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怪物 ビーネン・ケーニギンの誕生

ビーネン・ケーニギンは、善人ではない。


自己顕示欲の化け物である。



ビーネンは、ローレンの田舎町の商家に生まれた。


蜂蜜色の髪。

空を閉じ込めたような青い瞳。

雪のように白い肌。


まるで、天使のような少女だった。



ある年、村の感謝祭で劇をすることになった。


美しい花の妖精が主役の物語。


主役は当然、ビーネン・ケーニギンだと――

誰もが思った。


ビーネン自身も含めて。



だが、主役に選ばれたのは、

村を治める村長の娘だった。



ビーネンは思った。


――なんて、汚い妖精なのだろう。



これは、よくない。


主役は変えなければならない。


だって、このままでは村の皆が可哀想だ。


ビーネン・ケーニギンの、あんなにも素晴らしい妖精の姿を、

見ることができないのだから。



その晩。


ビーネンは、村長の娘をナタで刺し殺した。



野盗の仕業に見せかけるのは、簡単だった。



血に濡れた手で、ビーネンは泣いていた。


なんて可哀想なんだろう、と。


醜い娘が、さらに醜くなってしまって。


それに、自分の素敵な服まで汚れてしまった。


――次は、やり方を考えないと。



翌日、村は大騒ぎになった。


野盗に襲われ、命を落とした村長の娘。

そして、ナタを振るって野盗を追い払ったという少女。



ビーネン・ケーニギンは泣いた。


誰もが見惚れるほど美しく、

誰もが胸を打たれるほど悲しげに。


「私に、もっと力があれば――

こんな悲劇を起こさずに済んだのに」



その言葉を、誰も疑わなかった。


誰もが、彼女が死者を悼んでいるのだと思った。



こんな状況では、感謝祭など出来ない。


そう口にする村人たちに、ビーネンは言った。


「それでは、あの子が報われませんわ」


そして、微笑む。


「私のためにも――あの子のためにも」



こうして、

ビーネン・ケーニギンを主役とした劇は、開演された。



誰もが目を奪われる、美しい妖精。


誰もが涙する、哀れな物語。



舞台の最後。


ビーネンは、醜い村長の娘のために涙を流した。



そして、心から思ったのだ。



――わたくしのために死ねたことが、

せめてもの救いですわと。

心の底から、彼女の最後の幸福を喜んだ。

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