37/37
後日談② 誰も責任を取らなかった(城側視点)
記録は、正しく残された。
改革は円滑に進み
民の不満も沈静化
王国は新時代へ
会議室で、
その報告が読み上げられる。
拍手はないが、
誰も異を唱えない。
「……成功、ということで」
宰相が締めくくる。
失敗は、
誰のものにもならなかった。
聖女の引退。
治癒事業の民間移行。
すべては、
「時代の流れ」。
誰も、
判断を誤ったとは言わない。
「例の……追放された令嬢ですが」
誰かが、切り出す。
「今や、治療網の要だとか」
「……触れないほうがいい」
即座に、遮られた。
城は、もう命令できない。
金も、人も、
彼女の側にある。
(……負けた、のだな)
誰も、口にしない。
口にした瞬間、
責任が生まれるから。
会議は、淡々と終わる。
廊下を歩きながら、
ある貴族が呟いた。
「奇跡なんて、
最初から不安定だったんだ」
――違う。
不安定だったのは、
奇跡に全てを預けた判断だ。
でも、それを言う者はいない。
城は今日も、
“正しい選択をした顔”をして、
存続している。
ただ一つ。
もう、
世界は城を中心に回っていない。
それだけが、
動かしようのない現実だった。




