石自慢の町
奈良市きたまちの「実験する本屋ヌリタシ」さんで開催された「でっちあげ創作所」という、詩人の古井フラさんをお迎えしてのワークショップで、持ち寄った石ころから即興ででっちあげたストーリーを、AIを使って短編に仕上げてみました。
その町では、月に一度「石自慢の会」が開かれる。
拾った石を持ち寄り、その来歴や魅力を語り合う、静かな集まりだ。
ある日、私は自宅の庭で見つけた赤茶色の石を持って行った。
何の変哲もない丸い石。
ところが、それを手のひらで握った瞬間、忘れていた記憶が溢れ出した。
私は火星人だ。
姿形は地球人だが、中身は火星から来た。
肉体は乗り物のようなもので、地球で生まれた肉体に宿る、私という意識、いわゆる霊体は火星から来たのだ。
同じような者は、地球に何人も紛れ込んでいるはずだ。
火星には争いのない平和で高度な文明がある。
その波動は高すぎて、地球の科学では観測すらできない。
だが地球人は戦争をやめず、環境を破壊し続けている。
このままでは、他の惑星にまで影響を及ぼしかねない。
この状況を見かねた私は、銀河連盟に志願し、特別な訓練を受けて、8,888人の仲間たちとともに、この地に降り立ったのだ。
地球の波動が低すぎて、すっかり忘れてしまっていたのだ。
私が告白すると、会の仲間も次々に石を握った。
黒い石の男は「水星だ」、
白い石の女は「金星だ」、
縞模様の石の男は「木星から来た」と言った。
ようやく、記憶を取り戻し、仲間と再会できた。
「じゃあ、みんなで力を合わせれば、地球を救える」
それから私たちは石を手に、まだ眠っている仲間を探し始めた。
その町は、実は火星人をはじめとする宇宙人たちの町だった。
どうりで、宝石でも何でもない、価値のない拾った石を持ち寄る「石自慢の会」に、町中の人々が集まるわけだ。
町長も、校長も、駅長も、局長も、所長も――みな宇宙人であることを思い出した。
8,888人が目覚めれば、大きな転換が訪れる。
三か月後、その瞬間が訪れた。
夜空を見上げると、無数の光が整然と列を組み、町立運動公園へ静かに降りてくる。
銀河連盟からの使者を乗せた宇宙船だ。
全町民8,888人が集まり、盛大な歓迎セレモニーが行われた。
続く宇宙会議で議決権を持つのは、18歳以下の子どもたち。
大人たちは、その決定を実現するために知恵を絞り、宇宙人たちの助力を得て動く。
境界のない世界を描く子どもたちの夢が、地球を少しずつ変えていく。
やがて、この星は楽園の記憶を取り戻しはじめた。
数年後、戦争という言葉を耳にすることはなくなり、環境問題もエネルギー問題も解消された。
そして、地球は銀河連盟の仲間たちのあいだで、
「一度は訪れてみたいリゾート惑星」ランキングの第一位になった。