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【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で "姉" の手に落ちた【第二章開幕】  作者: 私貴私
第一章 姉はすべての障害を破壊する

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第4話 うちの〇〇は勇者らしい

願望④ 勇者の過去を助ける



「きゃあああ、助けて」

「うわあああ、バケモノ」

「魔王軍が攻めてきたのか!?」

「魔物の大群だ。魔王軍がやってきたんだ。女と子供は地下室へ逃げ込め。足の速いやつは隣街へ助けを呼びに行け!!男衆は武器を持って俺に続け。何としてもここで食い止める。俺たちの村を守り切るぞ!!」


『モンスターパレード』


稀に起こる大規模な魔物の群れによる大移動。

その原因は長年不明とされている。

気候変動や厄災の移動による影響、世界滅亡の予兆とも言われている。


しかし、それに遭遇した者達にとって原因などどうでも良いものだ。

どうすれば生き残れるのか、この地獄を終わらせるにはどうすれば良いのか?


答えは単純だ。

()()()()()()()


モンスターパレード自体には『英雄』レベルの魔物はまず含まれない。

だから、数人の英雄か多数の戦士で対処が可能である。


もちろん、現実はそんなに甘くない。

そんな都合良く戦える者が居合わせることはない。


ここはサイショの村。

何の変哲もない寂れた田舎の村だ。


少年は今、鍛錬用の『おもちゃの剣』を振い、無数の魔物相手にひとり奮闘していた。


守りを抜け、子供達へ襲いかかる魔物。

少年は必死の形相でそれを打ち払う。

それは大したダメージは与えられない。

それでもパニック状態の魔物の進行方向を逸らす事くらいはできていた。


しかし、いくら軽いおもちゃとはいえ、振り続ければ鉄より重くなる。

既に彼の腕はそれを持つことだけで精一杯だった。

それでも残りの力を振り絞り、魔物を打ち払う。


そんな折、それはやって来た。



ガァアアアアアア



その一声で、村に常駐している兄貴と慕う兵士も、普段はクワを奮っている農家のおじさんも、誰も彼も動けない。


「はぁ、はぁ。…それは…反則だろ」


それは真っ赤な『ドラゴン』だった。


頂点捕食者。魔物の王。空の具現化。

種として、厄災魔獣に次ぐ脅威度を誇るドラゴン。

少年の背丈の10倍はある巨体。

着地の勢いで潰される家屋の数々。

一閃。

剣も、牙も、命も、思い出も、有象無象として形を失って行く。


気付いた時には、この場にいる存在は『少年』と『ドラゴン』だけだった。

その息一つ、その羽ばたき一つ、その爪の一振りで少年の命は弊えることだろう。


それでも、この時、この場で、この絶望に立ち向かえるのは自分だけなのだ。


少年はむしろ一歩進む。

うしろには自分より幼い子達(守るべき者)がいる。

ここで引くわけにはいかない。

その瞳には確かに勇気の光が宿っていた。

しかし、剥き出しの新芽など、捕食者にとっては甘美な食べ物でしかない。


ドラゴンが唸る。


少年の身体は根源的な恐怖に震え、剣を取りこぼす。

小さな勇者は、その背に庇う幼い命達と同じもの(助けを求める幼子)に成り果てた。


ドラゴンは狡猾で残忍な生き物だ。

そして、それは『勇者(勇ましき者)』をたいへん好む。

残酷なその生き物は魔物の中でも珍しく『料理』という文化を理解している。

そして、それは『勇者(勇ましき者)』と相対した時に行われる。


それはまず圧倒的な力で勇ましい心を折りにかかるだろう。

そして、『勇者(勇ましき者)』が守っている者を1人ずつ毟り取り、その眼前でゆっくりいただくことだろう。

まるで豪勢な食事を貧困に喘ぐ餓鬼へ見せつけるかのように。


これは予想ではない。

これから確実に起こる現実(未来)だった。

既に戦えるものもおらず、勇者だった者は震えて身体を丸めている。

そうしてドラゴンの腕が迫り、幼子は目をつぶった。



「だれか、たすけ「ん、助けた」…て?」



声が聞こえる。

そして、


ドゴォオン


続いて、何かとてつもなく重い物が地面にぶつかる爆音が辺りに響く。


無力な幼子が目を開けると、邪悪なドラゴンは地面に倒れ伏し、1人の見知らぬ少女がそこに立っていた。


サイショの村は小さな村だ。

村中みんな知り合いであり、家族みたいなものだ。

知らない人間がここにいるはずはない。


「これ、借りてる」

「えっ」




『竜の息を断つ魔法』




少女が何かを呟くが、少年の耳はその音を拾えない。

先程の爆発音はそれだけ大きいものだった。


むくりと起き上がったドラゴンは予備動作もなく灼熱の吐息を浴びせかける。


しかし、少女が振るった『何か』によって掻き消される。


少年はその『何か』に見覚えがあった。

彼の目がイカれていなければ、それは『()()()()()()』だった。

彼が先ほどボロボロになるまで酷使した『それ』で、ドラゴンの炎を切り飛ばした様に見えたのだ。




『竜の鱗を剥がす魔法』




炎を切り払い返す刃で、少女は再びおもちゃの剣を振るう。


ドラゴンは少女の背丈を優に越している。

当然のように剣は届いていない。

しかし、ドラゴンは反撃の様子を見せない。


「あ、危ない」

「大丈夫」


少女がこちらへ振り向く。

少年の瞳は彼女をとらえて離さない。

生まれて初めて感じる感情。


「ん、良い武器」


少女から差し出されたものを受け取る。

それはかつておもちゃの剣だった何か。


「あ、あの…あれ?」


少年が目線を手元から戻した時には既にそこに少女はいなかった。


「……夢だったのかな?」


しかし、そんな希望を打ち砕くようにドラゴンが再び動き出す。

急いで少女から返されたおもちゃの剣を構える。


ドラゴンの顎門にスッと赤い液体が伝う。

そして、ドラゴンは自重によって崩れ去った。


その場には、剣を構えたまま呆然と立ち尽くす未来の勇者だけが残された。





「奇跡だ。モンスターパレードだけでも都市が大打撃を受ける事態だというのに、ドラゴンまで現れて死者が0人だなんて」


「アル!大丈夫か?ここで何があったんだ?」


「少年の持っていた武器からドラゴン討滅の攻撃痕(ラストアタック)が見つかっただと!?おもちゃの木剣だぞ!!ふざけてるのか? その子供を今すぐ連れてこい」


「いや、ドラゴンを倒したのは俺じゃねぇよ。知らないお姉ちゃんが倒したんだよ」


「少年には少し混乱が見られます。彼が見たという女性の目撃情報も痕跡も村には何一つ見つかりませんでした。彼の証言が正しいなら、この場へいきなり出現したことになります」


「もしや、先代勇者様のどなたかかもしれない。今代の勇者を守るために一時的に力をお貸しくださったのかも?」


「新たな勇者の誕生だ。彼は王家で引き取り育成する。ドラゴンを討伐したのだ。15年前に断絶したイミ男爵家の隠された子として取り込め」


「この歳でドラゴンを狩ってしまうなんてな。やはり、勇者様という役割は特別なのだろう」


「ただし、このことを魔王に知られるわけにはいかない。しかるべき時まで存在は秘匿する。勇者の育成が終わるまでは騎士団の一部と我々だけの秘事とせよ」




「なんか凄いことになったんだけど……。でもまたいつか…会えるかな…」


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