起き上がった。 同時に何故かきつい目で俺を睨みつける。 流石に脇腹を突っつくのはデリカシーがなさすぎたか。
「進来さん……いきなり何処を触ってるんですかっ!?」
「いや、悪い」
一応怒鳴る元気はあるらしい、何もそこまで怒らなくてもと思うが。 だが風切は途端に元気がなくなってまるで電池が切れたかの如く机に突っ伏す。
これは重傷だ。 アンドロイドの構造はよくわからないが、ひょっとしたら何らかの異常がきたしているのかもしれないと段々と心配になってくる。
「おい、大丈夫か? 何してるんだ?」
「……いえ、その。 今日も暑いな、と思いまして」
「暑い?」
確かに朝だと言うのに教室は蒸し暑い。 ただでさえ熱が籠りやすい空間に人、もといアンドロイド達が集まれば、それはもううんざりするぐらい暑くなる。 現に俺は今汗ダラダラだ。
だが、アンドロイドに限ってはそんな事はあり得ない。 奴らの身体には冷房が内蔵されているはず。 基本、機械の一番の敵は熱だ。 だから熱を克服する為にも冷却装置というのは重要な役割を果たすし、わざわざ自ら切る真似をしない限り機能が働かなくなる事なんて……と、ここで俺はようやく気付いた。
「お前、まさか冷却機能切ったままなのか?」
「ええ、そうです。 私も進来さんのように、暑さを感じてみたかったのです。 確かに朝だと言うのに力が入りませんし、頭もぼーっとします。 進来さんがいつも気怠そうにしている理由がとてもわかります」
言わんこっちゃないっ! 俺の悪い予感というのはよく当たる。 風切はいつもの笑顔で答えているが、正直アンドロイドにとって冷却機能を長時間切るのは悪影響だという事は流石の俺でも知っている。 むしろ風切もそれを知らないはずがない。
「いいから、今すぐ戻せ」
「戻しませんよ、今日はずっとこうするつもりです」
だが、風切は頑固だ。 クソ真面目なうえに頑固とは正直性質が悪い、俺が戻せと言ったぐらいで簡単に戻さないのだ。
勿論悪気がないのもわかっている。 だが、あまりにも馬鹿すぎるとしか言えない。 下手するとオーバーヒートを起こして回路に異常をきたす可能性だってあるはずだ。
「とにかく、保健室へ行くぞ」
「へ? 何でですか?」
「そんなに長時間冷却装置を切ってたら、メンテナンスが必要だろ」
「私は異常ありませんよ――」
と、風切が口にした途端に、身体から蒸気が吹き始めた。 漫画でよく見る光景だが実際目の当たりにすると言葉を失う。 これは本格的にまずいんじゃないか? 当然風切は、意識を失ったのかバタンと倒れてしまった。
「……何やってんだよ、ったく」
普通、人が目の前で倒れればそれこそ大慌てだが、俺は妙に冷静だった。 どうせアンドロイドだ、という考えが頭の隅にあるのかもしれない。
とにかくまずは風切を保健室へ運ぼうと身体を両手で思いっきり抱えようとした。 しかし、精密機械がみっちり詰められたアンドロイドの身体は想像以上に重い。 それに熱が籠っていて下手すると俺自身が火傷しかねない。
これでは風切りを運ぶのは無理だ。 そこで頼りになるのはやっぱり……。
「おい剛、ちょっと手伝ってくれ」
「おお? よくわからねぇけど、風切を保健室へ連れて行くんだな?」
同じアンドロイドである剛に頼らざるを得ない。 こういう時にアンドロイドは非常に頼りになる。 剛は倒れた風切を軽々と持ち上げた。 流石はアンドロイド、俺がいくら頑張っても持ち上がらなかった風切をいとも簡単に運ぶとは。 このまま俺達は保健室へと足を運んだ。
アンドロイドの学校にも保健室という物は存在する。 実際はアンドロイドのメンテナンスを行う場所の事をわざわざそう呼んでいるのだが、一応ベッドは用意されているし俺も調子が悪い時はここで休ませてもらった事はある。
保険医によれば、やはり俺の予想通り長時間冷却装置を切っていた事による熱暴走が起きていたらしい。 あと少しで回路がショート寸前だった事から、かなりギリギリの状態だったとか。
多少回路が傷ついたぐらいでは修理に時間はかからないようだが、部位によってはかなり時間を要するし専門の施設へ運ぶ必要も出てくる。 下手すればメモリーに障害をもたらし、記憶喪失のような状態にもなると聞いた。
「風切さんはしばらくスリープモードに切り替えて休ませました。 目を覚ましたら、くれぐれも冷却装置を切るような真似をしないようにきつく言っといてくださいね」
「俺がですか?」
「貴方は風切さんと仲がいいでしょ?」
「俺以外にも友達はたくさんいると思いますが?」
「つべこべ言わない」
何で俺が風切の面倒を見なきゃいけないんだと不服しかない。 が、この保険医には入学時からお世話になりすぎていて正直頭が上がらない。
人間である俺の健康管理をどうしていけばいいのか、食事や寮はどうするか? 何から何まで相談に乗ってくれた、ある意味担任よりもよほど恩師なのだ。
「風切は大丈夫だったんだな? なら先生、俺は先教室戻ってるぜ」
「ええ、皆に無事だと伝えてくださいね」
付き添ってくれた剛は風切の事を心配していたんだろう。 風切が何も問題ない事を確認するとほっと胸を撫で下ろしていた。 とりあえず俺も一緒に戻ろうと椅子から立ち上がった。
「じゃあ先生、俺も戻ります」
「貴方は少し残りなさい」
「は? あ、いや。 何でですか?」
「どうせ授業に出ても補習でしょ、なら少し私と付き合いなさいな」
「アンタ、人悪いな。 それでも教師なのか?」
「あら、そう? それって、人間らしいって受け止めていい?」
もういい、めんどくさい。 アンドロイドは何を言っても怒る事は滅多にない。 むしろ人間らしいと褒められていると受け止められてしまう。 そんな奴らをまともに相手しても無駄だと悟った俺は、深くため息をついた。 剛の奴は俺を置いてさっさと先に帰りやがった。
「ねえ、風切さんはどうして冷却装置を切ったの? 貴方達人間もそうでしょうけど、機械にとって熱への対策というのは生活に欠かせないのよ?」
「あいつ、俺の真似をしただけですよ」
「それって、どういう事?」
「何か風切の奴、俺が汗をかくのを羨ましがってたから」
俺は包み隠さず伝えた。 保険医は興味津々に俺の話を聞いている。 奴らにとって人間の話というのは面白い物なのだろう。
「ふぅん……風切さんはどうも、貴方の事を特別視しているようね」
「それは、俺が人間だからそうなんじゃないんですかね」
「確かに、貴方が人間だから興味を持っているのは事実。 だけどね、いくら興味本位でも貴方達人間を理解する為に、自らの命を危険に晒す真似はそう簡単にできないのよ」
「命を危険に晒す?」
「私達にだって命はある、死の概念はある。 機械が故障すれば二度と起動しなくなるし、直せない状態に陥る事だってある。 一見私達は不老不死に近い存在に見えるのかもしれないけど、実際は人間と同じぐらいデリケートなのよ?」
そんな訳ないだろ、と俺は心の中で毒づいた。 確かに風切はどんな意図であれど、結果危険な状態に陥ったのは事実。 当然、アンドロイドである風切がこの事態を想定していなかったとは確かに思えない。 だから、身を削る行為だったのは事実ではある。
「進来くんは、アンドロイドを知る為にこの街にやってきたのよね?」
「そうですね」
「彼女も同じよ、人間である貴方の事を知りたがっている」
「人間を知りたがっている?」
俺には意味がさっぱり分からなかった。 いずれ消えゆく存在である人間、更にいえばアンドロイドの劣化とも言える存在である人間をどうして理解する必要があるのか?
だが、恐らくそれは俺にも言える。 今更アンドロイドの事を知って何になるのか、意味なんて本当にあるのかわからない。 いや、これはただの自己満足だってわかってるんだ。
「しばらく看ていてあげて。 きっと風切さんも喜んでくれるわよ」
「俺が?」
「それじゃ、また後で」
保険医は風切の事を俺に押し付けると笑顔で保健室を去って行った。 むかつく、意味深な事を言うだけ言って勝手に立ち去りやがって。 まるで俺がアンドロイドの事を嫌っているのをわかっているような言い草だったな。
俺は別にアンドロイドとわかり合おうなんて思っていない。 所詮、人間とアンドロイドは共存する事が出来ない。 ここで暮らしているとそれが痛い程わかるんだ。
「丁度寝不足だったし、このまま寝ちまおうかな」
どーせ誰もいないのなら空きのベッドもある事だし、そのまま授業ほったらかしで寝るのも悪くない。 剛は保険医に俺が呼びとめられている現場を見た事だし、これはサボりにはならないはずだ、と無理やり自分の行為を正当化させた。
寝ようと思ってベッドで横になろうとすると、隣で寝ている風切の姿が視界に入った。 彼女は寝息を一切立てず、目を閉じたまま寝返りすらうたない。
当然だ、アンドロイドにとっての眠りとは人間の眠りとは違う。 今は一時的に電源を切って機器を休ませているだけだ。
「まるで死んでいるみたいだよな」
縁起でもない事をぼそっと呟いてしまった。 当然風切には聞こえていない。 ふと、俺は風切の顔にそっと触れた。 冷たいのかと思いきや、少し暖かい。 このスベスベとした肌触りもまるで人間そのものだ。 髪を掻き分けてみると驚くほどさらさらとしていて、よく手入れがされている。 ふわりとシャンプーの香りまで広がった。 シャワーを浴びていると言ったが、本当だったんだなと改めて実感する。 途端にドクンッと胸が高鳴った。
「……何やってんだ俺は。 これじゃまるで変態じゃないか」
いくら顔や頭と言っても無抵抗な女の子に触るなんて……と、俺は罪悪感に陥る。 俺は風切を意識しているのだろうか。 風切は確かに優しいし、親しみやすいしクラスでも人気者だ。 風切に限った話ではないが、アンドロイドの思考はほとんど人間に近い。 だから本物の人間である俺と奴らの会話は成立する。 アンドロイドは、コミュニケーション能力においても全く劣っていないのだ。
「いいや、寝ちまえ」
どうせすぐ起きるはずもない、俺はそう思ってベッドで横になってそのまま眠った。
結局、放課後まで眠ってしまった。 隣で寝ていたはずの風切はいつの間にか姿を消しているし、例の保険医からは担任からの伝言でいつもの倍近い量の課題を渡された。
気が重い中、俺はだらだらと教室へ向かうと風切が机に座って黙々と端末を操作していた。 どうやらあの後も異常はなく、無事復帰できたようだ。
「風切、もう調子は大丈夫なのか?」
「あ、進来さん。 はい、おかげ様で元通りです」
相変わらずのいい笑顔でドンッと胸を叩いた。 確かにいつも通りに戻っている。 それよりも風切は教室で何をしているのか?
「で、何で教室にいるんだ? もう帰りの時間だろ?」
「それが今日、ちょっと授業抜けちゃったんで課題を進めているのです。 そうじゃないと、皆に置いて行かれちゃいますからね」
「何だ、一回体調不良で授業でなかっただけで補習なのか?」
「私の自業自得ですからね、でもこれで進来さんとお揃いですね!」
「お揃い?」
「はい、これで私も補習生の仲間入りです」
クスクスと風切は笑っていた。 傍から見ればバカにされているとしか思えない一言だったが、当然そんな気はない事はわかっている。 むしろ補習なんて面倒なのを受ける事になったというのに、何で風切はあんなに嬉しそうなんだ?
「お前、変わってるよな」
「そうですか? それって、進来さんに近づいたって意味ですか?」
「まるで俺が変わり者みたいな言い方だな」
「変わり者と思われたくないのですか?」
「当たり前だ、俺は特別視されたくないし普通でありたいよ」
「そうなんですか? でもでも、私は凄く進来さんが羨ましいです」
「俺が人間だからか?」
「はい。 それって私達からすれば羨ましい事なんですよ?」
俺は理解に苦しんだ。 アンドロイドとは人間を決して見下さない。 それはそういう風に設計されているから、と言われればそれまでだが……何故人間を羨ましいと思えるのか?
「なあ、風切は人間になりたいとか考えた事あるか?」
「うーん? そうですね、人間になれたらいいかもとか思った事はありますよ」
「なんで? 人間なんて不便な事ばっかりだぞ」
「だって、人間なら人間の痛みを知る事が出来るじゃないですか。 それってきっと、進来さんともっと仲良くなれるチャンスだと思うんです」
「俺と仲良くなれる?」
「はい、私は進来さんとお友達になりたいのです!」
風切は目を輝かせながらそう言った。 思わず俺は目を丸くして呆然とした。
「どうしたのですか?」
「いや……俺にどんな反応を期待したんだお前は」
正直面と向かってそんな事を言われると、例え相手がアンドロイドだとしても照れる。 風切は自分の感情に素直すぎる、いや俺がひねくれているだけかもしれないが。
「手、貸してください」
「手?」
風切はアンドロイドとは思えない華奢な両手で俺の右手を包み込んだ。 風切の手はひんやりとして冷たかった。
「進来さんの手は暖かいですね、何だか心の奥まで暖かさで包み込まれそうです」
「そりゃ、こんだけ暑い中にいれば体温は上がるだろ」
「でも、そういう暖かさじゃないと思うのです」
風切は俺に微笑んだ。 手を握られながらそんなに見つめられると流石に目を逸らしたくなる。 俺はただ困惑して笑う事すらできなかった。
「……あの、聞いてもいいですか?」
「あ、ああ」
「よくわからない事なんですが…こうして進来さんの手を握っていると、胸が高鳴ってくると言いますか…緊張すると言いますか…」
「な、何を言っているんだ?」
「こういう感情って、人間にもあるのですか?」
その時、俺の中で衝撃が走る。 アンドロイドとは限りなく人間に近く設計されている。 だが、全てを人として真似ているのではなく、必要のない感情というのも存在する。
アンドロイドは人と違って単体で完結している点が生命体との大きな違いだ。 食事を摂る必要はないし、睡眠もいらない。 繁殖行為も不要だ、何故なら材料と設計図、技術があればいつでも量産できるし、もっと時代が進めば工場で量産する事も可能だ。
だから、人と違ってコミュニケーションを取る必要もない。 家族という概念もないし、恋愛だって不要。 これが、俺の知るアンドロイドの全貌だった。
あえて、もう一度言わせてもらう。 アンドロイドは恋をしない、これは至極当然の事だ。 その前提を持って、俺は今までアンドロイドと共に生活を続けていたはずだった。
だが、もう否定しようがない。 中学生の頃にキングオブ鈍感の称号を得た俺でも、こればかりは流石に察してしまった。 アンドロイドが、俺に恋をしたんだと。
「とりあえず、手を放してくれ」
「…はい」
風切は名残惜しそうに俺の手を放した。 自分の両手と俺の顔を交互に見比べて、少し困惑した表情を見せている。 風切は突然芽生えた訳のわからない感情に混乱しているんだ。 俺はそれを教える事が出来る。 だが……俺はその感情を決して口に出来なかった。
「まだ本調子じゃないだけだろ。 気にするな、明日になれば元通りさ」
「そうなの…ですか?」
風切は力なく返事をした。 正直、俺はどうしたらいいかわからない。 ただでさえアンドロイドとの付き合い方に悩んでる所もあったのに、そこに恋愛だのなんだのが関わるとますます訳が分からなくなってくる。
俺に今できる事は、風切に気づかせない事。 きっと、その感情を芽生えさせてしまえば……お互いに苦労するのは間違いないからだ。
「早くしないと日が暮れちまうな、俺はいつもより課題の量が多いんだ。 無駄話してないでさっさと終わらせねぇと」
「あら、珍しくやる気なんですね?」
「不思議か?」
「そんな事ありませんよ、何だかんだでいつも課題終わらせてますしね」
どうにか話題を逸らす事に成功するが、油断はできない。 俺はこの現状を受け止めきれていない。 ひょっとしたら全ての俺の思い込みである可能性だってある。 いや、それだったら俺が大恥かくだけでどんなに楽だったか。
今は目の前にある大量の課題だけに集中しようと、俺はいつも以上に集中して課題を進め始めた。 隣にいる風切をなるべく意識しないように。