竜と少女の夢
「本当にお別れなんですね……」
明かりが少なく、薄暗い洞穴の中に少女はいた。
顔は七、八歳と言ったところか。水色の髪は手入れをしていなくボサボサだが、その艶やかさは失われていない。少女のとても可愛らしい瞳の色は青。服はつぎはぎだらけの手作り感満載だが、一生懸命作った服。この場所は陽の光がほとんど来ないのか、肌は真っ白だった。
そんな少女の視線の先には、とても大きな、竜。爪や牙は鋭く、背中からは巨大な翼が生え、体中、堅い鱗で覆われている。普通の人間が見れば驚いて失神する人もいるであろう、恐ろしい外見だったが、少女は全く恐怖していなかった。
「そうだ。ここにいればお前も戦いに巻き込まれ命が危ない。ここから東へ向かえば小さな村がある。そこに行けばもう安全だ」
竜は話すことが出来る。しかし、竜の言葉は最低でも一ヶ月、竜と共に暮らさなければ聞き取ることはできない。
少女は赤ん坊のときから竜と共に暮らしてきた。少女の住んでいた村はこの洞穴の直ぐ側にあったが、戦乱に巻き込まれて今は影も形もなくなってしまった。
「どうか、死なないで、無事に生きてくださいね。今までありがとうございました……父様」
そして、少女は夢から覚めた。