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天から地へ

 就職から二年後の十一月、俺は只の生活支援員からサブリーダーへと昇格する事となった。サブリーダーへの昇格時にもトライアル期間は存在したのだが、これを期に俺はまた地獄を見る事になる。サブリーダーへの昇格は、妻も一緒に喜んでくれたのだが、その一ヶ月後の十二月、相談役生活支援員が別部所の施設長になる事が決まり、俺は上司の命令にて、これまでとは全く畑違いの相談役生活支援員に移動する事となった。

 そもそも、障がい者施設には相談員という者が存在しないのが一般的なのだが、そうすると支援員個々が、各々の担当入居者の家族と話をし、金銭管理も各々が行う為、クレームの原因になっているのが現状だった。しかし、俺の就職した施設には相談役生活支援員、即ち相談員が存在し、統括して金銭管理から家族との連絡、相談、クレーム処理を行っていたのだ。しかも障がい者施設の相談員は、国保連(国民健康保険団体連合会)へのレセプトを行い、更にショートステイ利用者・施設入所者の家族・生活介護利用者への請求書を発行し、ショートステイの受付、新ショートステイ者の探索、ガイドヘルパー要請と時間調整、救急搬送時の付き添い、施設見学者の案内、外線対応、車椅子や補助具の修理要請や注文、補助具の修理販売会社とのパイプライン、各役所との連絡等々、まあ色々と行う事が多くあったのだが、俺の前任の相談役生活支援員は、別部所の施設長になる前に精神を崩壊させ辞めてしまったのである。しかも不幸というものは重なるものなのだろうか。

「来月から簡単な事務作業とサビ管(サービス管理担当責任者)をしてみない?」

 そう施設長より直々に言われ、相談役生活支援員の業務にヘタれていた俺は、すぐに了承した。それが俺への大きな爆弾だとも知らずに。

 翌月、年も変わって一月、俺は相談役生活支援員兼サービス管理担当責任者のトライアル期間というとんでもない立場に立たされていた。

 もう病院受診時には、薬が増量されるだけ。カウンセリングは只の愚痴吐き場と化していた。

 そして二月、俺はバーンアウト(燃え尽き症候群)する事となる。抱え込みきれない仕事量とストレスでいっぱいになり、俺の心のダムは見事木端微塵に粉砕されたのである。あの「病気を治しながら一緒に働きましょう」と言ってくれた施設長自らの手で。

 それから一ヶ月、自宅療養した俺は、復活する事も出来ず、三月、再び入院を決意した。

「今度また入院する時は、こんな短期間じゃ出れないからね」

 そう言われたのを思い出しながら。



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