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大人のための異文童話集8 見否聞否言否三猿

作者: 天野久遠

なんだか天気予報も当てにはならい。

今日のお天気…気付くといつの間にか雨雲が広がっている。


捨てられ転がっている空缶を見つめる。

拾う気にはなれず、見ていると何故かムシャクシャしてくる。

ボクは力一杯にそのムシャクシャを蹴り飛ばす。


蹴られた缶は、高く勢いよく曇り空へと舞った。

少し気分がよくなった、でもまだお腹の底が騒いでる。


ボクは舞い上がった空缶の行き先を目で追った。

飛んで行く空缶。

その軌道の先きにキミがいた。


キミにすれば、どこからともなく降ってきた空缶。

それが頭にポコリと当って、ボクに気付いた。


それを見ていて、また少し…気分の中からムシャクシャが出て行った。

その空き缶を拾ったキミ。

そしらぬ顔をして立っているボクの方にやって来る。


私は何もしていないのに、どうして私にぶつけるの。

私はただ、楽しいことを思って待っていただけなのに…どうして?

キミは涙目でそう言った。


別にキミにぶつけるために蹴った訳ではないんだけど…。

そんなことを言ってると、出ていったムシャクシャが帰って来た。


ボクは口を塞いでコトバを捨てることにした。


キミがまた何かを言おうとしている。

ボクは耳を塞いで何も聞こえなくなった。


キミが一歩前に踏み出して来た。

ボクは目を塞いで闇だけを手に入れることにした。


そんなボクの姿を見て、キミは何をすることも諦めた。


見ることを期待しないで、話されたことは無視して、言葉に希望は託さない。

見ざる、聞かざる、言わざるなのね。

もう一度、この空缶を蹴るといいわよ。


そう言ってキミは、手にした空缶をボクの足下に置いて歩き始めた。


せっかくキミは、ボクの足下に空缶を置いてくれたのだろうけど…

ボクにはもうその空缶が、どこにあるのかが分からなかった。

それに気付いた時、ボクの姿は見る見るうちに猿になっていた。


どこからともなく声が聞こえた。


お前は自ら大切なものを捨ててしまったのですね。

そんなお前には今のその猿の姿がお似合いでしょう…と。


BGMにはブームタウン・ラッツの“哀愁のマンデー”でも聴いて欲しいですね。

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