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神仰無々録  作者: 鈴原蒼
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第一章 夕焼けの翼

 思えばかなり長い月日が流れただろう。

 あの日私は真実を知った。その真実は私の想像を遙かに超えていた。

 私は今父の後を継ぎ、辻斬りとして各地を旅しているが私の旅の理由はそれだけではなかった。

 復讐。あの日あの巫女に教わった本当の父の仇。何者かに月夜の晩殺され死体は巫女の神社の目の前に置かれていたという。

あの巫女はその時何を思い、なにを感じたのだろう。自分の知人が殺され、目の前にその死体が置かれていたら。

 冷たい月夜に二度と動かない体、それは私もかつて見たことがある光景だった。私はその日から心を閉ざした記憶がある。誰とも付き合うこともせず、毎晩静かに涙を流すのみ。今から思えば死体のような生き方をしていた。

 しかし過去があるから未来もある。自分の歩んだ過去を認め未来へ繋げなければいけない。それを私は巫女から知った。復讐は過去の不始末をはらす為。必ず成功させなければならない。

 夕日に照らされ顔が水面に紅く映る逢魔時。古くからこの時間帯に魔が出ると言われているが、私にとって逢魔時は最も動きやすい時間帯だった。

 妖怪である私は背中に羽が生えているので神殺しが流行っている今、昼間を堂々と歩くことができない。もしこんな格好をしているのが見られたら間違いなく人は襲ってくるだろう。

「さて・・・と」

 細い川の土手に埋まっている桜の木の上にいる私は立ち上がると漆黒の翼を開いた。羽の数枚かが抜け落ちるが烏の羽と見た目は変わらない。小さい羽の集まりであるこの《漆喰》は我らが悠闇一族にしか生えない特別な羽だ。時を積めば積むほど固くそしてしなやかになっていく。

 私は《漆喰》を水平にし、飛行体型にする。軽く翼を打つとそのまま脚力で桜の木の枝から細い川まで飛び降り、風に乗って水面ぎりぎりのところを飛行した。

 夕日が川の水に反射してとても眩しい。私は目を閉じると《漆喰》に当たる冷たい風を感じながら方向を確認する。

 目的地は西の岬。ここからさほど遠くない。目的はある人物に会うことだった。

 復讐の助力者。それは神と言われた炎神(ほむらがみ)だった。

 

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